皮膚の外/呼吸の後
水到渠成
第1話 皮膚の後/呼吸の後
皮膚の外では、境界が役目を終えている。
触れられるものと触れられないものの差は、すでに意味を持たない。
外気は身体に属さず、身体もまた、外気に属していない。
ここでは、
理解は身体を通過しない。
頸動脈の上も、頸静脈の下も、鎖骨の内側も、すでに遠い。
理解は身体という経路を失い、出来事としてだけ存在している。
皮膚の外では、感覚が遅れて到着する。
痛みも温度も、それが誰のものかを確定できない。
感じられているが、所有されていない。
人々は互いに近くにいる。
しかし、距離は測れない。近いという判断も、遠いという判断も、皮膚を前提としていたからだ。
外側では、距離は性質を失う。
呼吸の後では、時間が一度ほどける。
吸う前でも、吐いた直後でもない。
呼吸が完了したあとの、何も起こらない余白。
そこに、世界が落ち着いている。
呼吸の後では、生存の確認が行われない。
息をしているかどうかは、問題にならない。
呼吸はすでに起こり、終わっている。
終わったことだけが、残っている。
言葉は、この地点では使われない。
音として発せられても、意味に接続されない。
理解も誤解も、どちらも成立しない。
ただ、出来事があったという事実だけがある。
私はここで、自分を探さない。
皮膚の外では、自分という輪郭が役に立たない。
呼吸の後では、主体は必要条件ではない。
世界は、この場所で最も静かになる。止まっているのではない。
進行も保持も、すでに終わっているだけだ。
皮膚の外。
呼吸の後。
そこでは世界がようやく、身体を忘れている。
皮膚の外/呼吸の後 水到渠成 @Suito_kyosei
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