【放送事故】「君の支援魔法、卑猥だからクビ」と追放された俺、捨てられたSランク美女を『絶頂強化』したら、喘ぎ声が全世界に流出して伝説になりました。~いいぞもっとやれ~

👿米澤淳之介⚔

第1話 【追放】「君の支援は教育上よくない」と言われたので、最強のバフスキルを持って脱退します


「――悪いがユウト。お前、今日でクビな」


 東京・港区にあるタワーマンションの一室。 チャンネル登録者数120万人を誇る、国内トップクラスのダンジョン配信パーティ『ジャスティス・ブレイブ』のオフィス兼控室で、リーダーのカズマがスマホをいじりながら言った。


「理由を聞いても?」


 俺――支援術師(エンチャンター)の九条ユウトは、努めて冷静に問い返した。  テーブルの上には、俺が徹夜で作成した「次期ダンジョン攻略ルート」の資料が置かれている。それをカズマは、コーヒーのコースター代わりに使っていた。


「あー、なんて言うかな。お前のバフさ、『絵面(エヅラ)』が悪いんだよ」


 カズマが鼻で笑い、横に座る二人の美女に視線をやった。 清純派アイドルとして売っている聖女のアリスと、クールビューティが売りの魔導師リナだ。


「お前が強化魔法をかけるとさ、こいつら、顔を真っ赤にして変な声を出すだろ? あれが視聴者様やスポンサー企業から『卑猥だ』『教育上よくない』って苦情が来てんのよ」


 聖女のアリスが、わざとらしく身体を震わせてみせる。


「そうなんですぅ。ユウトさんの魔法、身体の芯が熱くなって……なんだか穢された気分になりますの。私、子供たちの憧れでいたいですのにぃ」


「わたくしも同意見だわ。魔法を撃つときに腰が砕けそうになるなんて、魔導師としての品位に関わるもの」


 リナも冷ややかな視線を向けてくる。  ……なるほど。彼らは「勘違い」をしているらしい。自分たちが強いのは、自分たちの才能のおかげだと。


「だ、そうだ。俺たちはクリーンな『正義の味方』として、大手飲料メーカーのCM案件も控えてるんだ。お前みたいな『ノイズ』は邪魔なんだよ」


 俺は深くため息をついた。 俺のユニークスキル【限界突破支援(リミットブレイク)】は、対象の潜在能力を強制的に引き出し、全ステータスを一時的に『5倍』にする規格外の魔法だ。  


 だが、その代償として、脳内麻薬(エンドルフィン)の過剰分泌や、全身の神経伝達速度の加速により、「強烈な快感」を伴う。 彼女たちが喘いでいたのは、俺のせいではない。彼女たちが、溢れ出る力と快楽に耐えきれなかっただけだ。


「わかりました。……ですが、僕のバフがなくなれば、君たちのステータスは今の20%以下になりますよ? それで深層の攻略ができるんですか?」


「ハッ! うぬぼれんなゴミ裏方。俺様の実力ならバフなしでも余裕だわ。お前は後ろでポーション配ってただけだろ?」


 カズマが嘲笑うと、アリスとリナもクスクスと笑った。 彼らは配信のコメント欄しか見ていない。


『ユウトとかいう寄生虫いらねーよw』

『セクハラ支援師は引退しろ』

『カズマきゅんの邪魔すんな』  


 流れるコメントは、彼らの信者による罵倒ばかりだ。


「そうですか。では、契約解除ですね」


 俺は脱退届にサインをした。 これでもう、彼らに「快楽のドーピング」を施す義理はない。 彼らは知らないのだ。自分たちが今まで無双できていたのは、俺が緻密に計算して快感と魔力をコントロールし、敵の攻撃が当たる前に殲滅させていたからだということを。


「あ、装備とアイテムボックスは置いてけよ? それはパーティの資産だからな。今の着てる服だけで出て行け」


「……はいはい。せいぜい、案件頑張ってください」


 俺は杖もローブも置き、ユニクロのパーカー一枚で追い出された。 オートロックのドアが閉まる瞬間、「やっと清々したわ」「これでCM決まるぜ!」という馬鹿笑いが聞こえた。


 ◇◇◇


 外は、あいにくの土砂降りだった。 俺は傘もささず、渋谷の路地裏を歩いていた。


「……はぁ。これからどうすっかな」


 無職、宿なし、所持金はポケットに入っていた小銭だけ。 手元に残ったのは、趣味で改造していた配信用の小型自動追尾ドローン『ハチ公』一機のみ。


 とりあえず、雨宿りも兼ねて、近くにあった『代々木ダンジョン公園』のベンチに腰掛けた。 ここはFランクモンスターしか出ない初心者エリアで、夜は誰もいない。


「……飲むか。やってらんねーよ」


 俺は自販機で買った発泡酒を開けた。 ついでに、手持ち無沙汰でドローンを起動する。 誰が見るわけでもないが、愚痴でも吐き出さないとやってられなかった。


「あー、テステス。……えー、無職になりました。元・支援師です。今からヤケ酒配信します」


 配信タイトル:『クビになったので公園で飲みます』。  


 同接、0人。  


 当たり前だ。俺個人のチャンネルなんて、誰も登録していない。


プシュッ。  


 缶を開け、一口飲んだ時だ。 ダンジョンゲートの奥から、ボロボロになった一人の女性が、這いずり出てくるのが見えた。


「……はぁ、はぁ……ッ! くっ、嘘でしょ……なんで、あいつが……!」


 雨に濡れた銀色の長髪。破れた深紅のドレスから覗く、白磁のような肌。 その顔には見覚えがあった。 かつてソロで深層を単独攻略し、『氷の女帝』と呼ばれながらも、最近スランプでランキング外に落ちたと噂のSランク探索者、神代(かみしろ)レナだ。


 そして、彼女の背後からは――推奨レベル80の災害級モンスター『レッド・ミノタウロス』が、鼻息荒く迫っていた。


「……チッ。厄介ごとだな」


 ここは初心者エリアのはずだ。なぜ深層のボスがいる? イレギュラー(スタンピード)か?  見捨てれば、彼女は確実に死ぬ。  


 だが、俺には攻撃魔法がない。あるのは、パーティを追放された原因である「とんでもない副作用」を持つ支援魔法だけ。


「……まあ、いいか。どうせ無職だ」


 俺は飲みかけの酒を置き、立ち上がった。 上空でホバリングするドローンが、その一部始終を「全世界配信」し続けていることにも気づかずに。

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