words have countless meanings

sixth class


 森を抜けると、視界がぱっと開けた。


 そこには、石造りの小さな家々が並ぶ、のどかな村が広がっていた。家の屋根には本の形をした風見鶏がついていて、中央には大きな図書館のような建物がそびえている。


「ここが……リトルブック?」


「うん。この村の人たちは、みんな“言葉”に強いこだわりを持ってるんだ。ちょっと変わってるけど、面白い人ばかりだよ」


 村の入り口で出迎えてくれたのは、背中に本棚を背負ったおじいさんだった。


「おお、旅人か。ようこそ、言葉の村へ。わしは“Pageじいさん”じゃ」


「ページ……って、名前!?」


「うむ。この村では、生まれたときに“好きな言葉”を名前にするんじゃ。わしは“Page”が好きでな」


「クセが強い……!」


 そのあとも、次々と個性的な住人たちが現れた。


 語尾に必ず『ですの』をつける少女“auxiliary”

 

 単語カードを常にシャッフルしている青年“shuffle”

 

 話すたびにことわざを引用する老婆“proverb”


「ユウト、ミンナ、オモシロイ!」


「ほんとにな……」


 でも、不思議と居心地が悪くない。むしろ、どこか懐かしいような、温かさがあった。


「ユウト、図書館に行ってみようか。あそこには“言葉の記憶”が保管されてる。君のKey Sentenceのヒントがあるかもしれない」


「よし、行ってみよう」


 俺たちは、村の中央にそびえる“リトルブック図書館”へと足を踏み入れた。


 リトルブック図書館の扉を開けた瞬間、俺は思わず息をのんだ。


 天井まで届く巨大な本棚。空中をふわふわと飛び交う本たち。ページをめくる音が、まるで風のように響いている。


「すげぇ……」


「この図書館は、“言葉の魔力”が満ちてるから、本たちも生きてるように動くんだよ」


 Lexiの言葉にうなずきながら、俺は奥へと進んだ。


 そのとき――


「Word Spell:Wind+Page+Dance!」


 ふわりと風が巻き起こり、空中の本たちが一斉に舞い踊った。


「うわっ!?」


 俺が驚いていると、風の中心に立っていたのは、銀髪の少年だった。年は俺と同じくらい。でも、その目は鋭く、どこか達観した雰囲気をまとっている。


「……君、旅人だね?」


「え、あ、うん。佐藤ユウト。英語は苦手だけど、なんかこの世界に飛ばされて……」


「ふーん。僕は“リード”。この図書館の管理人代理だよ」


「管理人代理って……そんな若いのに?」


「年齢は関係ないよ。言葉をどれだけ理解してるか、それがこの世界での“力”だから」


 リードは指を鳴らすと、英文を一気にそらんじた。


 “Room” “do”+“not”+“move”+“quietly”


 その瞬間、図書館の空気がぴたりと静まり、扉が音もなく閉じた。


「……すげぇ。俺なんて、昨日やっと“アイス・スピア・シュート”覚えたばっかだぞ」


「ふふ、まだ“文”になってないね。単語を並べるだけじゃ、意味は伝わらない。君は、まだ“言葉”を知らない」


 その言葉に、ちょっとムッとした。でも、悔しいけど正論だった。


「……だったら、教えてくれよ。どうやったら“言葉”を使いこなせるようになるんだ?」


 リードは少しだけ笑って言った。


「まずは、“聞く”ことから始めるといい。言葉は、誰かの中にあるものだから」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る