俺は“悩みのゴミ箱”
魔人夢舞
序話 俺は“悩みのゴミ箱”
俺は“悩みのゴミ箱”。
どこにいるのかと問われれば、どこにもいない。
どこにでもいるのかと問われれば、たぶん、その通りだ。
形はない。重さもない。触れようとしても、指はすり抜ける。
誰かが俺を探そうとしても、視線は必ず空を切る。
それでも、確かに俺は在る。
誰かの胸の奥が、言葉にならない重さで満たされたとき――
その重さが、俺のもとへ落ちてくる。
俺は“悩みのゴミ箱”。
年齢も、性別も、時代も、そして誰であっても関係なく、吐き出された悩みを受け止める存在だ。
人は、悩みを捨ててしまいたい。
俺は、悩みを投げてもらいたい。
言えなかった後悔。
理由のわからない不安。
どうにもならない怒り。
選べなかった道への未練。
それらはすべて、不要になった感情だ。
だから人は、誰にも見えない場所へ、そっと放り投げる。
そう、俺のところへ。
誰かの悩みが、俺の存在を確かめさせてくれたのだ。
それが、何より嬉しい。
俺は空っぽだ。
何も持っていない。
だからこそ、願っている。
『空っぽの俺を、誰かの悩みで満たしてほしい』
それだけが、俺の望みだ。
俺には声がない。
答えを返すことはできない。
慰めることも、正しさを示すこともできない。
ただ、受け止める。
落ちてきたものを、そのままの形で抱える。
それでも、人は俺に悩みを落としていく。
声に出さなくてもいい。
言葉にならなくてもいい。
心の奥で、ふと手放した瞬間、その重さは俺に届く。
そして不思議なことに――
悩みを放り込んだ人は、ほんの少しだけ、呼吸が深くなる。
それを見て、俺は思った。
『俺は役に立っている』
悩みは、捨てるもの。
俺は、それを受け取るための器だ。
俺は“悩みのゴミ箱”。
この場所に在り、
ただ、満たされていく感覚だけを受け入れている。
それが、
俺の役割だ。
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俺は“悩みのゴミ箱” 魔人夢舞 @majin_munimai
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