第1話 運命

乙女ゲーム**『精霊の冠(せいれいのティアラ)』**は、私の親友が寝食を忘れて没頭していた作品だった。

舞台は、精霊の加護がすべてを決める世界。ウィストン王国。

「光の聖女」として目覚めた平民の少女マリーが、王子や騎士たち、国民達にも愛され、最終的に国を繁栄させていく、という王道ストーリー。……けれど、その裏で「これでもか」というほど悲惨な末路を辿るキャラクターがいた。

それが、悪役令嬢シルヴァ=ルーシャリア。

彼女は風属性の貴族令嬢。高潔な美貌を持ちながら、性格は傲慢。光属性を持つマリーを「泥棒猫」と罵り、数々の嫌がらせを仕掛ける。しかし、最後にはすべての悪事が露呈し、婚約破棄。家族から見捨てられ、精霊にも愛想を尽かされ無属性になり、最後は修道院送りか、ヒロインが辿るルートによっては非業の死を遂げる。

それが、この世界の「決められた運命」

「ルーシィ(ルーシャリア)は、マジで性格終わってるけど顔だけは最高なのよ! もっと優しかったら推せるのに!」


親友のそんな熱弁を、私は「へー、大変だね」とコーヒーを飲みながら聞き流していた。

そう、あくまで他人事だったのだ。……あの日、横断歩道でトラックに突っ込まれるまでは。

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