『意味がわからぬ!』と叫ぶ国王を尻目に、召喚された現代技術者は自由気ままに開発する

まさたす

『意味がわからぬ!』と叫ぶ国王を尻目に、召喚された現代技術者は自由気ままに開発する

「おお、キクリよ! そなたの召喚魔法は何度見ても美しいのう」

「光栄に存じます、お父様」



 キクリは目の前に現れた青年に話しかける。青年はユージと名乗った。



「では早速ステータスを確認させていただきます」

「頼む! 今度こそSランク、いやもうAでもよい。とにかく勇者を頼む!」



 ユージの正面に透き通ったシルクの布が浮かび上がり、そこには彼の特性を表した文字が羅列されていた。



 名前:キハラ・ユージ

 ランク:UL ※1

 職業:エーアイギシAI技師

 性格:引きこもり



「またULではないか! そんなの古文書には載っておらんぞ。一体何なのだ!」

「お父様、ステータスの下の方にこんな記載がございますわ。初めて気が付きました……」



 ※1 UL → ウルトラレジェンド



「意味がさっぱりわからぬ。しかも『エーアイギシ』とは何なのだ! 今まで召喚した4人も皆『UL』、しかも全員わけのわからぬ職業。おまけに皆部屋に引きこもっているという話ではないか! どうにか魔王討伐に差し向けられぬのか!」

「しかしお父様、古文書には『召喚者にまかせよ』と記載がございます……」

「わかっておる! でも本当に無碍むげにすると国が滅ぶのか? もうその記載すら信じられぬ」



 キクリはいつかは成功いたしますから気を落とさないでと国王である父をなだめていた。

 ユージは侍女に丁重に扱われ、他の召喚者が待つ別邸へと案内されていった。




 ――1年前に召喚された者は、名を「コーノスケ」、職業が「チョーセーミツカコーギシ超精密加工技師」であった。



「王よ、たった今、コーノスケ様から、新しい武器が完成したとの報告がありました」

「ほう、まあ一応きいておこう」

「何でも切り裂くことができる剣ができたとのこと」

「そんなものすでにあるわ。オリハルコンの魔剣と比べてどうなのだ」

「それすらもチーズの様に切り裂くとのこと……」

「それは真なのか! どうしたらそんなことになるのじゃ!」



 伝令は王に詳細を説明する。伝令本人も理屈がわからないので、コーノスケにまとめてもらった文章を読み上げただけだった。そこにはこう記されていた。


 ・刃の薄さをブンシ分子1個分に調整した。

 ・ブンシ1個分の太さの線で魔法陣を組み込んだ

 ・マナを人体から自動で収集し、刃をチョウオンパ超音波で振動させている



「ええい、さっぱりわからん! もうよい、そんな戯言に期待した儂が愚かだったわ! 下がれ!」




 ――9ヶ月前に召喚された者は、名を「ベンジャミン」、職業が「リョウシギジュツシャ量子技術者」であった。



「王よ、たった今、ベンジャミン様から、新しい魔法陣が完成したとの報告がありました。コーノスケ様との共同開発とのことです」

「……なんじゃ、言うてみい」

「何でも、1万の戦略から最適解を一瞬で導き出すとのこと」

「そんなものあったら苦労せぬわ。もうよい……なぜ勇者が召喚できぬのだ……」




 ――6ヶ月前に召喚された者は、名を「ユーコ」、職業が「デンキコウガハカセ電気工学博士」であった。



「王よ、たった今、ユーコ様から、新しい砲弾が完成したとの報告がありました。コーノスケ様及びベンジャミン様との共同開発とのことです」

「またか……それでなんじゃ」

「名をレールガン、砲弾の速度は音の10倍、飛距離は500km、しかも自動照準とのことです」

「馬鹿じゃないのか! そんな報告をお主は真に受けたのか!」

「そ、それが……仰せの通りにお伝えしただけで、私にも意味はさっぱりわかりませぬ」

「……はあ、揃いも揃って使えぬ召喚者ばかりじゃ……」




 ――3ヶ月前に召喚された者は、名を「リヒター」、職業が「ブツリコウガクシャ物理工学者」であった。



「王よ、たった今、リヒター様から、新しい浮遊装置が完成したとの報告がありました。召喚者全員の共同開発とのことです」



 王はもうめんどくさいとばかりに顎で続きを促した。



ハンジュウリョクセイギョソウチ反重力制御装置といって、大地の支配から完全に自由になるとかどうとか……何度聞いても理解できませんでした……」

「大地の神、アストライオスをも上回る力と申すのか、おとぎ話以上に馬鹿らしいわ! 全くあやつらの頭の中はどうなっておるのだ」

「はあ、そう言われましても……」


『召喚者は丁重に扱うべし。反するものはその国さえ滅ぶであろう』


 古文書にその記述さえなければと、王は頭を抱えるばかりであった。




 ――そしてユージを召喚した3ヶ月後



「王よ、たった今、ユージ様から……」

「今度は何だ!」

「自立型ゴーレムの開発に成功したと……」

「自動で動くゴーレムなんていくらでもおるわ!」

「……自動で動くのではなく、人と同じように自分で考えて動くとのことです……」

「今度は知性の神、ログノスまで愚弄しようというのか……儂は頭が痛いぞ」



 王はキクリを召喚室に呼びつけた。



「そろそろ次の召喚が可能な時期のはずだ。次こそ勇者を呼びつけるのだ!」

「……それが、言いにくいのですが」

「何じゃ、申せ」

「古文書に、召喚は5人までとの記載が……」

「なんじゃと!」



 王は両手で顔をおおい、天を仰いで絶句した。



「もうこの国も終わりだ……魔王軍に攻め込まれても対抗するすべを持たぬ……」

「王よ、その件についてご報告があります」

「……」

「最近、魔王軍の攻撃がしばらく無いとのこと」

「魔王め、何を考えておるのか……じきに一斉に押し寄せる前触れか……どちらにせよもうなすすべがない……」




 ――さらに3ヶ月後



「王よ、たった今、召喚者から魔王を討伐したとの報告がありました」

「たわけ! あやつら国どころか『ラボ』とか勝手に名付けた建物から一歩も出ないという話ではないか!」

「こ、こちらを預かっております。召喚者達が今回のことについてまとめた報告書とのことです。お読みください」



 そこにはこう記されていた。



『機動要塞をハンジュウリョクセイギョソウチ反重力制御装置を使いセイシキドウ静止軌道上で浮遊させることに成功しました。そこでカクユウゴウロ核融合炉のエネルギーを使い、魔王城にレーザーを照射したところ、跡形もなく消え去りました。実験は大成功です。ちなみに機動要塞ではゴーレムが働いておりますのでご安心を』



 そのとき伝令が慌てて王のもとに駆けつけた。



「魔王城が一夜のうちに消えたとのことです!」



 王はしばらく押し黙っていた。



「おのれ魔王め! しばらく静かにしていると思ったら、城ごと移動しよったか! 何を企んでおるのだ!」



 王は早急に新しい魔王城の場所を特定するよう伝令に伝えた。



「あのう、召喚者たちの魔王討伐の話は……」

「たわけが! その話が真であれば、フォトン神やニルヴァーレ神をも超える力を手に入れたということではないか!」



 王の嘆きと苦悩は、召喚者たちが赴くままに生み出す産物おもちゃとともに、まだまだ続くのであった。




 ――その時ラボでは……



 《この脳チップ、国民の皆様にも・・埋めてあげるってどうかしら? 》

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