第5話 ずっとこうされたかったんでしょ?
ゆあは晴芽に抱きついた。
「先輩。私に甘えたいって本当ですか」
晴芽の耳元でおそるおそる尋ねる。
「えっ?いやいやそんな、私らしくない……」
「正直に言ってください」
(どうしてバレてるの!?というかゆあ、お、怒ってる……?なんだか圧がすごくて潰されそう)
晴芽はゆあに返事ができないままでいた。
(はい、なんて言えない……)
ここまで晴芽がゆあに甘えられないのにも、”他人の前ではしっかりものでいてしまう“という晴芽の生態以外の理由があった。
(もう甘えたいだなんて欲は出しちゃいけないんだ)
晴芽は過去を思い出す。
『しっかり者だと思って、甘えさせてくれると思って付き合ったのに』
『甘えるなんて晴芽ちゃんらしくない』
『別れよう』
言葉ひとつひとつが今でも鮮明に思い出せる。
その子は同い年だったけれど、ゆあは年下だ。
余計に自分のことをを甘えられる存在としてみているんだろうなと晴芽は思っていた。
(ゆあにも別れようなんて言われたら立ち直れないよ……)
「……私、晴芽先輩が私の布団に甘えているの聞いちゃったんですよね」
「え……」
晴芽はその言葉に絶句する。そして絶望する。
ゆあが今どんな表情をしているのか、怖くて見ることができない。
「先輩があんなふうに甘えるの、初めて見ました」
次に何を言われるのか、晴芽は耳を塞ぎたくなる。
けれど腕ごと抱きしめられているので叶わない。
(聞きたくない。ゆあに嫌われたら私は)
耳を塞げない代わりにぎゅっと目を瞑る。
次に来る衝撃に備えるように。
「私も先輩を甘やかしたいんです」
「え……?」
思ったような衝撃は訪れない。
「なに、言って……」
「私が告白した時から思ってました。先輩に甘えるのはもちろん好きだけど、それ以上に先輩には甘えて欲しいって」
強く瞑っていた目をだんだんと開く。
晴芽がゆっくり顔を上げた先には、目を細めて座るゆあの姿がある。
「甘えていいの……?」
「当たり前です。いっぱい甘やかします」
声にならないような声をあげて一旦ゆあから離れると、晴芽はまた近づいていって、頭を差し出す。
撫でて、と言わんばかりの行動にゆあは喉を鳴らした。
「……可愛い先輩。今週も頑張って偉かったですよ」
「私えらい?」
「偉いです」
「…‥ふふ」
晴芽は気持ちよさそうに頭を撫でられる。
ゆあの手が晴芽の髪をとく度に、彼女の心もまた溶かされていく。
「先輩は真面目だから、たまにはこうして甘やかされないとだめです」
「そうなの?」
「そうです。頑張りすぎなので私が褒めてあげるんです」
晴芽の全てを肯定するようにゆあの手は晴芽を優しく包み込む。
「こうやってめいっぱいよしよしされるの夢だったの」
「私もこうして甘やかすのが夢でしたよ」
晴芽は飼い主に甘える犬か猫のように、ゆあの膝下で丸くなって撫でられている。
「もっと撫でて」
撫でるのを催促するように、晴芽は起き上がってゆあの胸に頭をぐいぐい近づけた。
「もう。甘えんぼさんなんだから」
「ゆあちゃんにだけだよ?」
上目遣いで言うので、ゆあの理性にヒビが入る。
「当然です。晴芽先輩を甘やかしていいのは私だけです」
「ゆあちゃんもっと、もっといろんなことして」
身長の暴力とやらでゆあを押し倒して、晴芽はゆあの首元に何度もしつこくキスをする。
例の理性は粉々に砕け散った。
「そんなに煽っていいんですか?どうなっても知りませんよ」
「ん……」
ほとんど体に力の入っていない晴芽を押し倒し返すのは容易なことだった。
へにゃっと笑う晴芽を見下ろして、ゆあは自分の中のリミッターが外れていくのを感じる。
(先輩可愛いすぎる)
「先輩。はるめせんぱい」
欲望のままにキスをする。触れるだけのキスも、深いキスも。
手は自然とお互いの指を絡ませている。
「先輩。ずっとこうされたかったんでしょ?」
「うん……っ」
気持ちよさそうに身を捩る晴芽にゆあは応える。
ずっとこうしていたいと2人は思う。
「これからも私が先輩を甘やかしますから」
2人の甘やかしライフはまだ始まったばかりだ。
甘やかされたい先輩と甘やかしたい後輩 十坂すい @10s_akaSui
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