【BL】婚約破棄場面に遭遇した
椎葉たき
第1話 妖精候爵令息
咲き誇る花々は春の到来を祝い、色とりどりに人の目を楽しませる。春爛漫。
貴族学校に中庭の美しい光景に、生徒たちがチラチラと視線を向ける。『花々』が令嬢たちという比喩でなければ、『春』が一人の男子生徒を表す比喩でなければ、心和ませたのだが、ある意味、人の目と話題はかっ攫っていた。
シローネ候爵令息、レンドロ・シローネが令嬢たちに囲まれていた。
スラリと背が高く、令嬢たちから頭一つ抜き出ていて、紫がかった桃色の、鮮やかなオーキッドピンクの長い髪を煌めかせる。シミ一つない肌に、整った中性的な顔は、そこに居るだけで目立つ。
見目美しいレンドロは妖精候爵令息とも名高い色男との噂されるが、いい意味ばかりではなく、
実際、第四王女殿下が婚約者でありながら、こうして沢山の令嬢を侍らせて人目を憚らないのだ、そう噂が立つのも無理はない。
士官科の学生である、マーカス・エンベルには全く関係がないが。
エンベル伯爵家三男であるまいは、この貴族学校を卒業すれば、実家を出る身。内定が決まっている騎士団の宿舎に入れば身分は平民だ。実質、平民とは違うのだけれど。貴族の血筋で身内の後ろ盾があるので、本人の身分は平民でも、身内に何かあれば貴族の家族が出てくるくらい、生粋の平民とは違うのだけれど。
ただの平民なら士官を目指すのではなく、兵士養成学校からだ。ここは貴族学校だからか、士官科しかない。
将来、騎士団の士官になることを想定し、兵士養成学校で習うものから、兵法に地理に歴史に騎士団を運用するための知識、それから基礎学習と、学ぶものが多い。
なので、領地経営科、それも全く接点のない男の色恋沙汰など気にしている余裕はないし、どうでもいい。
伯爵家三男なんて、爵位を継ぐ令嬢の婿になるか、騎士になるか。そもそも、令嬢が爵位を継ぐのは全体的に少なく、そういった良物件はとっくに売れていて婚約者持ちだ。
とにかく、マーカスは自身で身を立てなければならない。他人の噂にわざわざ首を突っ込んでかかずらう余裕などない。
幸い、体格には恵まれ、頭の出来も悪くない、家柄が騎士の家系でもあり、早々に騎士団に入る内定を貰っていた。
焦げ茶色の髪に、がっしりした体格は、令嬢には威圧的で怖がられるが、顔立ちは悪くない。
だけれど、訓練と勉強に忙殺されている学生、恋愛だの婚約だのとは程遠い存在だった。
そんな学生時代も足早に過ぎ、卒業パーティーも同じく独り身の同級生と肩を叩き合って終わった。
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