追放されたバッドスキル【締め切り】持ちの俺、異世界で同人誌を配ったら、魔王軍の四天王がアシスタントになりました〜

@task7

EP4

「へぇ……こんな掃き溜めにも、一人くらいは異世界の勇者が隠れているものなのね」


 宿屋のドアを魔法で軽く吹き飛ばすと、薄暗い部屋の中に一人の坊やがうずくまっていた。  鼻を突く、濃厚なオスの匂い。

 これは確実に童貞だ。しかも極上の、異世界の勇者のもの。

 先ほどの勇者パーティは、ほんの挨拶代わりに精気を吸ったつもりが、あっけなく全滅させてしまった。まあ、森に捨ててきたからそのうち目覚めるだろう。


こんな宿に一人隠れている坊やが、我が軍の脅威となり得るとも思わないが……。


 部屋に入り、一歩ずつ近づく。  薄暗い室内、頼りないロウソクの光が一つ。

坊やはこちらを一切見ることなく、机に向かって何かをしている。

 私の視線が、彼の横に積み上がった大量の紙と冊子に釘付けになった。


(まずい! この子供、まさか魔法使いか!?)


 机に積まれたあの分厚い冊子の山、あれは『魔導書』に違いない。  

私は自分の迂闊さを後悔した。私はサキュバス。魔法は使えるものの、

専門は精神干渉や精気吸収だ。

 四天王のもう一人、魔導に通じたあいつに任せるべきだったか。  

 しかし、召喚されて間もない小僧にそこまでの力はないはず。  

背後に忍び寄り、一気に精気を吸い尽くせば――。


 そこで初めて、坊やがブツブツと何かを呟いているのが聞こえた。  

まずい、高速詠唱だ。私は相打ち覚悟で踏み込む。


「ツギハオトサナイ……ゼッタイカベサー……ツギコソウカル、ゼッタイカベサー……」


(『オトサナイ』? 『カベ』!? 防御結界と広範囲攻撃の複合魔法か!?)


 なんの呪文かは不明だが、この距離なら発動前に魔導書を燃やせる!

 私は魔力を練り上げ、坊やが必死に書き込んでいる魔導書の中身を覗き込んだ。


「……なにこれ? えっ、めっちゃかわいいいいーー!」

「誰だお前。新聞なら間に合ってます。締め切りヤバいから少し黙ってもらえないですか?」


 一瞬だけこちらをちらりと見た坊やは、サキュバスである私に全く興味を示さず、再び机に向かって何かを書き始めた。  

 魔導書ではなかった。絵だ。しかし、教会にあるような堅苦しい宗教画ではない。  目が大きくてキラキラした、とてつもなく可愛い女の子と、カッコいい男の絵だ。


「ねえ、坊や、これはなあに?」

「えっ、漫画だよ。知らないの?」

「マンガ? その机に積み上がってるのも『マンガ』という魔導書かしら?」

「魔導書?違うけど…。あーもう、気が散るなぁ。

 勝手に読んでいいからさ、ちょっと邪魔しないで」


 そう言った坊やは、机の上から無造作にいくつもの冊子を取り出し、

 肩越しにこちらへ渡してくる。  |

 罠かとも思ったが、その『マンガ』の表紙には先ほどのような魅惑的な絵が描かれており、警戒心よりも興味が勝ってしまった。

 私はそれらを預かり、大人しく読み始めることにした。

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