第9話 爺ちゃんの決断
『第四次中東戦争!』と婆ちゃん、隆二、香は、清一に聞き返した。
清一は、「そう!戦争が始まったらしい‥」
とタバコの火を消して、自分の新聞社、京葉新聞の夕刊の早刷りを見せた。
退院して、まだ松葉杖がとれない隆二が「で?どうなるんだ兄貴?」と問うと、清一は、「石油だな?問題は‥」と言った。
側で、パトカーのオモチャで遊ぶ、智也は、チンプンカンプンである。
「まあ、ウチの雑貨店の商品は、石油と関係ないから、影響はないと思うけどな!」と清一は新聞をたたみ、皆に言った。
「そうでもないじゃろ」と奥の部屋で、独り〝詰碁〟をやっている爺ちゃんが話しに割り込んできた。
続けて、「インフレが始まるじゃろ、どんなパニックが起きるかわからん、婆ちゃん?ウチの倉庫に在庫はどれくらいある?」と聞いた。
婆ちゃんは、「まったく無い訳じゃないけど、〝少なめ〟ってとこかね」と返した。
「ふむ、まだ問屋さんが、やってる時間じゃな?
有金全部出して、倉庫をいっぱいにしようや‥」と爺ちゃんが言う。
『有金全部!』と皆が聞き返した!
爺ちゃんは、「そうじゃ、物がなくて、ひもじい思いをするのは、前の戦争で懲り懲りじゃ‥雑貨店が、トイレットペーパーや洗剤が無くてどうする?それに洗剤は腐らん!」と呑気な爺ちゃんに
似つかない〝バシ!〟と言う音を立て、碁石を盤上に置いた。
翌日、早朝
清一が新聞を取りに庭に出ると、古川雑貨店に
100人は下らない行列が出来ているでは無いか!
行列から「トイレットペーパーありますか?」と
声が飛び交う!
オイルショックである。
清一は、「大丈夫ですよ、今日トラックで沢山来ますから!皆さん慌てないでください!」と皆を宥めた。
清一は、「大変!お客さんが行列作ってる!」
と座敷に飛び込んだ。
婆ちゃんは、「そりゃ大変!早くご飯たべて、お店開けるよ!」と割烹着きた婆ちゃんが朝飯を急いで支度した。
午前9時
店を開けて1時間もすると、古川雑貨店の商品は空っぽに近い状態だった!
「皆さん!落ち着いて、今、トラックきますから!」と清一が声をかける。爺ちゃんも婆ちゃんも、手伝いに来た香と智也も大忙しである。
隆二は、松葉杖をついて、外の300人に膨れ上がった行列を整理している。
やがてトラックが来た!
「おー」と並んで待っていたお客さんから歓声が上がった。
「皆さん、沢山あるから大丈夫じゃ!大安売りじゃ!」と婆ちゃんが声を上げると爺ちゃんが、
「安売りはせんでも良かろう?」と言うと、「値段はいつもと一緒じゃ!」と笑った。
その日は、一日中忙しかった。
夕方
商品をほとんど売り尽くした古川雑貨店の皆は、座敷で休んでいた。
「凄かったね、オイルショックって」と香が言うと皆頷いた。
その時、便所から爺ちゃんが「婆ちゃん!紙がないぞ!」と声が聞こえてきた。
「あっ!ウチのトイレットペーパーとっとくの忘れた!」と婆ちゃんが口に手をあてた!
爺ちゃんは、「不覚!」と便所で項垂れた。
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