祝い鳥~白いハト

京極道真  

第1話 白いハト

1月1日深夜。

俺様は0時過ぎ近くの神社にいた。

細い長い階段。

カラダが前の人間にくっつくくらい、

長い行列の中、俺様は友人じゃなく

家族と並んでいた。

中3の俺様は子供から大人への多感な時期だがこの1月1日の深夜だけは、

いつもの学校での顔と違う顔で

寒いなか行列に並んでいる。

俺様の前に俺様より背が低くなった口うるさい両親が並ぶ。

背が低くくなったが存在感は未だに大きい。

俺様の横には俺様より背が高い6つ上の

大学3年の兄貴が並ぶ。

この新年の参拝は小さい頃から

変わらない。

本殿までこの細い長い階段。

本殿の屋根の金色の鳩の飾り。

ハの字に書かれた神社の名前。

それに両サイドの出店のソース匂いの

たこ焼き屋。

甘い綿菓子の砂糖の焦げたにおい。

小さい頃はビニールの袋の中に雲があると

本気で思ってたな。

食べたら甘くて。

「曇って甘い。」そう言って兄貴と両親が

大笑いした。

たぶん、2才か3才くらいか。

あの時の大きくて暖かい笑い声は

いまでも耳の中に残っている。

あれから・・・

そうだな。変わったものとしたら手に

綿菓子の袋じゃなくて、ケイタを握ってることかな。

ゆっくりと列が進む。

俺様たちの順番だ。

白い布をかぶった大きな賽銭箱が横に長く

奥に広くドーンっと目の前にある。

今年の願いを願う。

「今年も良い年でありますように。

今年は午年だ。」

参拝あとに俺様たちは境内の道を少しずれて

家族4人、梅の木の下で止まる。

母さんが「じゃあ、参拝もおえたし、

何か食べて行く?」

兄貴が「俺、たこ焼き。」と言ったのと同時に兄貴の携帯が鳴る。

メールらしい。

「悪い。ケイタ達とこれから新年パーティーに誘われた。」

父さんの顔は変らない。

母さんが少し間を開けて

「そう。それはいいわね。

こんな田舎の新年パーティー。

どうせケイタ君の家で騒ぐだけでしょう。

ケイタ君のお店の商品、ちゃんとお金払うのよ。

ケイタ君のお母さん、気前がいいからね。

でも迷惑はかけないように。わかった?」

「分かってるよ、母さん。

ハヤトのように中学生じゃないんだからさ。

それにバイトもしてるし、金は持ってる。

大人だ。」

「そう。じゃあ、気をつけて行ってきなさい。それに大人って、カイトはまだ学生。

大学生でしょう。」

「はい。はい。わかりました。」

「カイト。ケイタ君のご両親にもちゃんと挨拶するのよー。わかったあ!」

「はーい。」

行きかけの兄貴に

母さんのいつもの大きな声が兄貴の背中を押す。

兄貴が振り返り「おーい、ハヤト祝い鳥みつけたら、俺の分も願っといてくれ。」

そういって兄貴は携帯を手に参拝者にまぎれて見えなくなった。

母さんは「もう。」と呟いた。

横の父さんの顔は変らない。

母さんが俺様に

「じゃあ、食べに行く?

ハヤト何が食べたい?」

「そうだな。はじめはたこ焼きか。

そのあとは甘い砂糖の匂いが・・・

そのあと、綿菓子食べたいな。」

めずらしく父さんが「そうか。」少し笑った。

俺様は何かの視線が気になり上を見た。

頭上のご神木に、白いハトが止まっていた。

「祝い鳥だ。」

この神社は白鳩神社。

その昔、この神社は、なかった。

村に天候不良いがつづき、困っていた時に

ある村人が大きな楠に白いきれいな白いハトが止まっているのを見た。

あまりの白さにこれは神様のハトに違いないと、思わず

「この村が幸せになりますように。」と願った。

すると翌日に恵の雨が降り。豊作。

コメも果物も川の水も豊で良き土地。

村となり。村人はみんな、幸せになりました。これがこの神社の創設にまつわる話だ。

だから今でもこの神社にお参りする人達は

お参り後に白いハトを見かけると

ご神体の神様の白いハトだと

みんなが信じている。

ただ、なかなか見ることはできない。

ただ。小さい時に兄貴と1度だけ

見たことがある。

めったに怒らない父さんが怒った時だった。

2人でいたずらをして、俺様たちはこの神社に逃げ込んだ。

夕暮れになり帰ろうとした時に

鳥の鳴き声が聞こえた。

大きなご神木の楠の上に白いハト。

ハトは俺様たちの目の前に降りてきて。

しゃべった。

「いたずらはいけない。父さんはお前達を心配している。帰ったら謝るんだ。

素直に謝ったら、

今日の夕食はお前達のハンバーグだ。」

「えっ?」

「えっーーー!」

俺様は兄貴と顔を見あわせた。

次の瞬間、白いハトは、もういない。

その日、一番に父さんに「ごめんなさい。」と

2人で謝った。

台所からハンバーグのいい匂い。

「ハンバーグだ。」

兄貴とハンバーグの匂いに惹かれて

白いハトがしゃべったことなど俺様は

すっかり忘れてしまっていた。

あれから何年過ぎたのか。

新年、深夜祝いの参拝。

これもいつも通りだ。

俺様はまた誰かの視線を感じた。

視線の先にはあの白い祝いハト。

祝い鳥がご神木の上から温かい目で

俺様を見ていた。

「祝い鳥。今年は兄貴の就職試験の年だ。

兄貴に祝福を頼む。」

白い祝い鳥のハトが俺様の願いを「聞いたぞ」と言って飛びたったように見えた。

「祝い鳥、頼むぞ。」

母さんが「ハヤト行くわよ。」

父さんも「行くぞハヤト。」

と2人が俺様の名前を呼ぶ。

              ・・・・・完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

祝い鳥~白いハト 京極道真   @mmmmm11111

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ