第7話 ただいま、おかえりなさい

 ……………………


 …………


 ……


「……モエ、さん?」


「お、お帰り……ニコくん」


 ダルとジルクスに付き添われて部屋に戻ってきたニコくんが、口をあんぐり開けて固まってしまった。

 そりゃ自分の部屋なのに、私にお帰りって言われたらびっくりするよね。


「まさかイモエがいる?」


 だからその呼び方はやめなさい、ダル。


「使い魔が生きてたのか? しぶといな」


 相変わらず失礼だな、ジルクス。


「モエさん……よかった……生きててよかった!」


「いや死んでるけどね」


 渾身のボケを無視したニコくんが、泣きじゃくりながら私に抱きついてきた。ちょっ……!


 こんなとき、どうしたらいいのか分からない。

 恐る恐る、私もニコくんの背中に腕を回してみる。

 ああ、やっぱり可愛いな……

 ニコくんの体温と鼓動を感じられて、私もなんだか安心した。


 私から離れたニコくんは、涙を拭きながら笑顔で尋ねた。


「でも、どうやって?」


「え、と……多分だけど、私が不死身の地縛霊だから、かな?」


 正直、本当の理由は分からない。

 自爆した瞬間がたまたまタイムリミットで、ここに戻ってリセットされたのだろうか。

 それとも『ヨミガエール』が本当に不老不死の薬だったからか。


 でも私がここにいるのは、色んな偶然が奇跡的に重なった結果じゃないかな。

 ……いや、違うな。

 そんな天文学的な確率は理系にあるまじき思考だ。訂正するよ。


 最初からこうなる運命だったんだよ、きっと。


 ……なんて、そっちの方が思考停止で理系にあるまじき考え方だね。

 でも他の理由が思いつかないや。


「そういえば、ニコはジルクスに謝ってもらったん?」


 思い出したようにダルが尋ねる。

 そうだった、ニコくんが勝ったら謝ってもらう約束だった。


「いや、まだだけど……」


 涙を拭きながら苦笑いするニコくんと、ニヤニヤ笑うダルがジルクスを見つめる。

 ジルクスは居心地悪そうに一歩後ずさった。


「ぐっ……言っとくが俺様は負けてない。ギブアップしてないし審判も止めてないからな!」


 ぐぬぬ、確かに。そういえば勝敗はうやむやになってたな。

 ジルクスは、コホンとひとつ咳払いして頭を下げた。


「でも、その……失礼な発言だったことは謝罪する。すまなかった」


 あれ、意外に素直じゃん。貴族だからもっと不遜な男かと思ってたよ。

 ジルクスは頭を掻きながらニコくんをちらちら見ている。

 なんだか挙動不審だね?


「あとよ、その……お前のこと、ニコって呼んでいいか? 俺様のこともジークって呼んでくれよ」


 あっけに取られたような表情のニコくんが、にぱっと笑って右手を差し出す。


「もちろん。ジークは命の恩人だからね!」


「お、おう」


 恥ずかしそうにニコくんと握手するジーク、実は友達になりたかったのか。

 そう考えると、朝の暴言も試験で強力な使い魔を使わなかったことも、本当にニコくんを心配してたのかもね。

 まったく、テンプレみたいなツンデレじゃん。


「でもこれで初級死霊術師に合格かぁ。よかったな、ニコ!」


「……待てよ。勝敗の判定されてないし、合格の宣言もなかったよな」


「あれ? もしかして、僕……今日の試験に合格してない?」


 能天気なダルと首を傾げるジークの言葉に、ニコくんの顔がどんどん青ざめていく。


「僕、先生に確認してくる!」


「オレも付き合うよ、ニコ」


「俺様も行ってやろう、ニコ」


「それじゃあモエさん、いってきます!」


 3人はバタバタと部屋を出て行った。

 まったく、あの年頃の男子ってほんと騒がしいよね。


「いってらっしゃい!」


 私はここできみたちの帰りを待ってるよ。

 手を振って3人を見送ったあと、両手を組んでぐっと大きく伸びをした。

 窓の外には抜けるような青空が広がっている。


 可愛いニコくんのために、っていうと使い魔としては不適切かもだけど……これからも彼の夢を叶えるお手伝いをしよう。


 そしていつか賢者に会って人間に戻れたら……ニコくんをもふもふしてなでなでして……ダメだ、想像するだけで可愛すぎて昇天しそう。


 ふふ、ジバク霊って案外悪くないかもね。



<お礼とお願い>

 ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。

 次回「第7.5話」で、第1章は終わりです。

 第2章からは、さらなるチート能力によって学院で起こる事件を解決しながら、まったり死霊ライフを満喫(時々バトル)していくパートとなります。

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