3.8億年の共謀
satellite
始 水辺への誘い
感染症研究所の第3研究室は、異様な喧騒に包まれていた。
パンデミックを引き起こした「メテオ・ウィルス」は、その異質さから既に地球外生命体として扱われていた。
感染源は、数週間前に太平洋沖に落下した小型隕石の破片から検出された粒子だとされている。
主任研究員のキタムラは、画面のグラフを睨みつけ、苛立ちを隠せないでいた。
「なぜ感染初期の患者は、普段よりも活動的になり、人と会う回数が飛躍的に増えているんだ?」
助手のヤマザキが顔色を悪くして答える。
「高揚感を引き起こす特異なサイトカインが過剰分泌されているのかもしれません。まるで、何かによって行動を操られているかのようです。」
キタムラは、疲労からか、あるドキュメンタリーの一場面を思い出した。
寄生生物が宿主の神経を操作し、自らの生殖の場である水辺へと強制的に導く映像だ。
「まさか、このウイルスは感染拡大のために、宿主の社交欲求を人為的に刺激しているとでもいうのか?」
その時、彼の細胞内の、ナノメートル構造体で構成されたネットワーク上で、異星の粒子たちが通信していた。
粒子α 「この星の『支配者』とされる種、『ニンゲン』の筐体への初期感染は成功。我々にとっての『水辺』、すなわち『集合点』への誘導メカニズムを起動せよ。」
粒子β「『高揚の因子』の分泌を確認。この容器は、積極的に我々の粒子を運搬し始めるだろう。」
しかし、数日後、最初の問題が発生した。感染者の致死率が急上昇し、全例、40度近い高熱で免疫系が暴走したのだ。
粒子γ「警告!『筐体』の自己防衛機構が過剰反応した。このままでは、効率的な『継承』を果たす前に『容器』が燃え尽きる。」
粒子α: 「失敗だ。これではただの熱源で終わる。直ちに『伝播因子』の生成を調整し、『熱耐性』を与えるタンパク質の組み込みを開始せよ。我々は『宇宙の種』として、この星を支配するためにやってきた。そのための最良の手段を選び直せ。」
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