「顔も見たくない」と婚約破棄されたので、引きこもってVtuberを始めた悪役令嬢だけど、今日も王子から高額スパチャが飛んでくる
宮永レン@1/16捨てられ令嬢コミック2
第1話 死亡フラグなんてへし折ってやりますわ
「セレノア・ディアルカ! 貴様との婚約を、今この場で破棄する!」
シャンデリアの光が眩しい王宮の大広間。楽団の演奏が止まり、貴族たちのヒソヒソ話が波のように広がる中、イヴェイン王太子殿下は、それはもう気持ちいいくらい高らかにそう叫んだ。
その瞬間。
――あ、これゲームでやったところだ!
ただし、イヴェインの隣で不安そうにこちらを見ているのがヒロインのエマで、自分の立場は『悪役令嬢』のセレノア。
――(展開が)読める……読めるぞ!
セレノアは、この後ブチ切れてエマに魔法で攻撃しようとして阻止され、その罪で処刑されるのだ。
――やっててよかった、乙女ゲーム!
なぜだかわからないけど、突如として頭の中に流れ込んでくる膨大な記憶が、今までの人生を塗り替えていく、いや日本人として生きていた前世と融合していくといった方が正しいだろうか。
(きゃあぁぁ! 嘘でしょ!? 私、ついさっきまでコンビニで新作スイーツ選んでたよね!? あれ、違うな、コンビニから出たところで……駐車場に突っ込んできた車に巻き込まれて……それ以降の記憶がないっ。人生詰んだ、そして今世も完全に詰んでる!)
中身が現代日本人に入れ替わったセレノアは、内心で絶叫していた。
だが、長年の令嬢教育の賜物か、表情筋は一切動かない。氷のような冷たい美貌を保ったまま、彼女はフンと鼻で笑うだけだった。
「弁解の余地もないようだな。もう貴様の顔も見たくない。公爵家の権威を笠に着て、エマをいじめ抜いたその醜態には、心底うんざりしている」
混乱して言葉を失ったセレノアを、罪を認めたと決めつけたイヴェイン王子は、容赦なく吐き捨てた。
周囲からは「自業自得」「当然の報いだ」という冷ややかな視線が突き刺さる。
(うぐっ、プレイしていた時は爽快シーンだったのに、言われる立場になるとメンタルにくるわね。イヴェインったら言葉のナイフが鋭利すぎて出血多量で死にそうよ…… 冤罪も混じってるけど、過去の私の所業を考えると否定しきれないのがつらいわ)
セレノアは、震えそうになる膝を必死に抑え、扇をパチンと閉じた。
「ふっ……望むところですわ、イヴェイン殿下。このような不潔でくだらない場所には、元より興味などありませんでしたから」
記憶は取り戻したけれど、もとの意地の悪い性格は急には変えられないようだ。
(何を言っちゃってるの私は~! 脊髄反射で悪役ムーブしちゃった! ここで「すみませんでしたー!」ってスライディング土下座したらワンチャン許してもらえたんじゃない? 無理か、この顔面じゃ誠意が伝わらないわよねぇ……)
パーツは整っているけれど、つり目で自信たっぷりに唇を歪め、白雪姫に出てくる正直すぎる鏡のセリフを聞いたら叩き割ってしまいそうな苛烈さが溢れてる。
「貴様の傲慢さはもはや看過できない。今後エマには指一本触れさせないぞ」
王子の最後通牒に、セレノアは優雅に、だが最速のスピードでカーテシーを取った。
「かしこまりました。では失礼いたしますわ」
踵を返すと、さっさと歩き出す。大広間を出るまでの数メートルが、永遠のように感じられた。
背中越しにエマを慰めるイヴェインの心配そうな声が聞こえてきたが、今のセレノアにはそれどころではない。
(逃げて! 逃げるのよ、私! これで断罪が回避できたかどうかまだわからない。とりあえず領地に引きこもって、死亡フラグをへし折る方法を考えなきゃ! ああ、もうストレスで胃に穴が開きそう!)
馬車に飛び乗った瞬間、セレノアはドレスがしわになるのもかまわず座席に倒れ込んだ。
「はぁぁぁあああああ……転生後断罪エンドRTAするかと思った……」
ちなみに『RTA』とは『リアルタイムアタック』の略で、ゲームをスタートしてからクリアするまでにかかる時間のこと。今回の場合はクリアじゃなくてバッドエンドだけどね。
領地への道中、セレノアは必死にゲームの知識を思い出した。
ディアルカ公爵家はこの後、王子の差し金で徐々に追い詰められ、最後には没落、家族は路頭に迷って野垂れ死ぬ設定だったはずだ。
(親が野垂れ死ぬとか冗談じゃない! こっちは前世で社畜として泥水を啜りながら生きてきたのよ! この世界で同じ苦労を親にかけるわけにはいかないわ)
ガタゴトと揺れる馬車の中で、セレノアはきらりと目を光らせた。
(こうなったら、誰にも正体がバレない方法で稼ぎましょう! 公爵家の力も使わず、自分の腕一本で生きていくための……そう、あれがある!)
記憶の隅にある、趣味で集めていた魔導具の山。
セレノアは、没落令嬢による逆転無双劇のシナリオを、脳内で爆速で組み立て始めた。
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