復活した最恐の魔王様。〜どんなに強くても、可愛がられるんだが!?〜

花藍81。

第1話

ある日、魔王は目覚めた。

少女の中に眠っていた魔王は、刹那にして少女の意識を乗っ取ったのだ。…こうして、最恐と恐れられた魔王が蘇ってしまったのである。


(揺れている…何処かに運ばれていたのか?)


辺りは暗く、状況の確認は不可能である。どうやら、意識だけが宿ったらしく、少女の記憶を覗き見ることにも失敗する。

だが、光が入らないこと、地面が揺れていることを踏まえ、魔王は此処が馬車の荷台の中だと推測する。


「この程度の拘束など、我なら簡単に破れるが…さて、どうした物か…。」


「そこに…誰かいらっしゃるのですか?」


驚いた…。それが、魔王の素直な感想だった。話し掛けられるまで、魔王すらその存在を認識できなかったのである。


「…貴様は…?」


「私達には名などありません。あなたも与えられていないのではないでしょうか?」


「あぁ…そうじゃな」


「もし、よければこちらへ来てこの拘束を解いては頂けませんか?こちらに短刀がごさいます。」


魔王は少しの間だけ思案し、謎の声の持ち主から短刀を受け取り、拘束を解いた。

もちろん。短刀など無くとも拘束は解けたのだが、一般人を装うため、短刀を使ったのだ。


「貴様は何故この様な物を持っておる?…普通なら暗殺を恐れ、この様な持つこと許されることは無かろうて。」


「いいえ。私達に首輪がある限り、主人様や商人の方への攻撃は不可能です。」


魔王は己の首元に触れ、その存在を確認する。

今後のことを考え無理矢理破壊しようとするが、声の主に気づかれてしまった。


「もしや…破壊なさろうとお考えで?」


「ああ…この程度ならば可能であろう。」


「まさか…高威力の魔法でも破壊できませんよ?」


魔王はそれを聞いても焦らなかった。

馬車で輸送中なのだ、元より派手な魔法で破壊する気などなかったのだ。


「ふむ…外れたぞ。」


「え…?ど、どうやったのですか?」


「ただ内部から腐食させただけじゃ…ふむ、貴様の首輪もはずしてやろう。」


「よろしいのですか?」


「条件がある。我の部下になれ。」


「私に奴隷になれと…?」


(ただ捨て駒が欲しかっただけじゃが…まあ、あまり変わりは無かろう)


「それでよい。…さて、先ずは此処から出ようではないか」


「走行中の馬車から降りる術など…」


「飛び降りれば良いではないか?」


「付近の状況が伺えないため危険かと…」


「ふむ…無理やりにでも止まらせるとしよう。」


そう言うと魔王は立ち上がり、上へと下級魔法『ファイアボール』を放つ。

すると、馬車は止まり、荷台の扉が開かれた。


◇◆◇


新たな御主人様が放たれた魔法により、驚いた奴隷商人と商人に雇われた傭兵が荷台の扉を強く開いた。


「おい、貴様ら何事だ…!!」


「貴様…お前が奴隷商か?」


「あ?なんだと…!?私にと向かっての口の利き方がなっていないようだ…これはお仕置きじゃのぅ…ぐふふ」


御主人様は迫りくる奴隷商にファイアボールを放った。どうやら手加減をしていたようで、魔法だけじゃ死にきれずに、炎に焼かれ、藻掻き苦しんでいた。


「どぅ…してぇ……!首輪ぁ…!首輪のぉ…!魔法はぁ……!!」


「ん?あぁ…暗くて見えんかったのじゃな?ほれ、灯りができた今なら見えるであろう?我等に首輪などついておらぬ。」


「あーあ、雇い主が死んじまったら報酬が出ないんだよなぁ…」


「ならば諦めて失せてくれ。目障りじゃ。」


「いやいや…お前の身体でたっぷり頂くとするよ…良い声で喘いでくれよ?可愛い子ちゃぁん…!」


傭兵が大剣に手を掛けた瞬間、御主人様が傭兵を蹴飛ばし、2人は外へと出ていってしまった。私も後を追うため出ようとするも、中にいるように促されたため、中で待つことにした。


暫くして…


「もう出てきてよい。」そんな声を聞き、外に出る。

そこで私は


「綺麗…」


そう声を漏らしてしまった。

いや、漏らさざるを得なかったのだ。

その容姿は14や15ほどに見え、喋り方とのギャップに驚かされる。また、肩まで伸びた銀髪は、月光のように美しく。これまた月光のような淡い光沢を持ち、新月の夜にはよく映えている。


しかし、特筆すべきはその瞳である。右の瞳だけが、妖しい光を持ち、その瞳は血のように赤く、自然と吸い込まいそうになる。そうだ、目が離せないのだ。


「こら?聞いておったか?」


「え?も、申し訳ありません!思わず見惚れてしまい…!」


私は御主人様にコツンと小突かれてしまった。

だが、悪い気などはせず、寧ろ鼓動が早くなり、胸が高鳴ってしまう。…わ、私って…チョロい?


「どうやら、またもや聞いておらぬようじゃの?」


「ほ、本当に申し訳ございません…!」


「フン!もう知らぬ!我はいじけたからな!」


御主人様は頬をプクーと膨らませ、プイとそっぽを向いてしまった。そのような姿が私の目にはとても可憐に映る。…かわいい!!


「早く隠れぬと知らんぞ?」


「え?」


「鬼の大熊デーモン・ベアじゃ」


「うそ…?」


私達は、御主人様の三倍程ある怪物。鬼の大熊デーモン・ベア3体に囲まれてしまっていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復活した最恐の魔王様。〜どんなに強くても、可愛がられるんだが!?〜 花藍81。 @krno9o9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ