問題解決
正直に言えば、今でもよくわからない。
なぜ戦ったのか。
リオンが突然、俺の屋敷に現れ、
意味のわからない説明をして、
気づいたら研究所の扉をぶち破っていた。
思い出しても、やっぱりわけがわからない。
「リオン」
俺は、目を覚ましたばかりの少年に声をかけた。
「お前なぜノエルに怒っている。
自分の言葉で説明しろ」
正直に言うと、
俺はリオンの話をほとんど理解できていない。
リオンは少し視線を落とし、
噛みしめるように口を開いた。
「……じいちゃんはさ、
俺を追い出したんだろ」
「俺の才能が怖いんだ。
研究所長の座を取られるのが嫌なんだろ?」
悲しそうな顔だった。
結構深刻なのかもしれない
そう思いながらノエルをみると
対照的に、
ノエルは口をぽかんと開けたまま、固まっている。
……ああ。
やっぱり勘違いだな、これは。
「ノエル」
俺は話を進めるため、ノエルから聞くことにした。
「リオンに、何と言った。再度思い出せるか」
「……そう言われてもじゃのぉ」
ノエルは頭をかいた。
「原型がわからん。
いつの話じゃったかの?」
「昨日だよ」
リオンが即答する。
「じいちゃん、ボケかけてるだろ。
でもそれ認めたくないんだ」
「誰かが継がなきゃいけない。
俺みたいな才能のあるやつが……」
――ああ、なるほど。
これは厨二病というより、
主人公病だな。
才能は確かにある。
だからこそ、世界が自分中心で回っていると思ってしまう。
ノエルは腕を組み、机を見つめたまま、
しばらく黙った。
「……昨日かぁ」
そして、ぽつりと続ける。
「たしか、わしが言ったのは」
「世界を知るために、
ほかの研究所に行ってみるのもいい、という話じゃ」
「甘えられん環境で、生きてみるのも勉強じゃろうと」
「だから推薦状を書いておいた。
使うかどうかは、お前が決めろ、と」
「……そんなことを言った気がするのぉ」
「うん、それだよ」
リオンはノエルの言葉に即答した
どう変換したら
“追い出された”になるんだ。
リオンの思考回路が恐ろしい。
「リオン」
ノエルは穏やかな声で言った。
「それは、お前の勘違いじゃ」
「わしは別の研究所で学んでもええ、
そう言っただけじゃ」
リオンは少し考え込んだあと、眉をひそめる。
「……でもさ」
「それって、研究所を出て、
別の場所で成果出して、
そこの所長になれって意味だろ?」
「ん?」
今度はノエルが首をかしげた。
「違う違う」
「“行ってみてもいい”という意味じゃ」
「……ん?」
今度はリオンが首をかしげる。
「だからそれが、
出て行けってことだろ?」
「……」
ノエルは長い沈黙のあと、
ふう、と小さく息を吐いた。
「……そうじゃな」
「すまんかった、リオン」
「わしの言い方が悪かった」
リオンは一瞬驚いた顔をして、
そして、にっと笑った。
「うん。いいよ」
「俺、じいちゃんのこと好きだからさ」
……仲、いいな。
それにしても、ノエル・ヴァレンシア。
もし転生前の世界で、
俺が勤めていたブラック企業に
こんな上司がいたら――
会社、変わってただろうな。
心の中で、俺はつぶやいた。
上司にしたいランキング、
ダントツ一位だよ、あんた。
あんたが俺の上司なら
俺は逃げずに働いていたかもしれない
俺はそう思った
俺って英雄ですか? 異世界で学ぶ英雄の逃げ方 @tahko
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