俺にだけ無意識えちおねムーブしてくるハーフアップおっとり美人家庭教師(♂)との超ド健全授業:ウェーイ!マシロくん見てる~?
貴葵 音々子🌸カクヨムコン10短編賞
第1話
~めちゃくちゃ雑な導入~
このお話は健全な高校一年生男子の白井マシロくんがハーフアップおっとり美人家庭教師(♂)であるアオイお兄さんの無意識えちおねムーブに翻弄される超ド健全ラブコメライトBLである――!
前話はこちら。全て超ド健全です。
①『全問正解のご褒美はふたりだけの秘密』
https://kakuyomu.jp/works/822139840594329398
②『妹が隣の部屋にいるのに……』
https://kakuyomu.jp/works/822139841882765348
今回のタイトルも意味深なだけで、NTRはないです!!!
◆◇◆
正月の夜は冷える。だけど今は汗だくだ。
火照った身体で白い息を吐きながら、俺は駅に向かって全力ダッシュしている。
『ウェーイ! マシロくん見てる~? 突然電話してゴ・メ・ン♡ 俺アオイと同じ大学のマブなんだけど、こいつ新年会で酔い潰れちまって。送って行こうかって聞いたら「マシロくんを呼んで~!」ってかわいく駄々こねちゃってさ~』
時刻は二十時過ぎ。アオイさんからの珍しいビデオ通話に出てみれば、見るからにチャラ男風の知らないお兄さんからそんなことを言われて。
唖然として言葉を失っていると、酒でテンションが上がった女性の甲高い笑い声と共にカメラの映像が少し乱れた。
『ね~見て~、アオイくんちょ~かわいいんですけど~~!』
アオイさんのスマホが映したのは、眩しい金髪ショートが映える小麦色の耳たぶにギラギラなピアスをバチボコにつけたチャラ男お兄さんの膝の上で、ふにゃふにゃになった赤ら顔でこくりこくりと船を漕ぐアオイさん。
『早く迎えに来ないと、食われちまうかもなぁ』
ニッチャリ笑うチャラ男お兄さんに映像が切り替わり、俺は一瞬でパニックになって、家から飛び出した。
とりあえずお店の住所をメッセージアプリに送ってもらって、「すぐ行きます!」と返事して駆け出したはいいものの、「なんで俺が呼ばれたんだろう」という疑問が沸々とわいてくる。そしてなんで俺はこんなに必死になって走ってんだろう。
年末年始だから家庭教師の授業はお休みということで、アオイさんにはしばらく会ってない。新年の挨拶もお互いスタンプで済ませたくらいだ。その時のやり取りで初詣に誘ってみたけど、お正月期間は他のバイトがぎゅうぎゅうに詰まっているとかで、「ごめんなさい」と可愛らしく謝るウサギのスタンプが送られてきた。
授業を再開する来週の金曜日まで会えないもんだと思っていたから、まぁ、呼び出されたのは別にいい。
きっと同じマンションに住んでるから、迎えに来てもらうのに都合がいいと思われたのかな。でも駅前のお店で助かった~。繁華街とかだったら補導されちゃうところだったよ、俺。
いや、そんなことより。
早く迎えに行かないと、アオイさんがチャラ男お兄さんにお持ち帰りされてしまうかもしれない。
行き先が危ない場所だったら?
仮にマンションまで送り届けてくれても、そのまま相手がすんなり帰らなかったら?
そう思ったら、無心で全力ダッシュしてた。毎日走り込みしてる現役バレー部員でよかった。
イルミネーションでライトアップされた駅前について、メッセージアプリに送られたお店の看板を見つけた。店先には会計を終えた十人程度の若者がぎゃいぎゃい屯している。
駅前の小さな店だし、大所帯の予約はそんなに多くないだろう。きっとこの集団だ。
俺は走ってきた息を整えて、その中のひとりに意を決して声をかけた。ふわふわなファーコートを肩にかけたお姉さん。悪酔いした女の人を介抱していて、面倒見がよさそうだったから。
「す、すみません。連絡もらってアオイさんを迎えにきたんですけど……」
「あっ、もしかしてマシロくん?」
「はい。あの、アオイさんは……」
「今お店の中にいるから、ちょっと待ってね」
するとお姉さんは、店の入り口に向かって声を張った。
「ねー金田~、アオイくんの彼氏来たよ~!」
「か、彼氏!?」
「違うの?」
「違います! ただの友だち……いやご近所さん……? うーん、違うな……お、弟分、的な……?」
「私に聞かれても」
「すみません……」
そう言えば、俺とアオイさんの関係って何になるんだろう。
しどろもどろになってしまった俺を見て、お姉さんはおかしそうに笑った。
「アオイくんの言った通り、これは可愛いわ~」
「げぇ……アオイさん、俺のことなんか言ってたんですか」
「うん。可愛い可愛いって、ずーっと惚気られちゃった」
前世アンゴラウサギなアオイさんに可愛いって言われても。
でもアオイさん、たしかに隙あらば俺のこと可愛いって言ってるよな……。
少し複雑な気分になっていたら、背後からドンッと何かに突進された。
「えへへ、去年ぶりのマシロきゅんだ~~~」
酔っ払いハーフアップおっとり美人カテキョの襲来である。
相当酔っているらしく、額をダウンジャケットのフードにぐりぐり押し付けてくる。小動物のマーキングみたいだ。それになんだよ、マシロ『きゅん』って。酔っ払いすぎだろ。年上の成人男性なのに、無防備で危なっかしいったらない。こんな人に可愛いとかいわれたくないぞ。鏡見ろ、鏡を。
そこへビデオ通話で見たチャラ男お兄さんが、致死量のゴールドアクセサリーをギラギラジャラジャラさせながら近づいて来た。派手な柄シャツの胸元がすんごい開いてるけど、寒くないのかな。
「ウェーイ! アオイ、彼氏クン来てくれてよかったな~! 電話一本で駆けつけてくれるなんて超愛されてんじゃ~ん!」
「だから彼氏じゃな――「ちが~う! マシロきゅんはぼくのだいじな生徒! もうあっち行って! マシロきゅんにチャラ男のチャラが移る!」い……」
チャラ男お兄さんをシッシッと手で払い、アオイさんは俺の腕を引いて距離を取らせた。
「さすがにチャラは移らないっしょ~」「移るよ!」とどうでもいいやり取りをしている酔っ払いふたりを、俺は呆然と眺める。
生徒。生徒か、確かに。
アオイさんと俺の関係は家庭教師と生徒。わぁ、大正解だ。アオイさんから不格好な花丸をもらえるやつだ。
すごくしっくりくるのに、どうにも胸の奥がすっきりしないのは、どうしてだろう。
すると何かを察したらしいファーコートのお姉さんから、小声で「ドンマイ」とウィンクされた。すごく、すごく何かを誤解されている気がする。
とりあえず当たり障りのない苦笑いで返すと、右腕をぐっと引き寄せられた。
振り返った先にいたのは、少し面白くなさそうに唇を尖らせたアオイさん。
「鼻の下伸ばしてないで帰るよ、マシロくん」
「伸ばしてませんし、それ俺のセリフ……」
一方的に呼び出されてアオイさんを迎えに来たのに、立場が逆じゃない?
でもアオイさんは有無を言わさず腕を引いて、店からずんずんと離れていく。
「ウェーイ! 仲良くやれよ、おふたりさん!」とチャラ男お兄さんに手を振って見送られたが、アオイさんは変わらず頬を膨らませたままだった。
ど、どういう状況なの、これ……?
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