童貞卒業してから彼女が三つ子姉妹だと知ったけど、誰とヤったか分からない。

りんどー@書籍化準備中

第1話 みきとくんは自称クズ

 一月。

 冬休み最終日。

 駅前の人混みの中。


「みきとくーん、こっちこっち」


 待ち合わせ場所で手を振る女の子を、俺は発見した。


「お待たせ。電車が遅延しちゃって……」

「私も今来たところだから、気にしないでー」


 そう言って笑顔で首を横に振るのは、遠城寺おんじょうじサラ。

 銀色の長髪が特徴的な美少女だ。


 俺は芸能人にあまり詳しくないけど、サラの母親は女優らしい。

 父親は外国人なので、サラはハーフだ。


 俺とは違う高校に通う。学年は一つ下の一年生。

 偶然の出会いから関係を深めていき、今では付き合って二ヶ月の俺の彼女だ。


 今日のサラは大人っぽい白ギャル、みたいな服装だ。

 いや、ギャルと言うよりは。


「今日のサラ、モデル並にかわいいね」

「え? えー……みきとくん褒めすぎだよー」


 にこにこと嬉しそうにしているサラを見ると、もっと褒めたくなる。


「むしろモデルよりかわいいかもしれない。特に、もふもふのマフラーがかわいい」

「ふふ。ありがとう」


 制服は真面目に着こなしているし、運動しているときは簡素な動きやすい格好だから、サラの私服を初めて見た時は、意外だった。

 なんにせよ。

 俺みたいなクズが、こんなにかわいくて純真な美少女と付き合えるなんて。


(サラと出会う前の俺に言ったら、妄想だと確信するだろうな)


 俺、葉加瀬はかせ三喜人みきとは人より少しだけクズだと自認する、割と平凡な高校生だった。

 しかし、今は違う。

 今は幸せ者だ。




 待ち合わせ場所で合流した後。

 目的地に向かって、二人で街を歩く。


「そう言えば、新年初デートか」

「お正月はそれぞれ、家族と過ごしたからね。やっとみきとくんに会えて嬉しいよ」

「俺もサラと会えてうれしいよ。今日の映画も楽しみだ」

「しかも今日の映画、奮発してカップルシートにしてくれたんでしょ? 私も払った方がいいよね」


 サラが財布を取り出そうとするのを、俺は制した。


「大丈夫。バイト代が入ったから」


 正月なので、ついでにお年玉ももらっている。


「えー、でも」

「どうせ、ろくでもない稼ぎ方をしたお金だからね」

「ちゃんとバイトして稼いだお金でしょ?」

「俺の場合、勤務態度に問題があるから」

「みきとくんは謙遜しすぎー。効率的に働いてるだけでしょ?」

「謙遜というか、事実クズだから」

「クズぶってるみきとくんも好きだー」


 サラは笑って腕に抱きついてきた。

 かわいい。


 そうして人混みで溢れる大通りを歩いていると。


「パパー! ママー! どこー!?」


 一人で咲き叫ぶ男の子を、見つけてしまった。

 五歳前後と思われる、迷子の子供。

 通りがかる人々は、気づいていないか見て見ぬふり。

 あるいは他人任せだ。


(なんだかなあ……)


 俺も気づかなかったら楽だったのに。

 見て見ぬふりができるくらい、要領の良い人間になりきれたら良かったのに。

 誰かがなんとかするだろうと、楽観的になれたら良かったのに。


(今から相手をしていたら、上映開始には間に合わなそうだ……)


 かといって、このまま放っておいたら、純粋な気持ちで映画を楽しめない。

 善意ではなく、仕方なく。

 俺は自分にそう、言い聞かせながら。


「君、大丈夫?」


 迷子の男の子に声をかけた。



 ひとまず、男の子を連れて交番に向かった。

 そこで手続きをして、再度映画館に向かおうとしたが。

 迷子の男の子に懐かれ、泣きつかれてその場を離れることができなかった。

 なんだかんだで、発見から二時間近く経過した後。


「本当にありがとうございます!」

「お礼はサラ……この子に言ってください。俺だけだと多分、泣き止ませられなかったので」


 小さい子供の扱いに俺が困っている横で、サラが優しくなだめてくれた。

 サラがいなかったらもっと苦戦していたのは間違いない。 


「いえいえ。私は何も。率先して助けていたのはみきとくんだから」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」


 男の子は、両親と手を繋ぎながらお礼を言った。


「デートの邪魔をして悪かったね」


 男の子の父親に謝られた。


「邪魔だなんてとんでもない」

「ふふ、仲の良いカップルなのね」

「はい!」


 サラはうなずいた。


 


 さて、一件落着といきたいところだが。

 この時間だと、今から映画館に向かっても、目当ての映画は終盤にさしかかっている頃だ。


「あー、ごめん。デートが台無しだ」

「でも、迷子の男の子を颯爽と助けるみきとくん、かっこよかったよ! それに、ちょっとした非日常的イベントって感じで、これはこれで楽しかったし」


 サラはこういう時、文句の一つも言わない。

 優しすぎて眩しいな……。

 かえって申し訳なくなってくる。


「純粋な人助けの気持ちだったら、素直に喜べたんだけどね」

「違うんだ?」

「あのまま放置したら、映画を楽しめないだろうなって……要するに自分都合のクズだ」

「私は……大事なのは結果だと思うよ」


 サラはまっすぐ俺を見つめる。


「結果?」

「この場合だと、どんな動機であれ、あの子を無事に助けることができたならオッケーってこと」

「まあ、一理あるな……」

「私にとっては、みきとくんは優しくてかっこいい一つ年上の彼氏にしか見えてないけど、それじゃあ本人が納得しなさそうなので、それっぽいことを言ってみました」


 サラはにへら、と表情を崩した。


「うーん、俺の彼女がかわいすぎる」

「へへ」

「さて、そんな彼女とのデートの代案を考えないとな……」

「あ、それなら。二人でゆっくり映画を観られる別の場所に行ってみたいな」


 サラが指し示したのは、近くのビルに店舗を構えるネットカフェだった。



 ネットカフェに入店し、会員登録した後、鍵付きの個室を確保した。

 ドリンクバーでジュースをコップに注いで、個室に向かう。

 狭い廊下を、何気なく歩いていたその時。

 廊下に、四角い小袋が落ちているのを発見した。


(あれって……)


 コンドームの、外袋だよな。

 破れている……ってことは。

 中身を使用したのだろう。


「なるほど……」

「ん? どうしたの?」


 サラは気づいていない様子だが。

 確かに鍵付きの個室なら、をしてもバレないだろう。

 ゴミが廊下にポイ捨てされていると気づいたのに放置するのは、いかがなものかと思うけど。

 拾うのも躊躇われるから、店員に任せよう。


 何はともあれ。

 俺たちも付き合って二ヶ月だ。

 色々なところに出かけて、キスまではした。

 そろそろ次の段階に進みたい気持ちは、正直ある。




◇◇◇


次回は二人の初体験です。

まあ、この作品のヒロインはもう二人いるんですけどね。

三つ子は4話目くらいで登場予定です。


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