下ネタがお好きな閻魔大王(4)

 ガブリエルの一言によって、大勢の―――百を超える天使たちによる―――無数の輝く光線が放たれる。


 色とりどりのそれらは、まるで流れ星を連想させた。


 しかし感慨に浸る間などなく、すぐさま閻魔の眼前へとそれらが差し迫って来る。


 残り1秒―――0.7秒―――0.3秒―――


 閻魔は―――



「だああああああああああああ!」



 集光されて、より集まった光線の束を両手で受け止めた。太く眩い光の束を強引に受け止めたその手元からも、同じく光線の束が放出されている。


 これこそが、閻魔大王が地獄の王足り得る超能力―――原子に干渉する『原子負荷』による結果である。


 ありとあらゆる原子の移動速度、移動方向、移動密度を自由に操作することのできるこの能力―――これにより、自身の着ていた漆黒のスーツの原子を加速。攻撃へと転じた。その結果、すんでのところで衣服はほぼ同出力同波形の光線となり、ぶつかり合った結果、膠着状態へと移行したのである。


 ―――ガブリエルとて、感情を持つ生物だ。無数の部下によって打ち出された魔法光線を、閻魔と言えど一人の人間の手によって食い留められた衝撃は、かなりのものであった。


 つい『なっ……』と声が漏れたが、どうにか平静を保つ。しかし、天界の最高権威こと大天使ガブリエルは、再び目を丸くさせることとなる。



「ふっ……ふぅぅぅんんんんんっ♡」



 閻魔大王総統閣下の、魔法光線を食い留めるその声―――気合いを入れるためのその叫び―――が、めちゃくちゃエッチだったからだ。しかも、衣服を構成する繊維を、これまた構成する小さな原子たちを、全て攻撃に使用したので、当然全裸である。



「んっ……んぁぁぁぁんっ♡」



 おいおいどうにかならないのか閻魔よ、と抗議をしたいところであったが、自身のキャラ属性的にそれは不可能である。


 何故なら、閻魔は無意識だからである。


 《天然系男勝りなキャラの時折出るエッチな部分×天使系悪役キャラのスカした罵り》という二つの属性は、互換性を全く有していないので、どっちかが配慮しないと状況がごちゃごちゃになってしまう。


 そして、この場合配慮せねばならないのは『大天使ガブリエル』の方である(かわいそう)。


 ことシリアスな場面で、こんな叫びを発されるのは天使と言えどもはじめての経験だ。ゆえに、ガブリエルはこうするしかない。



「くっ……殺してください! 早く! あの不埒な輩を一刻も早くここから消すのです!」



 逆くっころである。


 本来ならば、くっころというものは自身に向けられて然るべきだ。


 自信に満ち溢れた女騎士が、自らの戦闘能力やら戦略やらを木っ端微塵に破壊されたうえで、それでも自身の騎士たる誇りを守らんと発動するのが《くっころ》。でも、ここで大天使ガブリエルは自分を見失い《逆くっころ》を発動してしまった―――


 つまり、天使系悪役キャラの揺らぎが発生したのである。


 ―――ここからは、閻魔のターンだ。



「うぉおおおおおおおおおおおおい!」



 突如として、閻魔が叫び声を上げた。



「今だっ……今しかないぞっ……」



 閻魔が土壇場で叫び、呼び出したその人物は―――


 ガブリエルたちが玉座の間へと侵入してきたその瞬間から、あえて後方の土煙に紛れて待機していた―――



「ボーイズ・ラブ大好きな、腐女子ジャーニぃぁぁぁぁぁぁぁ!」

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超絶プリティ閻魔大王総統閣下は、下ネタがお好き(諸事情アリ) りんごが好きです(爆音) @pizzasuki

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