昨日のモブは、今日の主人公。~ステータスが見える看板娘と、交差点の酒場「双子ツバメ亭」で繋がるバトン~
きくぞう
プロローグ:双子ツバメ亭の窓からこんにちわ
石畳を叩く馬車の音。露天商の威勢のいい掛け声。そして、どこからか漂ってくる香辛料と焼きたてパンの匂い。
ここ、街道の交差点――通称『ハブ・シティ』には、世界中の「余計なもの」と「必要なもの」がすべて集まってくる。
その街の中心、一番大きな広場に面した場所に、私の城はある。
酒場『双子ツバメ亭』。
「……さて、今日はどんな面白い子が流れてきたのかしら」
私はカウンター越しに、磨き上げられた大きな窓の外を眺める。私の瞳には、普通の人間には見えないものが見える。行き交う人々の上に浮かぶ、半透明の文字と数字。レベル。スキル。そして、その人物を形作る『称号』。それは残酷なまでの実力差を示すこともあれば、本人さえ気づいていない「輝き」を教えてくれることもある。
「あそこの強面な兵士さんは、実はレベル5の『極度の愛妻家』……ふふ、ギャップがあっていいわね。あっちの老紳士は、レベル70の『元・宮廷魔術師』? そんな人が、どうしてあんなに必死に迷子の子犬を探してるのかしら」
この街では、無数の人生が交差する。
ある人の何気ない一言が。
ある人が落とした小さなコインが。
ある人が咄嗟に吐いたデタラメが。
それはまるで、誰にも行き先を知らされていないバトン・リレーだ。手渡された本人さえ気づかないうちに、見知らぬ誰かの運命を、あるいはこの街の明日を、少しずつ変えていく。
私はカウンターの下から、一冊の真新しい手帳を取り出した。
「さあ、始めましょうか。今日の物語は――」
視線の先。
新米特有の、ピカピカすぎて安っぽい鎧を着た一人の少年が、今にも泣きそうな顔で路地裏から飛び出してきた。
「――まずは、あの『運だけは最高に良い』あの子から。ねえ、聞いてくれる?」
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