担当アイドルが僕のことを彼氏だと認識しているのはどうして?
そこから、雪さんに問い詰めて分かったのは一つだ。
なぜか雪さんは僕のことを彼氏という認識であること。
僕と雪さんは仕事上で関わることはもちろん多い。
仕事現場に付いていくことも多いし、悩みを聞くこともある。
でも、それはあくまでマネジャーとしてタレントの健康状態をしっかりと健全な状態にしないといけないから。
担当アイドルとの距離感はそれなりに良いものを保っていると自分では思っていた。プライベートには入らず、仕事上では信頼できる関係を築けていると。
どうやらそう思っていたのは僕だけだったようだ。
「…僕と雪さんが彼氏ですか?」
「もちろん、私とマネージャーは付き合っているんだよ」
「付き合っているんですか?」
「なに言ってるの。そうに決まってるじゃん」
まるで当たり前かのようにそう言うのだ。僕は雪さんに告白をした覚えはないし、僕も雪さんから告白された覚えはない。
それなのに雪さんはとても自信満々に「私たちは付き合っている!」と宣言するのだ。そこまで言われると自分の記憶がおかしいのかと思い始める。
「…いつから付き合い始めたんですか?」
「いつからとかはないよ。いつの間にか、私とマネージャーは付き合ったの。言葉なんてなくても、私とマネージャーだったら分かり合えているからね」
雪さんってこんな子だっけ。たまに少し不思議なところはあるなぁとは思っていたものの、勝手に付き合っていることにしているとは思わなかった。
「そうですか。だから発表したんですか?」
「うん。このままマネージャーと恋人であることを隠すのはさすがに申し訳ないよ」
雪さんの中では付き合っているのだ。本当は付き合っていなかったとしても。ここで雪さんに現実を教えることはできるものの、それをしても素直に聞いてくれるか分からない。
元々、雪さんは妄想癖があるのは知っていた。それでもここまでそれが進んでいるとは思っていなかったし、変に否定をすると今の雪さんは何をしてしまうか分からない不安がある。
どうしたものかな。
「雪さんはメンバーとかには話しましたか?」
「話したよ」
他のメンバーから雪さんがそんな話をしていたことは聞いていないので、メンバー間だけの秘密にしようという話になったのかもしれない。
「なんと言っていましたか?」
「おかしいこと言ってたよ」
「おかしいことですか?」
まぁ…そうですよね。
他のメンバーは僕が雪さんと付き合っていないことは分かっていると思う。別に他の誰かとお付き合いをしているわけではないものの、忙しくて誰かと恋するみたいな時間はまるでなかったのだ。
すると雪さんは急に頬を膨らませてから不服そうに話し始めた。
「なんか、ハルさんが「それはあり得ないよ」って言ってきたり、 ナツミさんが「あんた頭おかしくなったんじゃない」とか、チアキさんは「最近眠れていないんじゃないかしら」と言ってきたの。私は普通なのに」
中々、辛辣な言葉なものの、これは正しい。僕は雪さんと付き合っていないのだから。
「…そうですか」
「みんな、おかしいですよね。なんで私とマネージャーさんが付き合っていることを認められないんでしょうか」
「…うん、そうだねぇ…」
適当な返事をしながら、これからどのように立ち回るのかを考える。雪さんはアイドルとしての活動を継続していきたいと思っている。そうなると色々と考えていかなければいけない。
ファンがアンチに転換してしまうなんて、別に珍しい話じゃない。各故、雪さんの『彼氏がいる』発言からSNSでも『推しを止める』や『嘘付き』という言葉が多少なりある。
正直、そうなってしまうのは仕方のない話。別に純真無垢なアイドルとして売っていたわけではない。それでもやはりファンはアイドルには『彼氏なし』で『純心』であることを求めているのだ。
僕がマネージャーとして担当しているアイドルグループ『十人』もこれから大きな荒波を乗り越えて行かないといけないだろうと思った。
担当アイドルたちが急に『彼氏います!』と言い始め、焦っていたら自分のことだった件について 普通 @jgdqa
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