第10話 三つ子姉妹の長女に首輪をはめて、夢を応援することになった。
「けっこう本格的な首輪だな……」
受け取った首輪は、そこそこ重厚感があった。
ギリギリチョーカーに見えなくもないデザインなのが救いか。
「それがいいんですよ」
「……本当に着けるの?」
「当然です。ではみきと先輩……どうぞ」
俺は咲に首輪をはめた。
「わー……なんだか、しっくりきます」
咲は感慨深そうにはめられた首輪に指先で触れている。
その姿を前に、俺は。
(悪いことをしている感がすごいな……)
かわいらしい美少女に、あまりかわいげのない首輪。
インモラルな光景だ。
ドキドキする。
なんだこの感覚は。
しかし、一方で。
「……なんだか、俺の家の飼い猫みたいだな」
そう思うと、和む。
「ショコラくんとチーズくんは男の子では?」
「あいつらも首輪をつけてるから」
「確かに、お揃いと言えるかもしれません」
「それと俺によく懐いていて、ふとした時に近寄ってきて構ってほしそうに鳴くんだ」
「なるほど……では」
咲は、納得したようにうなずくと。
一度こほんと咳払いをしてから。
「にゃー」
猫の鳴き真似をした。
「……かわいすぎない?」
「ご主人様を舐めますにゃー」
俺が語彙力を喪失していると、咲がノリノリで舐めてきた。
首筋、顎、くすぐったい。
「ちょっ、咲……?」
「撫でてほしいにゃー」
咲は自分から俺のペットと化していた。
ショコラやチーズとは異質のかわいさだ。
「まったく、しょうがないペットだな」
俺は完全に咲のプレイに乗せられていた。
言われるがまま、撫でてあげる。
首回りを中心に撫でたり、くすぐったり。
「んっ……にゃー」
咲は触られてうっとりしていた。
快感を得ていそうな反応だ。
そのまま引き続き、かわいがっていると。
「もう少し、下の方も触ってほしいにゃー」
もう少し下。
一年生らしからぬ、二つの膨らみがそこにあった。
俺のペットが、えっちなお誘いをしてきた。
「バイト中だからやめておくよ」
「キスはしたのに、ですか?」
「なんかこう、胸を触るのはライン越えだ」
「猫ちゃんプレイはしているのに、ですか?」
「これはお客様のご要望にお応えしているだけだ」
俺のバイトはこれでも接客業だからな。
「大きさで、何か分かることがあるかもしれないのに?」
「いや……そんな誘惑には騙されないぞ。きっと三人ともスリーサイズが同じなんだろ」
「さすがみきと先輩、私たちのことをよく分かってますね」
俺の名推理は的中した。
「だろ? って、待った」
俺は咲と普通に会話していることに、違和感を覚えたので。
「猫の口調は?」
端的に、指摘した。
「にゃ、にゃー」
咲はびくりと肩を跳ねさせてから、鳴いた。
「そんなに驚いて、どうしたの?」
「厳しく躾けるようなことを言われて、ちょっと興奮しました……にゃ」
とってつけたような、猫の鳴き真似。
演じる余裕がなくなっていそうな、とろけた表情。
(こういうの、メス顔って言うのかもしれないな……)
シチュエーションも相まって、余計にそう感じる。
この店には、客は来ない。
店長はサボってどこかに行っている。
とはいえ。
「バイト中にこれ以上するのは、良くないと思う」
「……私も、はしゃぎすぎたかもしれません」
咲は俺に諭されて、我に返ったが。
「では、またの機会に?」
次の約束を取り付けてきた。
「うん、また今度ね」
俺は今日。
咲の本性がM気質のストーカーで。
三つ子全員で俺と付き合いたいのは、ストーキングの効率化が理由でもあることを知ってしまった。
だけど、その重い愛も悪い気がしない。
それはなぜか。
(そう思えるくらい、咲のことが好きなんだろうな……)
三つ子だと知らなかった間に、俺はすっかり籠絡されていた。
なんて、俺が物思いに耽っていると。
「では、これを着けてください」
咲は返事を聞く前に、俺の手首に腕輪を装着した。
「まだ、いいって言ってないんだけど?」
咲の首輪よりはまだ、アクセサリーっぽく見える。
一見すると普通のバングルのようだが。
「もちろんこのバングルも位置情報が分かります。それと、鍵付きです」
「え」
もしかして自力じゃ外せないのか、これ。
「鍵がほしかったら、週末にデートしてください。行きたい場所があるんです」
「もちろん、俺はそんな条件関係なく、咲とデートしたいけど」
だから外してほしいと、遠回しに伝えたつもりだったけど。
「実は、立派な写真家になるために行きたい場所がありまして」
咲はお構いなしに話を続けた。
「咲は賞を取るレベルの腕前なんだよね」
「はい! 将来はお仕事にしたいと思っています」
「そうなんだ」
俺にも、将来の夢や目標はある。
だから、咲にも何か目指しているものがあるのは共通点があるような気がして嬉しいし、応援したい。
「もしかして、撮影に付き合ってほしいとか?」
「はい。みきと先輩とデートしながらだと捗ると思うんです」
「ちなみに、咲って俺以外だとどんな写真を?」
「元々は風景の写真を撮っていました。これが受賞作です」
スマホでその写真を見せられた。
ただきれいな風景と言うだけでなく、自然の壮大さを感じさせるような、山と動物の写真だ。
「最近は、人物の写真を撮ることに精力的ですけどね」
咲がじーっと見てくる。
「なるほどね」
「ただ……」
咲が表情を曇らせた。
「ただ?」
「実は最近、写真家としてはスランプ気味なんです」
「もしかして俺ばかり撮っているからでは」
「違います!」
咲は声を大にして否定した。
「俺のことを隠し撮りばかりしていたら、普通の写真が撮れないと思ったんだけど」
「そこは関係ありません。むしろみきと先輩を撮るようになってから、復調気味なんです!」
「そうなんだ……?」
熱弁する咲を前に、俺はあまりよく分かっていないまま相づちを打つ。
「ということで、みきと先輩の協力が不可欠なんです」
「分かった。俺にできることがあるならなんでも言ってくれ」
「では、週末にデートしましょう。楽しみですね、みきと先輩」
「うん、俺も楽しみだ」
そうして俺は、咲のスランプ解消のために協力すると決意した。
咲の夢を手助けしつつ、デートするなんて一石二鳥だ。
なんて。
このときの俺はちょっと志の高い、真面目で純粋な気持ちでいたけど。
いざ、デート当日。
俺は咲とラブホテルにいた。
あれ……?
どうしてこうなった。
◇◇◇
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童貞卒業してから彼女が三つ子姉妹だと知ったけど、誰とヤったか分からない。 りんどー@書籍化準備中 @rindo2go
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