幼馴染の彼氏と朝チュンして幸せを満喫しようと思っていたのに、彼からNTR性癖を拗らせていたことをカミングアウトされ、おまけに寝取られてくれなんて世迷い言をほざいてきたので分からせてやった件
くろねこどらごん
第1話
学のことが好きだ
そう声を大にして言える。
それくらい私、
ううん、好きなんてものじゃない。
私は学のことが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらない。
きっと、私と学は生まれる前から結ばれる運命だったんだと思う。人生の最初期に運命の人に出会うことが出来た私は、きっとこの世の誰よりも幸運だったんだと思う。
これはもはや、学ぶと結婚して幸せになれという、神のお告げそのものだ。
そう解釈した私は深く神様に感謝したし、学との幸せな未来を手に入れるべく、自分磨きに日々勤しんでいくのだった。
純愛は最高だ。
さらに言えば、幼馴染とのイチャラブは最高中の最高としか言えない。
特に裸ワイシャツで朝チュンするシチュが私のお気に入りであり、いつか学とそうなる日のために学のサイズにあったシャツを部屋に常備していたりもする。
「付き合いたい……」
そのためにも学と付き合いたい。付き合ってイチャイチャしたい。ラブラブになりたい。
中学も二年を迎えた頃には、私の学への愛はもはや自分でも制御出来ないくらいにまでなっていた。
だけど、付き合いたいと思うものの、そのための一歩が踏み出せずにいた。
付き合いたいというのは本心だし、学が告白してくれたらすぐにでも頷いて恋人になることに躊躇はない。
でも、自分から告白する勇気は持てずにいた。
私も一応女の子だし、やっぱり付き合うなら学から告白してきて欲しい……でも告白してこなかったらどうしよう。いつまでも待つことになってしまう。
その間に、学の良さに気付いた他の女が、彼に告白するかもしれない。
そんなのは嫌だ。絶対に認めるわけにはいかない。
学は顔立ちこそ平凡だし、背だってそんなに高くない。成績だって普通の方だろう。
クラスの女子がかっこいいと思える男子の話をする時に、学の名前が挙がったことは一度もなかった。
そのことにイラっとすることもあったけど、同時に安心を覚えていた自分もいた。
私は表情の変化に乏しく、なにを考えているかもよく分からないとよく言われることがあったけど、昔から学だけは私のことを分かってくれた。
そう、学だけ。学だけが、私の運命の人なのだ。
彼氏にするなら、ううん、旦那様にする人は、学以外には考えられない。
となると、やっぱり襲うかホテルに連れ込むしかないだろう。
告白するのは恥ずかしいし、既成事実を作った方が色々と手っ取り早い。
「よし、学のことを襲おう」
そのためには、色々と準備が必要だ。
数ヶ月ほど時間をかけて学を自分のものにする手筈を整え、明日にはいざ決行というタイミングで、私は学に呼び出された。
「燐子……俺、お前のことが好きだったんだ! 寝取られるため……じゃなかった。とにかく俺と付き合ってくれ! 頼む!」
そう言って頭を下げる学。この時のことを、私は一生忘れることはないだろう。
天にも昇る気持ちになりながら、私は学の告白に頷きを返すとともに、後ろ手に持っていたロープをポイ捨てた。
こんなもの、もう必要ない。
私と学を繋ぐのはこんな監禁用のロープではなく、運命の赤い糸だったのだから。
口下手な私と運命の王子様。
そんな釣り合いの取れないカップルだけど、私たちはきっと幸せになれるだろう。
なにせ私たちは運命で結ばれているのだから。最高だね。
夢にまで見た素晴らしい未来が、すぐそこまで来ていた。
きっと私たちは、誰よりも幸せになれるはず。学とイチャイチャしながら裸ワイシャツで朝チュンするのもそう遠い未来の話じゃない。
その時こそ、今まで味わったことのない最高の幸福が待っているに違いなかった。
そんなこんなで付き合い始めた私と学だったけど、学は私が思っていた以上に積極的だった。
学校でも一緒にいる時は常にイチャイチャ。登下校も一緒。勿論休みの日も、時間が許す限り一緒に居た。
幸せだった。本当に、心から幸せだった。
……だけど、全く不満がないというわけでもなかった。
何故か学は、私に手を出してくる気配がなかったからだ。
私はいつでも朝チュンする用意は出来ているというのに……。
そんなことを考えているうちに、学と付き合って一年が過ぎた。
中学三年生になった私たちだけど、まだ裸ワイシャツで朝チュン出来ていない。
…………まぁ、仕方ないか。
よく考えたら、中学生で朝チュンするのは、ちょっと早いのかもしれない。
学は責任感が強いから、そういうことをしたら責任を取ろうとするだろうし。
今子供が出来たら高校受験どころじゃないし、将来に不安だって残るだろう。なら、仕方ない。本当に仕方ない。
裸ワイシャツは高校生になってからだ。私は学と同じ高校に進学し、彼に裸ワイシャツを着せる覚悟を改めて固めた。
付き合い始めて二年目。
無事同じ高校に進学した私達は、中学の時以上にイチャついた。
登下校も昼休みも常に一緒。学はドンドン恰好よくなっていったし、それに負けないよう私も自分磨きを続けていた。
今の私たちは、誰の目から見ても理想のカップルに見えたに違いない。
ゴムも準備したし、もういつでも朝チュン出来ると意気込んでいたが、何故か学は一向に誘ってこない。
…………まぁ、仕方ない。
私はいつでもウェルカムだけど、学にはまだそういったことをする覚悟がないのかもしれない。
大丈夫。私たちはまだ一年生。焦らなくても朝チュンする時間はたっぷりある。
それに二年に上がれば、きっと学も我慢出来なくなるだろう。
そう自分を納得させ、来年こそ学に裸ワイシャツを着させる覚悟を改めて決めた。
付き合って三年。
私達は高校二年生になった。私は未だ処女だった。当然朝チュンだって出来ていない。
アピールも万全だというのに。なんで。
分からない。分からないけど、朝チュン出来ていないのは確か。
訳が分からないまま、とにかく学にアピールを続けた。
流石に性欲がないというわけじゃないだろう。彼の部屋にえっちな本や動画が大量に隠されていることを、私は知っている。
その内容が全部寝取られものだったことはちょっと引っかかるけど……まぁそれくらいは全然大目にみる。
性癖なんて人それぞれだし、あまり口を出すつもりはない。
私たちは幸せな人生を歩み、毎日朝チュンを決めるのは確かなのだから。最高だね。
そんな妄想にふけりながら、とにかく学が手を出してくれる日を、私はひたすら待つのだった。
そして付き合って四年目に突入した。
私達は高校三年生になった。まだ私は、朝チュン出来ていない。
なんで、手を出さないの
分からない。
私の我慢はもう、限界だった。
♢♢♢
「なぁ燐子。どうしてお前は寝取られないんだ」
とある休日。いつものように学の部屋に遊びに行くと、何故かそんなことを聞かれていた。
「………?」
質問の意味が分からず、思わず首を傾げる。
学はなにを言っているんだろう。とりあえず聞き返そうかと思い、口を開きかけたけど、その前に学が話す。
「俺さ、寝取られが好きなんだ」
……やっぱり意味がよく分からない。
なんでこのタイミングで、そんなことを言うの?
突然のカミングアウトの意味が分からず少し悩んだけど、すぐに答えは出た。
なるほど、そういうことか。つまりこれは、エッチする前振り。互いに性癖を暴露しあって、より親密な仲になりたいということ。
そのことにようやく思い至り、彼の希望に応えるべく口を開く。
「知ってた」
「え?」
「学が寝取られが好きだってこと、私知ってた。ベッドの下にある本、全部そういうのばっかりだったから」
「…………そ、そうなんだ」
「うん。寝取られものしかないのはどうかと思ったけど、幼馴染ものも多かったからそこは良かった。私もいつも幼馴染ものを愛用してる。私達、まさに相思相愛。相性抜群。運命の相手、だね」
言い終えると同時に、頬を赤くなるのを感じる。
これで準備は整ったと言っていいはず。いつでもいいよ、学。私はもうとっくに覚悟は出来てるから。
「え、えっと、見られたなら聞くんだけど、その、引いてない……?」
「ううん、別に」
「え、マジで?」
「男の子って、そういうものだと友達も言ってたから。むしろ安心した。学、私に全然手を出してこないから、えっちなことに興味ないのかと思ってたし」
「そ、そっか……なら良かった」
なんだかホッとしている様子の学を見て、私は自分の考えが間違っていないことを確信する。
やっぱりこれはえっちなことをするための前フリだった。
となると後はもう、ヤることをヤる流れだろう。さりげなく学が押し倒しやすいよう、位置を変えようとした、その時だった。
「なぁ燐子、俺は寝取られが好きなんだ」
……まだその話をするの?
別にいいのに……あ、しまった。そういえば、私の性癖はカミングアウトしてなかったっけ。
「うん。さっきも聞いた。ちなみに私はベッドの上で朝チュンしながら裸ワイシャツ姿でラブラブトークをする、純愛イチャイチャものが好き」
学も知りたいのだろうと思って話してみたけど、何故か学は乗ってくることはなかった。
それどころか、
「そうか。それはそれとしてもう一度言うが、俺は寝取られが好きだ。いや、好きってレベルじゃない。好きで好きで仕方ないんだ。ぶっちゃけ、リアルでも寝取られたいと思ってるくらい大好きだ。というか寝取られてほしい! 頼む燐子、俺はもう我慢の限界なんだ!」
「え。なにその暴露トーク。それは私もさすがに引く」
とんでもないないことを言い出され、流石の私も困惑していた。
というか、正直ちょっと引いている。いくらなんでも、それはちょっと。
なんでこのタイミングで言うの?
そう思っていると、
「引かれても仕方ないとは思ってる。だけど、俺はもう限界なんだ。なぁ燐子、お前は可愛い。めっちゃ可愛い。すっげー可愛いと俺は思ってる。学校でもお前以上の美少女なんて絶対にいない。断言してもいい。うちの学校では、お前が一番可愛い女の子だ」
「やだ。学、面と向かって言われると、照れる……」
「だから寝取りにかかる男がいないのはおかしいと、俺は思うんだよ。お前のことを俺から寝取りたいと思う男は絶対にいるはずだ。いや、いないとおかしい!」
褒められるのは素直に嬉しい。
やっぱり学も私のことを好きなんだって分かるから。
私にも、学しかいない。そのことをハッキリ伝えるべく、私も彼に隠していたことを話すことにする。
「大丈夫。私は学一筋だから。確かに告白されたことは何度もあるけど、私は全部ちゃんと断ってる」
「おい、待て。お前、今なんていった」
「告白されることはたくさんあるけど、全部断ってるって言った」
なにもおかしなことは言っていないつもりだけど、何故か学は大きく目を見開いた。
なにやら驚いているようだ。
「お前なにしてんの!? なんで告白断ってんの!!??」
「私が好きなのは学だけ。他の男と付き合うつもりはないし、浮気するほど私は軽い女じゃない。なにより、彼女として当たり前のこと」
「いや、しろよ!!! 受けろよ!!! なんで断ってんだよ!!! 浮気しまくってくれよ!!! 俺なんてもういらないと言い放つんだ! そして寝取られてくれ!!!」
「え、なんで私怒られてるの。浮気しなかったから怒られるとか、私聞いたことがない」
彼女として当然のことを言ったまでなのに、何故か怒られている。
全く意味が分からない。おかしい。
「当然だろ! 告白されたら受け入れるのが礼儀ってもんだろ! 間男さんに失礼じゃないか!」
「……言っておくけど、向こうは私に彼氏がいるって知ってた。その上で『俺のほうがイイ男だぜ? あんな冴えないやつなんかと別れて、俺と付き合えよ。たくさん気持ちよくしてやっから!』って言われた。しかもすごいゲスな顔で。彼氏持ち相手に、かける言葉とは思えない。ほんと最低」
思い出しても虫唾が走る。
私は学だけのものなのに……あんなことを言われた過去を思い出したくなかったし、学にも心配をかけると思ったから、これまで話したことはなかった。
彼女として、当然の配慮。私は間違っていないと思いながら、言葉を続ける。
「普通、こんな風に自慢の最高の彼氏を自分と比較して馬鹿にしてくるような相手と、付き合う女の子がいると思う?」
「思うよ! なんだそれ神かよその人! めっちゃいい人じゃん!今からでも遅くない!その人と付き合うべきだ! むしろ付き合え!」
なのに、その配慮を彼氏本人に思いっきり否定された。
しかもコイツ、寝取られろとか言ってる。本気の目で。解せぬ。
「……その人、先輩だったから去年卒業してる。今はもうどっか行ってると思う」
「ガッデム!!! なんてこった!!!」
学は本当に、本気で悔しがっている。
こっちは本当に、本気で意味が分からない。なにその反応。絶対おかしい。
「……学、ちょっといい?」
「ん?なんだ燐子、寝取られてくれるのか?」
「違う。私は寝取られるつもりはない。というか、寝取られとか現実ではまず有り得ない。さすがに私もかなり引いているし、学は現実を見たほうがいい」
流石にこのままにはしておけなくて、私は学を諭すことにした。
「いや、なに言ってんだよ燐子。寝取られは有り得るに決まってるだろ?陰キャの8割、いや9割は彼女を寝取られたいと思ってるし、陽キャの10割は陰キャから彼女を寝取りたいと思ってるんだよ。それが世界の真理なンだわ」
「それは偏見が入りすぎてる。というか、実際そんな世の中だったら人類はとっくに絶滅してると思う。その支離滅裂な言動こそ、まさに現実が見えていない証拠。馬鹿なこと言ってないで、いい加減正気に戻って欲しい」
事実、今の学は間違いなく正気じゃない。
というか、間違いなく頭がおかしい。普通の人はこんなこと言わないし、普段の学だってこんなことを言ったことなんてなかった。明らかに今の学は変としか言いようがない。
「皆恥ずかしがって口に出さないだけなんだよ。だから実行に移すやつが少ないんだ。全く嘆かわしいことだと思わないか? 皆もっと積極的に寝取りにかかっても、なにも問題ないのにさぁ。陰キャは全員本心では、それを望んでいるってのにな」
「……ダメだこいつ。脳が完全に寝取られにやられている。今の学は正気じゃない。私達の未来のためにも、彼女である私がなんとかいつもの学に戻してあげないと」
いくら言っても無駄な気配がプンプンするけど、それでも言わないわけにはいかなかった。
ここでの会話に、私たちの未来がかかっているのだから。
「よく聞いて学。学は今、頭がおかしくなってるの。寝取られなんて現実でされることはほとんどない。そのことを、これから説明してあげる。今の私は
「いや、恋人の努めというなら寝取られてほしいんだけど。それに俺はいつも通りだぞ。いつも寝取られのことを考えていたが、付き合って4年も寝取られていない現実に、いい加減耐えられなくなっただけだ」
「黙って聞いて。もう一度言うけど、今の学は頭がおかしい。そもそも私と学が中学の頃から付き合っていることは周知の事実。私達がラブラブカップルであることは、学校中に知れ渡っている。まずこれが大前提。ここまでは理解できる?」
「ああ。そうなるようにしていたからな。その方が陽キャさんの目に入って、寝取られやすくなると踏んでのことだ」
え、なにそれ。
意味不明の新事実に一瞬フリーズしてしまうけど、すぐに私は自分を取り戻す。
おかしくなっている学のペースに合わせてはいけない。これはあくまで、彼を元の学に戻すための説得なんだ。
「……今のは聞かなかったことにしておくとして。ちょっと質問。私に学という彼氏がいることを知っていながら、手を出してこようとする男がまともだと思う?」
「ああ。とても漢らしいと思う。俺みたいな陰キャより、自分の方が燐子に相応しいと思っての行動だろうからな。そんな男の中の男に恋人を寝取られるなら、本望極まりないよ。むしろ誇らしいまであるな」
「聞いた私が馬鹿だった。質問した相手がそもそもまともじゃないことを失念していた。悪びれもなく頭おかしいこと言われて、私の頭の方がすごく痛い」
……やっぱり聞けば聞くほど理解出来ない。
学は確実におかしい。なにかに憑りつかれているとか思えない。
「もう分かった。方向性を変えて、常識の話をする。まずまともな女の子は、そんな男子はスルーする。信用できないし、評判も良くないタイプが多い。私に告白してきた先輩も、女癖が悪いことで女子の間で噂になってた人だった」
「む……それは良くないな……」
「でしょ? そんな人と付き合ったら、いいように遊ばれて捨てられるか、他の女の子に浮気するのは目に見えてる。遊び気分で手を出してきた相手なんて、その子のことを真剣に大切にしようなんて思わない。ちょっと考えたら分かること。分からず引っかかるのは股が緩いか、頭が足りてない子くらいしかいない。私はそのどちらでもないから、寝取られるのは有り得ない。QED。証明完了」
ようやくまともな反応を貰えて思わず笑みが浮かぶけど、そんな私に学が待ったをかけてくる。
「いやいやいや! ちょっと待てよ! そんな浮気性のやつはともかく、女の子を大事にする間男さんだっているに決まってる! そういうタイプなら問題ないだろ!?」
なんというか、無駄な足掻き感が凄い。もうとっくに王手を打たれていることに気付かない様子の学を少し哀れに思いながら、私はゆっくり口を開く。
「…………ほんとにそう思う?」
「え……?」
「女の子を大事にするタイプの男子が、ラブラブカップルから彼女を寝取ると、そう思う?」
「う……そ、それは……」
「有り得ない。そういうタイプは、人の彼女に手を出さない。まして協調性のあるタイプの陽キャなら尚更。そういう人は周りを見ているから、空気を読む力に長けている。寝取った後のことだって想像がつく。そんなことをしたら、自分が批判されることも。そんなリスクを冒してまで、人の彼女を奪うメリットが彼らにはない。そんなことするくらいなら、ナンパでもして関わりのない女の子を相手にしたほうがよっぽど気楽」
「そんな……! 寝取った後のことを考える陽キャなんていないだろ!? アイツ等は瞬間瞬間今を生きているんだぞ!? 先のことを考えてビビってるようなのが、陽キャのはずがないだろうが!!?? そんなヘタレ野郎は陽キャじゃねぇ!!!」
えぇ……? 学の中で陽キャはどうなってるの…? 頭カラッポな獣かなんかなの……?
「……学の中の陽キャ像は後で正すとして。今度は仮に私が寝取られた場合の話をする」
「ほう!」
……なんか今までで一番興味津々な様子なのが引っかかるけど、まぁいい。
「私が寝取られた場合。学はきっと大いに周りから同情される。そして私は、周りから間違いなく批判される。友達は皆、私から離れていくのは確定。親からも冷たい目で見られるだろうし、もしかしたらもう口を聞いてくれないかもしれない。味方のいなくなった私は孤立するし、寝取った間男も同様の事態に陥ると思う。そうなったら、私は間男のストレスのはけ口として暴力を振るわれたり、最悪無理矢理乱暴にされて警察沙汰に……」
「ちょっと待ってくれ」
そこまで話したところで、何故か学が待ったをかけてくる。
「なに?」
「俺が聞きたいのはそういうのじゃなくてさ。寝取られ報告とか、間男くん最高!学なんてもういらない! みたいな? 罵声混じりに俺のことを捨ててくれるとか、そんな興奮できるシチュエーションなんだけど……」
「そんなの一瞬の快楽で、脳がアッパラパーになった、頭の悪い言動に過ぎない。ちょっと時間が経てば、すぐに現実が押し寄せてくる。そうなれば、熱だって嫌でも冷める。一瞬の一コマを切り取るより、全体の流れのほうがずっと大事。寝取られた後は、こうなる未来が確実に待っている」
学は思った以上に性癖に入れ込んでいるようだけど、その考えは間違いだとしか言えない。
性欲に負けた人間なんて、愚かとしか言いようがない。
どう考えても待っているのは破滅の道。寝取られだって、それは例外じゃない。
「分かった、学? リアルでの寝取られは、なにもいいことがない。お互いが不幸になるだけ。私は理解のある彼女だから、学の性癖に口を出すつもりはない。妄想かその手の本を読むなりで、欲望は満たせばいいと思う。学の脳内で私が寝取られるシチュエーションを妄想するのも、ちょっと癪だけど許容する。私、本当に出来た女」
「りん、こ……」
「学、現実で寝取られたいだなんて考えは間違ってる。こんな彼女を手放すなんて有り得ない。私と一生添い遂げて、そして幸せになろう」
それこそが、正しい道なんだから。
自分が間違っていないことを確信しながら、私は彼の返事を待った。
きっと学なら分かってくれると信じて。だけど……
「…………い」
「ん?」
「……じゃない。……んかじゃない」
「学?」
「間違いなんかじゃない……!」
返ってきたのは、馬鹿としか言いようがない答えだった。
「燐子の言うことのほうが正しいことくらい分かってる! それでも俺は自分に、嘘はつけない!!! ずっと昔、俺は寝取られたいって憧れた! 寝取られたら最高だって思った、この気持ちだけは! 決して……間違いなんかじゃ、ないんだからべらあっ!?」
堪忍袋の緒が切れた私は、なにやらいい感じのことを言ってるっぽい学の顔面に、盛大なパンチを打ち込んでいた。
我ながら結構いい感じの右ストレートだ。軽く吹っ飛ぶ学に追撃をかけるように、私は彼の上に馬乗りになる。
「学。やっぱり今の学はおかしいということがよく分かった。これ以上、彼氏がおかしくなっている姿を見るのは色んな意味で耐えられない」
「り、燐子、さん?」
「そもそも、さっきから学は自分のことばかりしか言ってない。ワガママを通したいっていうなら、こっちもそうさせてもらう」
言いながら、私は学に覆いかぶさる。
そもそもこっちだって、とっくに限界を超えていたのだ。主に性欲の。
「ま、待て。やめ——」
「うるさい。学は私に負けたの。そして、これから私のターン。私は私の理想のために、寝取られから学を寝取る——!」
未だ抵抗を続ける学を強引に押さえつけ、私は自分の理想にたどり着くべく、彼を押し倒すのだった——。
そして翌日。
「う、ううう……穢されちゃった……寝取られに、間男さんに申し訳がたたないよう……ふえええ……」
「ふぅ、すっきり。やっぱりこの世は、力こそが正義、だね」
家から持ってきた裸ワイシャツを着せることが出来て、私は終始ご機嫌なまま、ふたりの未来に想いを馳せるのだった————が、なんだかんだこの後も寝取られ性癖を拗らせていろんな騒動を巻き起こす学に振り回されることになるのは、また別のお話。
幼馴染の彼氏と朝チュンして幸せを満喫しようと思っていたのに、彼からNTR性癖を拗らせていたことをカミングアウトされ、おまけに寝取られてくれなんて世迷い言をほざいてきたので分からせてやった件 くろねこどらごん @dragon1250
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