第三話 魔力は電気の代替品
「貴女が新しい勇者ですか?」
「はい。貴方は?」
イバルディに中庭へ案内された私は、そこに居た大剣を肩に担ぎ、左手には短い剣を持った男に質問を返す。
「私は【剣聖】ヴィルヴァルディル・ヴィヴァイアドと申します。貴女の指南役でもあります」
私以外だったら噛みそうな名前をした彼は、自身を剣聖と名乗った。
どうやら私の指南役らしいが、私に戦闘経験はほとんど無いし、身体に銃火器が搭載されてるわけでもない。
それは単に私は人より頑丈で身軽な、ただの17歳の女の子であるからに過ぎない。
「私、戦闘経験が無いんだけど。そんな私でも指南してくれるの?」
「勿論です!古い親友の頼みですから。おっと、彼の頼みで無くとも私は昔から勇者とお相手したかったので、頼みで無くとも旅の間にここへ来ていたかもしれません」
旅の間…つまりはこの人は剣聖であり旅人なの?
「普段は旅を?」
「まあ、いろいろなところを転々と旅してる感じですかね。この前なんかは獣人の国に行きましてね、人とは食文化や建築文化が大きく違って面白かったですよ」
そう言いながら私に向かって手に持った短剣を投げて渡してきた。
手元に届くまでに剣が大きくなっているように感じたがただの錯覚だった。
どうやら彼の巨体と比較して剣を見ていたせいで小さく感じただけで、実際は私の上半身くらいの長さの剣だ。
私はそれを受け取り、話している内にも戦いの準備は整っているのを肌で感じる。
「今のを問題無く受け取れるなら反射神経については問題なし」
「問題があったら?止めるの?」
「いえ…ですが先が思いやられるのでまず一安心ですな」
彼は『ふぅ』と一つ息を吐いて大剣を両手で持ち、ドッシリと構える。
私も会話の間に検索した剣の扱い方の動画で学習した上段の構えを取る。
「なんだか、東洋で戦った剣士を思い出します。それにそうだ…その漆黒の髪、やはり東洋人ですか」
「まあ、モデルは」
「モデル?おかしなこと言いますね。まあ良いです…いつでもどうぞ」
彼は私に先手を取らせて力量を計りたいらしく、その場で静止した。
目は真剣そのもので、その眼光は私の一挙手一投足、更には靡く髪の行き先も見逃さないつもりだ。
「おぉ!中々素早いですね!」
彼のところまでひとっ飛びし剣を振り下ろしたが、冷静に受け止められてしまった。
追撃を免れるようにバックステップで大剣の薙ぎ払いを避け、再度構えを取る。
「ズブの素人って訳でも無さそうですが」
「貴方と比べたら変わりはない」
速さで勝てないのなら重さで勝つ。
彼に向かっている間に跳躍し、全体重を掛けて上段から剣を大剣に振り下ろす。
「むッ!?」
だが、そのまま大剣の側面で刃を受け流されてそのまま体勢を崩し落下。
草に落ちた私が立ち上がろうとした次の瞬間には、既に
「やっぱり見様見真似じゃダメかあ」
「鉄は叩かれて硬度を増します。この六日感での成長を楽しみにしていますよ」
立ち上がった私は彼を見送った。
どうやらこれから私の訓練メニューを考えるそうだ。
今の一瞬で私の何がわかったんだろう。
私は全然分かんなかったな。
とりあえずもうやることも無さそうだし、魔術師たちの憩いの場に赴こうと思う。
魔石が一番私のエネルギーとして期待値高いしね。
「失礼しまーす」
扉を開けて中を覗き見るが誰も居なかった。
魔術師は基本忙しいのかな?
様々な薬品の匂いが漂う部屋で、紫色の石を見つける。
「やっぱり電気と変わらない。一度実験段階の供給口を開けてみようかな」
私は思い立ち、口を大きく開けて魔石をその中に放り込んだ。
人間の歯は結構硬いけど、顎が耐えきれないから石に噛み付いたら当然負ける。
でも、私は全体的に常人の二倍程度の耐久力を持つから大丈夫…なハズ。
私はそんな考えをしながら、魔石をボリボリと音を立てながら歯でかみ砕き、舌で喉の奥に流す。
「
まだ供給量としては実際に活用できるところまでは完成してないけれど、空気中から微弱な電気を集めて充電する機構が私のお腹にある。
実際は息を吸うように空気を吸って、そこからちょっとずつ貯めるって方式を取る予定だったんだけど、魔石から出る魔力のエネルギー波と電気が似ている以上、同じ方法でエネルギーを貯蓄出来る可能性がある。
「やっぱり」
予想通り私の充電の残量が食べる前は68%だったのが、今は78%まで増えている。
拳大で10%の回復なら十分だ。
「うぇ…」
吐き出した魔石は光を失っていて、ただの透明な水晶に変わっていた。
どうやらこの水晶は天然の充電池みたいな役割をしているらしい、ただ貯めるのは魔力だけどね。
この世界について少しだけだけど情報が集まってきたからまとめてみる。
そしてまとめるために使うのは誰かが作ったブログにしよう。
不思議なことにここに来てからも不自由無くネットは使える。
だからこそ、私がここに来た理由を残すためにも日記をブログに投稿しようと思う。
ユーザーネームはもちろん私の名前であるソメイだ。
このページのタイトルは【異世界転移した少女型ロボットソメイの勇者体験日記】にしてみよう。
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