世にも奇妙な探偵部
34フルフル
第1話 探偵と助手
「私の友達が開かずの間に連れ去れたんです」
ここは桐生大学付属学校。エスカレーター式のこの学校は、中等部から大学まである。その中の
3回ノックのあとに入ってきた女子は、差し出したお茶を飲まずに気まずそうにそう言った。
「えっと……開かずの間ってクラスで流行ってる都市伝説だよね?神崎さん」
僕がそう聞くと女子―――
「開かずの間、か。よく聞くいかにもな話だけど……うん、悪くないね。そうは思わないかい?
上座に座っていた黒髪ロングの女子が、ゲーミングチェアを回して僕の方を向く。
「……時雨先輩、カッコつけて
「………キミね、そういうのは指摘しちゃダメって習わなかったのかい?」
女子―――
先輩は不貞腐れながらかぶっていたベレー帽を取り愚痴をこぼす。
「……まぁ良い。えーっと、|神崎さん?その開かずの間というのはいつ、どこで見たのかな?」
「時間は昨日の17時くらい、です……美紀ちゃんと昇降口に向かってた時に私が忘れ物に気づいて教室まで取りに戻ったんです。開かずの間を見たのは忘れ物を回収した後、廊下に出た時です」
神崎さん曰く、こういうことらしい。教室を出た時、一瞬蛍光灯がショートして、電気が復旧したらいつもの廊下ではなく終わりの見えない長い廊下にいた。怖かったけど出口を探して歩いていたら、行き止まりに辿り着き、開かずの間があったらしい。
「―――で、扉を開けようとしたんですけど開かなくって……戻ろうとしたら扉がいきなり開いたんです。そしたら……黒くてながい腕がたくさん出てきて……美紀ちゃんは私を庇って……そのまま……」
美紀ちゃんというのはおそらく
神崎さんは話している途中でその光景を思い出したのか、涙ぐみながら両手で肩を抑えながらカタカタと震えていた。
「……そうか、辛いことを話させた、すまないね。夜刀くん、彼女に紅茶を淹れてあげて。あ、はちみつは———」
先輩は頷きもせず話を聞き、神崎さんが話し終えると僕にそう言った。
「スプーン一杯、ですよね?わかってます」
てばやくカップにお湯を注ぎ、ティーパックを入れて棚からはちみつを取り出して一杯だけすくい入れる。
「どうぞ、神崎さん」
「飲むと良い、少しは落ち着くはずだ」
先輩はいつもこんな感じだ。普段は天然というかポンコツって感じがするのにこういう気づかい?気配り?がものすごく上手い。
「あ、ありがとうございます。時雨先輩……夜刀君も、ありがとう……温かい」
神崎さんはゆっくりと紅茶を飲む。
「……さて、神崎さん。〝友達を開かずの間から助けてほしい〟というこの依頼、探偵部として引き受けた。数日待っていたまえ、すぐに解決しよう」
少しして、紅茶を飲み終えた神崎さんの目を見て、優しく、そして力強く先輩が言った。
「あ……ありがとうございます、お願いします……お願いします……!」
何度もお礼の言葉を言いながら神崎さんは部室を後にした。
「……さて、夜刀くん、彼女の話を聞いてどう思った?」
僕―――
僕は先輩が聞いてきた質問の答えを考える。
「そうですね……開かずの間は僕もよく聞く話ですし、実際にこうして被呪者が出ている以上事実だと思います。ただ発生条件が少し引っかかりました」
「……というと?」
「開かずの間は一般人にも見えていて、マスターキーすら通じない異次元の部屋、または扉のことを指します。条件付きで発生するものではない……
僕がそう言うと、先輩は頷いて近くの棚の上の方から一冊の分厚い本を取り出す。この部活に入って何度か見た本。タイトルは〝呪いと妖怪の関連性〟というもの。ここ探偵部は元々はオカルト研究部の部室。だからこういう本が今でも残っている。
「開かずの間、又は開かずの魔と呼ばれる現象は禁忌とされるナニカを行い、封印された場所、もしくは不吉な出来事や心霊現象が起きて人が寄り付かなくなり忘れられた場所……とここには書いてある」
「まぁ……よく聞く話ですね」
「文献に頼るのはアタシは好きじゃないからね、夜刀くんを頼らせてもらおう。クラスで流行っていると言っていたけど、その内容は?」
「えっと……確か、長い廊下の行き止まりにある部屋に近づくと閉じ込められて出られないって話だったと思います。神崎さんが見たのと一致していますね」
「そうか……じゃあもう一つ頼ろう。彼女はキミの瞳にはどう映った?」
先輩が目を細めて僕を見る。見透かされたような感じがするこの視線は、いつまでたっても慣れる気がしない。
僕はさっきの光景を思い出す。出ていこうとする神崎さんに憑いていたいた、あの黒いモヤと僕たちをあざ笑う人の形をした黒い子供の影。
「……しっかりと視えました。呪いの手と人の影が」
「そうか……では、やはり開かずの間は
「「
僕と先輩の意見が合致した。
「さ、行動に移そうか。アタシは調べものがあるから散策してこよう」
「じゃあ僕は救出のための準備をしておきます」
「わかった。じゃあ今日の部活はこれまで!また明日会おう、ワトソンくん」
先輩は椅子から立ち上がり煙管を加えて出て行った。僕も変える準備をしてお茶が入ったコップをシンクに置き、部室をでて鍵を閉める。
神崎さんが飲まなかったお茶が、わずかに減っていたのを僕は見逃さなかった。
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