祈りのアベ・マリア After Story ―あなたの手をとるまで―

音野彼方

プロローグ

 もう涙は、出尽くしたはずだった。


 イブなんて、今までもこれからも縁のないものだと思っていた。


 25歳。

 叶うはずもない願いが叶った、イブの夜。


 光流は無表情のまま、ただ足を交互に動かし、

一人アパートへと向かっていた。


 二人で合わせた音が、向けられた笑顔が。

 頭の中で何度も、何度も繰り返されていた。

 

 今までで一番、幸せだった。


 アパートに着く。


 鍵を開け、ドアをくぐり、玄関の明かりをつけ、そのままベッドの前に立つ。


 幸せ、"だった"のに。


 ――叶ったものが、壊れてしまった……


 一気にせき止めていた涙が流れ出す。


 次の瞬間、膝が抜け、ドンッという鈍い音が響いた。


 ――こんな自分…こんな自分じゃなかったら……


 光流は布団を頭から被り、声を出して泣いた。


 そして自分を、呪った。


 

 


 

 


 


 

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