青の記憶

@hima4200

プロローグ

中学生の頃の自分たちは、どこか似た者同士だった様に思う。学生時代の有り余る時間の中で特別に何かをする訳でもなく、漠然とした不安を抱えながら過ぎゆく時間を共にした。

あれから十年ほど経った現在、大学進学と共に住み着いた鹿児島の地で社会人生活を送っており


「次ー潮鳴駅止まります。お降りの際は足元にご注意下さい。」

運転士のアナウンス音と共に、荷物と息子のユキの手を取り、電車を降りると目の前を故郷の海と潮風が覆った。


アオイは眩暈とうだる暑さに額を拭いながら

荷物から取り出した帽子をユキに被せる。眠りから覚めたばかりのユキは暑さも相まって少しご機嫌ナナメだ。そんなユキの手を取りながら徒歩圏内にあるラーメン屋に向かうと店内にはちらほらと客の姿があり、案内された席で抱っこをせがむユキを膝に乗せしばらく待っていると


「はい。ラーメンお待ちどうさま」

「ありがとうございます」

と店員さんが注文したラーメンを運んでやって来た。


このお店は魚介の出汁と中麺が特徴のお店で、ふとした瞬間に無性に食べたくなる味で、アオラーメンを小皿に取り分けユキに食べさせながら食事を進めていると


「なー俺さっきさ、久々翠ヶ丘第二中に行ってきたんだよ」

横のテーブルに座る男性二人の声が聞こえてくる。

「何でまた急に?」

「別に理由はないんだけどさ、帰省がてら久々なって思って」

「なるほどな。」

「てかお前十年くらい前の事覚えてるか?」

「十年前?」

「何か眠り病って奴が流行った事あっただろう?」

「そういえばそんな事あったな」

「あれ結局何だったんだろうなー」

「さあな。突然大流行して突然聞かなくなったからな」


そんな二人の会話を他所にアオイはラーメンを食べ終えた後、翠ヶ丘第二中学校に向かった。特に理由はなかったが気付けば引き寄せられる様に足取りは其方に向かっている。翠ヶ丘第二中学校は、坂道の中腹にあるアオイが過ごした学校で、蝉時雨が唸るアスファルトの坂道を登って行くと校舎が顔を覗かせる。変わらぬ佇まいに、響く校舎のチャイム。


想起される中学生の頃の何気ない一コマがモノクロの映画フィルムの様にガシャガシャと音を立てながら脳裏に流れる。もうあれから十年近く経つことに驚きを隠せない。やがてアオイは暫く校舎を眺め、その光景を目に焼き付けるとその道すがら不意に歩いて来た坂道を振り返る。そこには夏の残滓と共にあの日の時間が今も一すじ断続していた。

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