君が死んでくれと僕に言うから僕は死んだのさ。

花より団子よりもお茶が好き。

君が僕を必要としなくなったから

 君が死んでくれと僕に言うから僕は死んだのさ。

 君が死んでくれとあの日言うから僕は死んだのさ。


 君が死んでくれと僕に言うから僕の見る景色は消えていった。

 君が死んでくれと僕に言うから僕の世界は白くなっていった。


 僕が見たもの見てきたもの関わった全ての記憶と感情、その全てが消えていく。

 君が死んでくれと僕に言うから僕はなかった事になるのさ。

 君が死んでくれと僕に言うから僕の全ては跡形もなく消えて、誰の記憶にも僕の記憶にも君の記憶からも死んでいく。

 君がそう望むから、死んでくれと望むから。

 

 僕はなかった事になっていく。

 君が望むから僕は望み通りに死んでいく。


「別にそれが嫌な訳じゃないんだ。僕は初めから最後まで君の為に存在したのだから、君が泣きながら僕を必要として、君が泣きながら僕に死んでくれと頼むのなら、それは僕にとって喜ばしい事だから」


 君が死んでくれと僕に言うから僕は君の事を忘れたのさ。

 君が死んでくれと僕に言うから僕はもういないのさ。


『お願いだからお願いだからお願いだからもう私から死んで! お願いだから死んでよ!』


 鏡の前で頭を抑えて泣き崩れ、嗚咽しながら君は何度も何度も何度も僕にそう言うから。


 もう僕の存在は君には必要なくなったのだから。

 僕はもう死ぬのさ、死んだのさ。


 君が死んでくれと僕に言うから僕はもう直ぐ、僕を忘れる。文字通り本当に死ぬのさ。


 けれどもしまた君が傷付いて挫けそうになった時は、きっと僕はまた現れる。

 僕は君の為に生き返る。

 僕は君の為に存在する。

 あぁ僕の最愛の人、大丈夫僕は〝君〟を愛しているよ。


 君は僕だけで僕は君だけだから。

 苦しくなったらまたおいで、悲しくなったらまた呼んで、ツラくなったらここに来るといい。

 心の深い深い深いところで僕はずっと死んでいるから。

 君が助けを求めるその日まで。


 あぁもうすっかり何も見えない、意識も―――。


 ◇◇◇


 ゆっくりと瞳を開けた。

 すると真っ先に真っ白な天井が眼にはいる。

 いつの間にか私の身体はベッドに沈んでいた。

 ぼーと眺めていると何かが頬を伝う。

 触ると指先が濡れた。


 涙だ。


「……終わったんだ」


 起き上がり、手足を動かす。

 手を開いて閉じて、動くのを実感する。

 ふと、壁にある姿見を……確かにそこには私が映っている。

 久々に見た気がした。いや実際久々だ。


「ただいま」


 久々に表に出た。


 私はいつもの生活へと溶け込んでいった。

 最初は人が変わったようだと言われたが、昔から私を知る者は元に戻ったのかとも言った。

 けれどそれも時が立つにつれ、誰も言わなくなった――。

 

 今の私が私になったから。

 これが本来あるべき姿だから。


 そしていつしか私は私の中にいる存在さえも忘れていった。



『君が僕を必要としなくなったから僕は本当に、死んだのさ』


― 完結 ―

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君が死んでくれと僕に言うから僕は死んだのさ。 花より団子よりもお茶が好き。 @otyagskn

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