雨の中で拾った猫が人の言葉を話し、しかも元人間で推理力抜群——絵本千蔭というキャラクターのインパクトが、この作品全体の方向性を決めている。傘を盗んだ犯人探しからアパートの悲しい真実まで、日常の謎を軽快に解いていく序盤から、猫になった理由そのものが大きな謎として横たわっているのが秀逸だ。
「出会い編」から「最後の演繹編」まで章ごとに編成された構成が読みやすく、レビュアーが評するように、網代と千蔭の落ち着いた掛け合いが心地よいテンポを生んでいる。ユーモアを交えながらも、書籍暗号や密室といった本格ミステリーの仕掛けがしっかり作り込まれており、人物描写のレベルの高さが推理小説特有の難しさを感じさせない読みやすさに繋がっている。
完結済み・全46話・12万字超、29人のフォロワーを抱える人気作。猫が「推理を語らない」というタイトルの意味が分かったとき、きっと納得させられる一作だ。