涙のしずくちゃん

チェンカ☆1159

涙のしずくちゃん

 しずくちゃんはおねえさんの涙から生まれた女の子です。それからというもの、しずくちゃんはずっとおねえさんのそばにいます。

 けれどもおねえさんはしずくちゃんのことが大嫌い。しずくちゃんが近くに来ると、悲しくもないのに涙が止まらなくなってしまうからです。

 迎えたおねえさんの誕生日。しずくちゃんはどうしてもお祝いしてあげたくて、おねえさんに近づきました。おねえさんは誕生日の記念に歌を歌う配信をしていましたが、しずくちゃんが近くに来たことで涙が溢れてしまいました。

 おねえさんはすぐに配信を止めると、しずくちゃんに向かって言いました。

「ねぇ、今日誕生日なのになんで寄ってくるの?あんたなんか求めてない!どっか行ってよ!!」

 けれどもしずくちゃんはその場から動こうとしません。おねえさんは部屋を移動しますが、しずくちゃんはずっとその後をついてきます。

「もうなんなの!?本当にどっか行ってよ!私の邪魔しないで!!」

「……あのね、おねえさん」

 その時、ずっと黙っていたしずくちゃんが初めて言葉を発しました。突然のことにおねえさんはすっかり驚いて、目を見開いたまま固まってしまいました。しずくちゃんは言葉を続けます。

「おねえさんのことずっと見てきたからわかるよ。泣きたい時は泣いていいんだよ?」

「……そんなの、認めない。私に泣く資格なんてないから」

「泣く資格ってなに?おねえさんは本当に泣きたい時までガマンしてるけど、誰にだって泣く権利はあるんだよ?なんなら泣くのは義務だよ」

「義務?馬鹿なこと言わないで。自分が招いたことで泣くなんて嫌。被害者面したくないのよ」

「被害者面?おねえさんは本当に泣いていい時までガマンしてるよね?ずっとそんなことやってたら壊れちゃうよ」

「涙ごときに何がわかるのよ!!」

 おねえさんは怒鳴りましたが、しずくちゃんは怯むこともなく言い返します。

「わかるよ。私だっておねえさんの一部なんだから。泣くことは生きていく間で本当に必要なことだから。だからもう、泣かないことを肯定しないで」

 それを聞いたおねえさんは何も言えずに黙り込んでしまいました。

 しずくちゃんはおねえさんに近づきます。

「こ、来ないで……」

「やだ。私だっておねえさんの誕生日お祝いしたい」

「……なんで私のこと嫌いにならないの?普段から酷いこと言ってるのに」

 おねえさんは不思議そうに尋ねます。それはいつも嫌がられているしずくちゃんにとって、初めておねえさんから歩み寄られた瞬間でした。

「おねえさんの気持ちもわかるもん。小さい頃泣いた時に怒られたり笑われたりしたこと、まだ気にしてるんでしょう?」

「うっ……よくおわかりで」

「ずっと一緒にいるもん。今までも、これからも」

「はぁ……涙からは逃げられないってことか」

 溜め息をついたおねえさんに、しずくちゃんは怒った顔をして言います。

「逃げないでよ。何があっても絶対逃さないけど」

「あれぇ……?もしかしてキミ、ヤンデレ属性だったりする……?」

「やんでれ?それはよくわかんないけど、いつまでもおねえさんの傍にいるよ」

「そういう発言がもうヤンデレなのよ……」

 おねえさんは溜め息混じりに呟きつつ、少しずつしずくちゃんのことを受け入れはじめていました。

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