十三の死ノ姫

すずたん

炎と氷とランデブー

第1話 結局、そういう運命かも。

 この世界はひどく狂っている。

 千年前に今の世界をモデルにした異界の地、クインデアで誕生した魔法を使う魔術師たちの子孫が三十年前にやって来て、それぞれの目的は違うものの魔法を定着させた。

 しかし、中には狙い通りのものも居ただろうが、世界はその人工の奇跡による圧倒的武力を利用し、各地で大規模な戦いが起き、混沌に満ち溢れた。

 2025年の千万人都市、烏江からすえも例外ではない。

 平和な時間の方が長いが、魔術師同士の争いが唐突に起きることはよくあり、そのため全世界同様、魔術と機械とAIの三種類を活用した安全テリトリーを発動するのもよくある。

 

「にしても今日は平和だな。一度も安全テリトリー発動の鐘が鳴ってねぇ」


 12月4日の夜、烏江南エリアの端にある瓦礫の山にて、隣を歩いていた刺々しい金髪ショートヘアーで金目でサングラスをかけた自称身長178センチメートル、ラフな服を着ていて、イケメンな幼なじみで相棒の十六才の少年、風先かざさき風見かざみがそう言った。

 鐘というのは魔術師同士の交戦や犯罪が起こった場合にすぐ知らせるための鐘魔法の事である。

 これは便利で誰でも覚えられる。

 己や風見のように魔術師としての才能がナシと判断されたものでも。


「そうだね。まあ、いいことだけど」

 

 己、瀬良せら李里りりは十六才、青髪ショートヘアーで丸っこい青い瞳、美少女とよく間違われるかわいい顔立ちをしており、身長は171センチメートルで綺麗な服を着ている。

 

「おっと! 大丈夫か?」


 しかし、右側にある瓦礫に気づかなかったらしく、足を滑らせかけた。

 とはいえ風見が止めてくれた。


「ありがとう。ごめん、いつものメガネなくしてて」

「気にすんな。代わりのメガネはちゃんと家で由良ゆらちゃんが持ってんだろ?」

「うん。昼に電話で聞いた」


 由良というのは瀬良由良。

 李里の義理の妹である。

 ちなみに李里にも由良にも風見にも両親は居ない。

 魔術師に殺された。

 まあ、今の時代にはよくある話だ。

 といっても魔術による少子化対策により十年前より全体の人口は減っていないが。

 だが、生まれる赤子は倍に増えたが、亡くなる人も倍に増えたらしい。

 魔術がない世界の人に言っても信じられないだろう。

 

「あ、そうだった。明日いつもの店で話があるんだが、時間はそうだな……ちょうどランチタイムの昼でいいか?」

「いいよ。それより今は仕事に集中しないと」


 この千万人都市でも学校に通えていない子供は多い。

 李里、由良、風見もそうだ。

 そして、生きるため然るべき機関から依頼を出された悪人狩りの仕事で生計をたてている。

 今回の仕事は“死ノ姫”と呼ばれる十三人の魔女の一人である“炎ノ魔女”と呼ばれるものの仲間の手下らしい。

 死ノ姫は実力差はあるものの全員、とてつもない力と魔力量を持ち、生まれた時から争いに勝つために育てられ、魔力を搾取され、殺しを強要され、死ノ姫同士でも殺しあう、人間兵器。

 性的な苦痛は効果が薄くリスクが高いとデータで分かったため、肉体的苦痛と精神的苦痛を浴びせられ、中には両親を目の前で殺され、心を折られた魔女もいるらしい。

 あまりにも残酷でイカれている。

 ……でも、死ノ姫の在り方に反発すれば見せしめに殺される。

 何も出来ないのが現実である。


「そういや、有栖ありすと久々に会ったんだってな。元気にしてたか?」


 ひじり有栖。

 李里と風見のもう一人の幼なじみだ。

 形容できない程の美少女で昔から心の支えになってくれてる存在だ。


「元気だったよ」

「そうか、ならよかった」


 ──その時、左側を何かが通った気がした。

 振り返って見たが誰も居ない。


「どうした?」

「……いや、気のせいみたい」


 仕事続きで疲れているのだろう。

 気にしないことにした。

 でも、こういう何もないかと思ったことに意味があるのかも?

 ま、いいか。

 





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