第4話(最終話)
そんな事を思っていたら、さくらの部屋にいた。電気は付いていない。さくらがローテーブルに突っ伏して泣いている。
「よお、久しぶり」
僕とばっちり目が合ったのは、さくらの飼い猫のマカリンだ。
すると、嬉しそうに僕に近づいて来ると、足に頭をスリ付けようとしてくる。
「ニャァ?」
マカリンの頭は、僕の足をすり抜けてしまう。
「ニャァオン」
不満げに鳴くマカリンに、さくらが反応を示す。
「ずずっ、ごめんね、マカリン。お腹、空いたよね」
さくらがリモコンを掴むと、電気を点けた。マカリンが、僕の周りをぐるぐると回る。
「ニョオン」
僕に甘えたい時に出す、独特の鳴き声を上げながら回り続けていた。
「ごめんな、もう撫でてあげられないんだ」
マカリンの頭に手を置くが、やはり触れない。
「お前も、悠人がいなくて寂しいのね。私も、寂しいよ」
さくらがマカリンを抱き上げようと屈んだので、僕の顔とさくらの顔が急接近する。
「痛っ」
思わず唇を重ねてしまうと、パチンと静電気が音を立てた。
「びっくりした」
「もう、びっくりしたのはこっちだよ」
ぽろっと僕の口から漏れた言葉に、さくらが応えたのか。
「えっ?」
「えっ?」
「ニョオン」
僕とさくらが同じ反応をすると、マカリンが更に甘えた声を出す。
「やっぱり、悠人、なの? って、何言っているんだろ、私」
さくらが頭を振る。
「聞こえ、てるのか?」
「嘘っ」
「ニョオォン」
固まるさくらを他所に、マカリンは僕の傍でひたすらスリスリしようとしては空を切るを繰り返していた。
「さくら、ありがとう。僕、幸せだった。さくらを守れて、良かった」
僕の中で、何かが音を立てた。それと同時に、もう時間がないんだと、変な確信を持つ。
「私だって、私だって。なんで、私だけ。悠人、悠人」
さくらが嗚咽にまみれて、言葉を吐き出す。
「聞いて、さくら。多分、もう時間がない。君はとても辛いと思う。だけど、僕は君を助けられて、誇らしいんだ。難しいかもしれないけど、君もそう思ってくれると、嬉しい」
「何それ、ずるい。ずるいよ。そんな風に言われたら、とても悠人らしい言い方されたら、そうしないといけないじゃん」
さくらは、わんわん子供のように泣いた。ぼろぼろと涙をひとしきり流すと、口角を無理やり上げて歪な笑みを作る。
「ありが……」
僕の言葉は、そこで途切れた。暖かい光のようなものに包まれて、意識が溶けて混じり合っていく。
『ああ、良かった』
僕が最後に見たさくらは、泣きながら笑っている。さくらがどのくらいの時間をかけるか分からないけれど、立ち直る方向に進み始めたのは確かだから。
ルーティーンの先は ふもと かかし @humoto_kakashi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます