トイレ⭕花子さんのお正月。
崔 梨遙(再)
お正月の創作掌編 1841文字です。
あけましておめでとうございます。
僕は西園寺歌麻呂、小学5年生。今、クラスの女子達と三階の女子トイレにいる。僕は、奥の個室からノックする。
『花子さん、いらっしゃいますか?』
ドアを開ける。誰もいない。セーフ。
次のドア。ノックする。
『花子さん、いらっしゃいますか?』
ドアを開ける。セーフ。
さあ、いよいよ3番目の個室。ノックする。
『花子さん、いらっしゃいますか?』
ドアを開ける。いた! 僕に掴みかかってくる。クラスの女子はパニックになって逃走。
しかし、落ち着いたら、たかが女子の腕力。僕の方が力は強い。僕は花子さんの腕を掴んで、真正面から花子さんと向き合った。
(か、カワイイ……)
『君、僕の家に行こうよ』
僕は強引に花子さんを自宅に連れて帰った。
『あら、お客さん?』
『うん、後で飲み物を持ってきてね』
『さあ、ここが僕の家、ここが僕の部屋。ここが今日から君の家にもなるんだよ』
『どういうことですか?』
『君は花子さんだろ?』
『うん』
『家は?』
『トイレ』
『家族は?』
『いない』
『君はこの家が引き取るよ。君はちゃんと学校にも通えるんだよ』
『本当に? 私、授業を受けたかったの』
『その代わり、君は僕の婚約者。将来は僕のお嫁さんになるんだよ、いいね?』
『うーん、うーん、うーん……まあ、いいか。OKです。私、あなたと結婚します』
『ありがとう! 僕は西園寺歌麻呂、君の名前を考えないといけないね。うーん……戸入野(といれの)花子、どう?』
『最悪です。私、綾小路がいいです』
『わかった、綾小路花子でいいね?』
『それでいいです』
『あらあら、カワイイ女の子ね。本当にキレイ』
『母さん、彼女は綾小路花子さん。親も親戚もいないんだよ。僕は将来、この子と結婚するから、この子をこの家で引き取ってあげようよ』
『歌麻呂の婚約者なの? じゃあ、引き取るわ』
『あの、私、戸籍も無いんですけど』
『大丈夫よ、お金の力でなんとかなるから。あ、明日の土曜は私と買い物に行きましょう。服を買わないとね! 美容院にも行きましょう、おかっぱ頭じゃ、せっかくの美人が台無しよ』
それから花子さんは僕の家で暮らし、予定通り、僕は花子さんと結婚することが出来た。しかし、夫婦というものは時には喧嘩することもある。喧嘩をすると、いつも花子さんは、
『実家に帰らせていただきます』
と言って、小学校の三階トイレに閉じこもってしまう。放っておくこともできないので、いつも僕が花子さんを迎えにいく。小学校のトイレまで。
『花子さん、謝るよ』
『……』
『花子さん、許してよ』
『……』
『花子さん、出て来てよ』
『……』
それから、学校の7不思議に、トイレで謝り続ける『トイレの西園寺君』が加わったらしい。
僕と花子さんの間に子供が生まれた。男の子だった。名前は華麻呂。
華麻呂が4歳の時の冬休み、1月2日のお正月、華麻呂は言ってはいけないことを言った。
『僕、お母さんの実家に行きたい』
『華麻呂、どうして?』
『だって、幼稚園のみんなが、冬休みはお父さんやお母さんの実家に行くって言ってるもん』
『お父さんの実家には、いつも行ってるでしょ』
『お母さんの実家に行きたいの!』
『何も無いところよ、トイレはあるけど』
『行く! 行く! 絶対に行く!』
『あなた、どう思う?』
『1度連れて行くしかないね』
『じゃあ、行きましょうか?』
『華麻呂、ここがお母さんの実家よ』
『すごい! 小学校の中にあるんだね』
『そうよ、びっくりした?』
『でも、ちょっと寒いよ』
『ああ、電気ストーブなら持ってきたよ』
『あら、あなた、よくそんなかさばる物を持ってこれたわね』
『そんなことは、作者次第でなんとかなるんだよ』
『それは便利ね』
『ほら、鍋、具材、カセットコンロもあるよ。鍋にしよう、すき焼きがいいかな?』
『わーい! すき焼きだー! でも、ここはちょっと臭いね、なんとかならないの?』
『華麻呂、昔はもっと臭かったのよ。これでも、かなりマシになった方なのよ。最近はどこも清潔でいいわ』
『早く食べて早く帰ろうよ。あ、おしっこ』
『好きなトイレを使いなさい、トイレだけは沢山あるから。良かったら3番目のトイレにしなさい。お母さんのお気に入りの場所、お気に入りの便器よ』
『華麻呂、もう帰るの? あんなに行きたがっていたのに』
『だって、トイレじゃん!』
『あら、やっぱりわかった?』
『わかるよ!』
ちなみに警備員さんに目撃されていた僕達は、『トイレで鍋をつつく西園寺一家』として、また新たに学校の7不思議に加わったらしい。
今年もよろしくお願いいたします!
トイレ⭕花子さんのお正月。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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