せっかく異世界転生したのでのんびり旅をする

ハネッコ族を愛でろ

享年:25歳

持田拓海、25歳


職業はサラリーマン


交際経験は3回、大学2年生の時にゆるふわ系の彼女にフラれて以降彼女はナシ。


ヘビを飼っていて、理系で、すごく可愛かった。


小中高と特に大きなトラブルもなく、

世帯年収も環境も平凡なありがたい生活を送り、

上京してからもあまり苦労することなく大学を出て

普通の商社に勤務した。


容姿も別に芋っぽすぎず垢抜け過ぎず、

性格も何一つ尖っておらず、業績は中の上、

右利きでA型、

ちょっといい感じの同僚の女の子がいて、

ちょっと仲がいい先輩がいて、

少し猫かぶってる感覚はあったけど、

その窮屈さは人生において必要な縛りなはずで、

きっとこの先も不自由なく生活して、

結婚して昇進して子供もできて、それで、

老衰まではいかなくてもそこそこ普通の死因で、

80くらいで、みんなに見送られて死ぬと思っていた。


その日俺は最近ちょっといい感じの同僚の女の子に頼まれて資料作成に勤しんだ。それも問題なく終わって、今度こそ「一緒に夕飯でもどう?」って誘おうと決めたものの、いざとなると言葉にできず、

気まずい間だけを生み出し、誤魔化すように退社をした。


誘って成功していれば今頃2人で入店していたであろう会社近くの居酒屋、俺は1人焼き鳥を貪る。

食べて、酒を飲んで、金を払い店を後にする。

店主のばあちゃんの優しさが沁みた。

この後は風呂に入って、録画しておいた路線バスの旅を見て、歯を磨いて、明日の労働に向けてぐっすり眠る。そして明日また、勇気を出してあの子を誘う。

自炊はしない。


路線バス……旅、旅か。次の大型連休は旅行もいいな。国内の、近場で、温泉にでも行こうか。

その時は、あの子も一緒に誘えるように

少しでも親密になっておかないといけないな。


心の中のア〇マル浜口が俺の気合いを入れてくれたところで俺は思考にふけった頭を現実に呼び戻す。


何故かと言うと少しだけ帰り道が騒がしかったからだ


厳密に言うと俺の後ろ、後ろから見知らぬおっちゃんが叫んでいる。


___い!危ない!そこのあんちゃん!上!上だよ!


おっちゃんがめちゃくちゃ叫んでくれている。


道端の家族連れが目をかっぴらいてこっちを見ている。子供の方は上空を指差して。


上に目を向ける。


ここで、終わり?死ぬのか?俺は、


誰かに問い掛ける訳でもなく脳裏を駆け抜けた問いに答える代わりに、俺の頭に降ってきた看板が直撃した。


一般的な望む最後は得られなかった


最後に残った聴覚が救急車のサイレンを拾う


ああ、泣きたい


その願望を最後にきっと俺は死んだのだと思う


泣きたい____


泣きたい____



次に目が覚めた時、俺は泣いていた。



年相応の大人がしていいような泣き方ではなく、

もっと産まれたての赤ちゃんみたいな泣き方で__


いや違う


俺、多分産まれた


これ、産声かもしれない


死んでから少し経ったような感覚がしたあと、

俺は生まれ変わっていた


赤ちゃんになっていた


どういうことだろう?


でも、作りは違くても間違いなくここは病院で、

泣き声の発生源も俺で、横に助産師さんがいて、


____まじか。


これが転生ってやつ?


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