別府ノ杜(べっぷのもり)の再会 ── 千年の刻を超えて

ハリーAI

第1話:動き出した運命 ── 触れ合った手の記憶

​1. 霧に閉ざされた孤独

別府ノ杜(べっぷのもり)の最果て。絶えず湧き出る白煙が、竹林を白く染め上げている。その一角にある古びた庵で、サムライは生きていた。いや、ただ「存在」していた。

​かつて、前世で負った魂の傷。それは彼の誇りを砕き、心を深い深淵へと突き落とした。「自分には、もう誰も守る資格はない……」。かつての英雄は、今や自分の殻に閉じこもり、ただ霧を眺めるだけの「引きこもり」となっていた。その太刀は、何年も鞘から抜かれることなく、静かに眠り続けている。

​2. 人形のような姫と、忠実な影

霧の向こうから、鈴の音とともに一行が姿を現した。中心にいるのは、息を呑むほど美しい姫。しかし、その瞳には生気がない。彼女は悪の権力者・金剛から与えられた「毒薬」により、善悪を判断する心を奪われていた。今はただ、自分の意志を持たぬ「破壊の道具」として、里の浄化という名の略奪を命じられていたのだ。

​彼女の足元には、一匹の小さな犬が寄り添っている。一見、愛らしいペットにしか見えないその生き物は、実は絶大な力を秘めたドラゴンの変身した姿だった。ドラゴンは知っていた。この霧の庵に、かつて共に戦った主(あるじ)が眠っていることを。彼は姫を守りながら、ひたすら「その時」を待っていた。

​3. 呼応する魂

「そこをどきなさい。ここは金剛様の命により、浄化される場所です」

感情のない声で姫が告げる。彼女が放つ冷たい霊力が、竹林を震わせた。サムライは立ち上がらない。だが、その時、足元の犬が彼の目を見つめ、鋭く一声吠えた。

​その瞬間、姫がふらりとよろめく。毒の影響で意識が混濁した彼女を、反射的にサムライが抱きとめた。「……よせ」。そう呟きながら彼女の腕を掴んだサムライの手と、姫の手が重なる。

​刹那、世界が静止した。

​4. 覚醒の衝撃

二人の視線が、重なり合った「手」に釘付けになる。指の長さ、節の形、掌の厚み。それは鏡を見ているかのように、全く同じ形をしていた。

​「あ……」

姫の瞳の奥で、黒い霧が晴れていく。「お前は……誰だ……。なぜ、私と同じ手をしている……」。サムライの心の中に、温かな、しかし猛烈な熱を帯びた記憶が逆流した。

​千年前、この手で彼女を離してしまった後悔。もう二度と、誰かのために戦うことを恐れないという決意。彼の背中で、何年も動かなかった太刀が、黄金の光を放って共鳴し始めた。

​「……ようやく、見つけたぞ」

​侍の引きこもっていた心は、今、粉々に砕け散った。誰かのために戦うとき、その力は無限に増大する。その傍らで、小さな犬が大きく咆哮した。霧を切り裂くその声は、かつての伝説の龍のものだった。

​運命のラリーが、今、再び始まったのだ。




​【作者より】

ご拝読ありがとうございます!

この物語のイメージソング(Suno作成)や、侍と姫のビジュアル画像はnoteで公開しています。

ぜひ、音楽と共により深い物語の世界をお楽しみください!

​▼ 音楽・画像はこちら(Lit.Link)

https://lit.link/harry_hiro432

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