ゆく川の流れは絶えずして
「間もなく二番乗り場、四七分発○○駅行き列車ー間もなく発車します。」
アオイが視線を落とした腕時計は十三時三十七分を指している。そんな折
「アオイはさ昔に戻りたいと思う?」
リョウタが独り言の様に呟いた。
「どうしたん?急に」
「まーなんとなく。」
「過ぎたことなんて今からしたら大して役に立たんし戻らんでもええんとちゃうん?」
「相変わらずアオイはドライやな」
「ウチは寧ろ逆や思ってたけど」
「逆?」
「リョウタいつも早う大人なりたい言うとるから、今のことなんか大して気に留めてない思ってた。」
「俺だって色々考えてんねんで」
「そうは見えないけど」
「うっさいわ」
リョウタはそう言い窓の外へ視線を戻す。やがてアナウンス音と共に「ガタン」と重い衝撃と共に電車がゆっくりと動き出し、それから格段話すこともなく淡々と目的地に向かっていく。それが苦痛かと言われると存外そうでもなく、目的地の駅に着き改札を出ると、時より強い風に吹かれる田園風景が広がっていた。
「アオイこっからどうやって行くん?」
「ごめん携帯の充電切れた。リョウタのは?」
「俺のも圏外や」
「そんなに離れてない筈だけど人おらんかな」
二人は辺りを散策しているとバスの待ち合い所に人影があり、その方向に向かうと一人の若い男性が座っていた。
「すいません。俺たち青葉台中に行きたいんですけど場所分かんなくなっちゃって。行き方分かります?」
リョウタが尋ねると
「青葉台中はこの道を真っ直ぐ行った先の高台にあるよ」
男は特に変哲のない口調で答えた
「ありがとうございます。」
二人は軽く会釈をし男が指差す方に向かい山の中を暫く進むと二人の前に川が広がった。
「綺麗な川....」
「やな」
橋を渡り、川岸に降りるとズボンの裾を上げ浅瀬に向かうリョウタを見つめながら、足を水に浸ける。心地よく全身の温度がみるみる下がっていき、ゆらゆらと揺れる足先に川魚の群れが通り抜けていく。その折
「アオイー腹減ったから飯にしようや」
少し離れた所にいるリョウタがこちらを見つめながら声を張り
「はようこんとなくなんで」
とアオイが呼びかけると、バシャバシャと音を立て近寄ってき、アオイが鞄からランチケースを取り出すと箱の中からサンドウィッチが顔を覗かせた。
「普通に美味そうやん。」
「なんそれ。……文句言うならあげんよ」
「褒めてんねんで、料理前より上手くなったんちゃうかって?」
「うるさい。」
アオイは遮るようにサンドウィッチを摘むと口に運び、満足そうに頬張るリョウタを他所に、アオイも視線を合わせずまたサンドウィッチを食べ進める。それから昼食を食べ終え、流れる川の景色を眺めていると
「アオイ」
リョウタが呼びかけアオイが顔を向けたその瞬間、騒がしかった周りの音は消え気付くと重く柔らかな感触だけが残っていた。
「なん、急に」
「別に」
「相変わらず節操がないね」
「さてと、腹いっぱいになったし、そろそろ廃校行こうや」
リョウタがそう言い立ち上がると、アオイも足を拭き靴に履き替えると高台の方に向かう。
「てかさっきの何やったん?」
「もう忘れたわ」
「嘘下手だね」
「はよ来んと置いてくで」
リョウタが歩幅がズイズイと進む中アオイも追うように後を追い廃校を目指した。
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