ルーティーンの先は

ふもと かかし

第1話

 目覚ましが鳴る。

「うるさいな」

 文句を言いながらも、微睡から抜け出せずに結局1分後に自動で切れるまで鳴らしっぱなしだった。


「朝か」

 流石に、そこまで邪魔されれば覚醒するので、ベッドから起き上がる。時計はいつも通り6時31分を示していた。


「どうにかしないとな」

 ベットの周りには、脱ぎ散らかした服が散らばっている。28歳独身、一人暮らしだから、自分で片付けない限りは部屋が綺麗になる事はないのだ。


 いつもの流れでバスルームへ向かう。朝一にシャワーを浴びるのもルーティンの一つである。

 バスルームを出てキッチンへ向かう。電子レンジの時計は7時12分を示している。これもほぼいつも通りだ。


「どうしたものかな」

 朝食は食べない派なので、朝はコーヒーだけである。テーブルに置いたカップ越しに流し台が見える。数日分の食器が汚れたまま積まれて、奇麗に洗われるのを待っているが、今日も後回しにしてしまう。


「はあ、やっぱりブラックなのか」

 コーヒーの事ではない。会社の事だ。連日、残業続きで休日出勤もある。だが、残業代は出ているから、まだましなのではないか。ただ、法律上限分までだけれども。

 会社としてはそれ以上残業をさせられないので、帳簿からも抹消されている。つまり、それ以降の分はサービス残業という形になっていた。


 散らかった部屋を尻目に玄関を出るが、流石に夜遅くに帰って片付ける気力は湧かない。

「次の休みこそは、絶対」

 ああ、これ先週も言っていた気がする。いや、今度こそ。


 家からバス停までは、徒歩3分。バスの時間ギリギリに向かうので、いつも最後尾だ。前にいる面子は、だいたい一緒である。あっ、今日はお団子頭のお婆さんがいない。ということは、水曜日だ。

 バスのドアが開くと、皆が黙々と乗車していく。僕もそれに倣って、大人しくバスへと乗り込む。


 バスに揺られる事、40分。会社へと到着する。工業団地の一角にあるので、バスからはぞろぞろと人々が降りていく。僕は人波に紛れるのは苦手だから、皆が降りるのを待って最後に降りる。


「おはようございます」

 会社の門で社員証を掲げながら、警備員さんに挨拶をするが返事はない。それも仕方が無いだろう、パートさんを含めれば300人近い従業員が入って行くのだ。一人一人に挨拶を返してもいられないだろうからな。


 事務所に入り一息つくと、すぐに朝礼が始まった。僕は特に報告事項もないので、黙って聞いている。

「はあ、またあいつは」

 大切な報告を忘れていたようで、後輩が怒られてしまった。割と抜けた所は前からあったが、ここ数日は特に酷い気がする。


「まあ、ミスやうっかりは誰にでもあるからな。落ち込まないで、切り替えて行こう」

 朝礼後に、後輩を励ましてやろうと声を掛けた。僕っていい先輩だな。

「……」

 なのに、無視されてしまった。よっぽど落ち込んでいるのかな。これは、時間に解決してもらうしかない。僕はそっと離れると、外回りに向かった。

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