婚約破棄された令息を婿に迎えますが、その人は私の最推しです!
かずき りり
第1話
「はぁ!? 王命で婚姻!?」
ロシュフォール国にあるマリアック辺境伯領、その領主邸。
家族全員が集められたサロンにて、まさかの言葉を聞いた私は絶叫をあげた。
「婚約者を作っていなかったのが、仇になったのかっ」
悔しそうに王命の紙を御自慢の筋肉で握りつぶしたのは、お父様。ブルーノ・マリアック辺境伯だ。
辺境伯らしく、身長が高く筋肉ムキムキで、服がすぐ破れるからか上半身裸が常だ。
燃えるような赤い髪はベリーショートで、大きな紫の瞳に小さな鼻で童顔。何故か顔のパーツだけ可愛いのだが、輪郭はごついというアンバランスさ。
サングラスでもかけていれば威厳もあるが、外すとギャップでもれなく笑い死ぬ……が、その筋力は凄まじい。
今も可愛い顔をしているくせに、眉間に皺を寄せて胸筋をピクピクと動かしている。あ、全身に力を入れているのか、ズボンまで破けそうだ。
「冗談じゃない! 断って!」
「そうだ! 得体の知れない奴にソフィアをやれるか!」
私の言葉に便乗したのは、今年19歳となるお兄様、ルイ・マリアック。
鎖骨まで伸ばした紫の髪に、切れ長の瞳も紫だ。通った鼻筋で迫力ある美形なのだが、やはりそこは辺境伯嫡男。見事な高身長に筋肉質な身体だ。
文武両道で、16歳から18歳の間に通う王都の学院をトップの成績で卒業しているのも相まって、厳しそうに見える。
まぁシスコンすぎて婚約者を作っていないというのも、厳しいという噂に拍車をかけている気もするけれど。
「姉様に結婚は厳しいですよ」
「そうだそうだ! 私は結婚なんてしない!」
失礼な事を言われた気もするが、もはやそんな事どうでも良い。断れる理由があるなら、それに便乗するだけだ。
少し呆れて溜息をついたのは、失礼な事を言った本人こと弟のエディ・マリアック。今年12歳の生意気盛りだ。
サイドを伸ばした青髪のショートヘアに大きな紫の瞳。お母様に似た美人顔で、華奢な身体。
武力に関しては私以下なので、お兄様の補佐が出来るようにと勉強を頑張っている頭脳派だ。
「一応確認でもう一度言うけれど……王命なのよ……?」
溜息を吐きながらお母様は呆れたように皆へと視線を向けて言った。
ヘレン・マリアック辺境伯夫人であるお母様は、何と隣のザリエル帝国前皇帝の娘だ。
青のストレートロングに大きな紫の瞳。とてつもなく美人で、何故かロシュフォール国へ留学した時に、お父様に一目ぼれして猛アタックしたそうだ。
おかげで見事な美女と野獣夫婦である。
「王命でもお断り! 家捨てて逃げるから!」
私はそんな捨て台詞を吐いて、止める家族を無視して自室へと戻った。
「あ~もう! 絶対! 絶対絶対! 嫌だ!!」
収まらない怒りのまま、私はベッドへと突っ伏した。
冗談じゃない! 私に貴族令嬢は無理だし、結婚だってしたくない! そもそも目標があるというのに!
『貴族令嬢も大変ね。家出するの?』
「もはや家出が一番良い選択肢に思える」
真っ赤な羽根をバサリと羽ばたかせ、私の枕元にやって来た、尾の長い鳥が話す。
『本当に面白い』
「クレハ、私の観察そんな楽しい?」
器用に笑う鳥は、私の魂が面白いと言って、ずっと私に付いて来ているのだ。
だから私は紅羽という漢字から、クレハという名前をつけた。
そう、漢字。
私は日本という国で過ごした前世の記憶があるのだ。
『いっそ王城を消し炭にしてやろうか? ソフィアの目的はノエルという者だけだろう?』
「そうよ! だから駄目! ノエル様まで消し炭になるじゃない!」
ガバッとベッドから顔をあげると、私は自室から繋がっている小さな倉庫のような一室へと向かった。
「あぁ……ノエル様……貴方の幸せの為に頑張ります!」
『……』
この部屋には、黄緑の髪とオレンジの瞳を持つ男の人の絵や人形がビッシリと飾られている。
私が作ったり手配した、ノエル様グッズだ。
――ここは、前世でプレイしていたゲームの世界。
記憶が戻り、それに気が付いたのは、魔物の森でスタンピートが発生しかけた時だ。
幼い私は見事その周辺で遊んでいたわけなのだが……面白い魂を持つ娘だと言って助けてくれたクレハがいなければ、私は間違いなく死んでいただろう。
奇しくも、ゲームで私の最推しであるノエル様と同じように!!
『悪役令息とか言う人なのに、そこまで好きになるものなの?』
「冤罪だからね! 攻略対象じゃないけど、もうドストライクなの!」
唯一前世の事を話せる相手として、クレハには昔から色々と知っている。というか教えこんだというか、覚えてしまっているとも言う。
「よし! 魔物の森へ狩りに行くかー!」
とりあえずストレス発散に魔物をボコりに行こうと、私は付けていた髪を外した。
ソフィア・マリアック。それが今の名前だ。
だが日本の記憶がある私には、貴族令嬢というのは難しいというか馴染まない。
令嬢ならば綺麗な長い髪が当たり前なのに、私は赤い髪を肩まで切り落とし、つけ毛を作るという手段に出たのだ。まさに令嬢あるまじき行為。
15歳なのに、少し幼く見え、紫の瞳は大きく、鼻は小さい。
見事父親に似た可愛い系なのだが、手足はスラっと伸びつつも低身長なので小柄な小動物系とも言えるだろう。
……外見だけは。
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