幼馴染が好きな俺

金津義満

1.死んだ幼馴染

アラームが部屋中に鳴り響く。

時刻は五時を指していた。

「あら、昼寝しちゃってたか…なんか嫌な夢見た気がするけど、もう思い出せねなぁ……」

俺の名前は津久世勝彦(つくせかつひこ)。

築三十七年のアパートの二階に住んでて、玄関前に水回り一式に奥に行くと洋室六帖の部屋が広がっており、一人暮らしにはもってこいの部屋だった。

「ここに来てからもう六年かぁ……」

大学へ通い始めたときからお世話になっているこのマンションは六年経ってもストレスなく過ごせている。

「今年でようやく大学卒業するんだな……そん時はこの部屋ともおさらばか、はぁ、進路どうしよう……」

どうせなら医療関係の進路にすすみたいところだが、今のところまだ進路が決まっていなかった。

「はぁ、将来のことを考えたらなんかテンション下がってきたな、テレビでもつけるか…」

ソファで寝っ転がっていた勝彦は起き上がり、テレビをつける。

テレビをつけると、とあるニュースが流れていた。

「…方不明だった風条優菜(ふうじょうゆうな)さん二十三歳の自宅周辺を警察がくまなく調べたところ、近くの山から風条優菜さんとみられる白骨死体が埋まられているのを発見しました。警察は事件性があるとみて現在も…」

リモコンを取り、即座にテレビを消した。

「は?なんだ今の放送……優菜が死んだ……?」

勝彦にとってあり得ない内容がテレビには流れていた。

なぜなら白骨死体となって出てきた風条優菜とは勝彦の幼馴染で一週間前に会ったばっかりだった。

「そんな!あり得ない!」

携帯を取り出して風条に電話をかける。

相当気が動転しているのか、部屋中に響く着信音は勝彦にとって二重に聞こえた。

数分経った頃、着信音は途切れ、電話からは環境音が聞こえた。

「優菜か!?」

「ん?どうしたん勝彦?そんな焦って?」

その声は風条優菜本人の声だった。

「なんで、どうして…?」

勝彦は戸惑った。

テレビでは白骨死体となってでできたと言ってたのに、電話越しには風条がいて、話している。

「おーい?本当にどうしちゃったの?今からそっち行こうか?ちょっと心配だし」

「いや、大丈夫だ!それよりどうだ?なんか困ったことないか?」

動揺を隠し、とりあえず優菜と話してみる。

「んー困ったことかぁ、あ!」

「何かあるのか!」

「そうなのよぉ最近、誰かに尾行されてる気がするんだよねぇ」

「それはいつから!」

つい声を荒げてしまう。

「うぉ!積極的だね」

「んん、すまない、で?いつからそんな気がするんだ?」

「んー、今日が、六月だから、だいたい一か月前くらい?」

「……は?いま、なんて?」

「だから!一か月前くらい!」

「違う!その前だ!」

「今日が六月?」

おかしい、時系列がだいぶ間違っている。

今日は五月のはずだ。

「優菜、今日って五月の何日の何年だ!?」

「えーとね、二千二十五年の五月の二十七日だね」

その年を聞いた瞬間、口が開いたまま閉じれなかった。

その年は勝彦と優菜が入学した年だった。

「う、嘘だろ、」

急いでさっき消したテレビをつける。

「…骨死体となって発見された風条優菜さん二十三歳は通っていた大学からの帰宅途中に殺害されたとされ、現在も調査が進んでいます」

テレビでは優菜は白骨死体になって死んでいる。

携帯を使って現在の日付を検索すると、そこには二千三十一年、五月二十七日と表示されている。

つまり、今電話している風条優菜は入学当初に過去の存在である。

生きているのは過去にいるから。そう考えないとこの現状は説明がつかなかった。

「おーい!大丈夫ならそろそろ家だから切るよ?」

「待て!今いる場所を言え!」

「えぇ、そんなに私に会いたいの?」

優菜は勝彦をからかうように言ってきた。

「あぁ!会いたいんだよ!」

間すらなく即答で返事をする。

「っ…!へ、へぇ、そんなに会いたいんだ…」

心なしか優菜の声は小さくなっていた。

「で、どこなんだ!」

「もうすぐ家って言ったでしょ?家だよ家」

「そうか!なら今から家い……」

あれ、、

「ん?勝彦?どうしたの?」

「お前の家、どこだっけ…?」

勝彦は優菜の家の場所を覚えていなかった。

というより、家の場所を教えてもらっていないような感覚だった。

「ちょいちょい!幼馴染さん?私の家覚えてないの!頼みますぜ?」

「ほら、八木原駅の近くだよ?わからない?」

最寄り駅(もよりえき)を言われてもさっぱりわからなかった。

「はぁ、せっかく歩いたのにな、わかった、じゃあ今から八木原駅に集合ね!」

「でも、お前は大丈夫なのか?」

「二十分の二倍の徒歩距離の値段は高いよぉ?」

「わかった、アイスおごればいいんだろ?」

「やった!」

優菜の元気な声に勝彦は少し落ち着きを取り戻す。

「今、八木原駅に行くよ待ってろな」

「がってん!」

その声を最後に電話は終わった。

まるで夢のような電話内容だった。

とりあえず生きていてよかったと安堵する。

「支度してすぐ行くか」

タンスを開け、お気に入りの長袖の服を取り出し、着替えようとすると、何か嫌悪感がした。

「なんかこの服着るの嫌だな」

面倒くさいが、お気に入りの服をタンスにしまい、違う服を取り出す。

今回はそんな嫌悪感はせずに、すんなりと着替えることができた。

「よし、行くか!」

この時、なんで嫌悪感がしたのか、勝彦はとっくに気づいていた。

大学四年の時、優菜とデートすることになった勝彦はお気に入りの服を着ていったが、その日の出来事が苦い思い出になってしまったため、着るとその日のことを思い出して、着れなくなってしまった。

「今はそんなことどうでもいい、今は優菜が生きていれば、それでいい……」

自分の家から出て、最寄りの井野駅に行き、二駅跨いだところにある優菜の最寄り駅である八木原駅まで向かう。

井野駅に着き、電車に乗り、優菜のもとへ向かうが、電車の中は自分しかおらず、電車の走行音が響き渡っていた。

電車の窓が勝彦を映し出す。

窓の中の勝彦はまるで勝彦自身を見て笑っているように見え、その笑顔は次第にもっと笑顔になっていき、鼻の高さまで唇の端が来ていた。

不気味に思い目を逸らそうとすると、なぜか目が離せられず、次第に窓の中の勝彦はだんだん近寄ってくる。

その間も窓の中の勝彦は表情を変えない。

「来るな!こっちに来るな!その顔で近づいてくるな!」

何度言っても窓の中の勝彦は歩みを止めず、とうとう勝彦の真ん前へ来る。

目の前まで来ると、立ち止まり、口元が動き始めた。

なんと言っているのか口元は動いているはずなのに声が出ていなくてよくわからなかった。

が口元の動きでだいたい分かった。

「オ・レ・ダ・ケ・ノ・モ・ノ」

そう言っていた。

だが勝彦はその言葉の意味はまだ知らなかった。

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