リトルガール

ヤモ

プロローグ 雨の日


――ザァー……


今日は雨か。

雨の日が嫌いだ……あの時の僕を思い出すから。

あの、醜い自分を……。

バシャ。


「雨なのに……車、飛ばしやがる……最低だ……」

(今日は、かなり雨が激しいな……

 あの日みたいだ……思い出したくもない)


目の前を、ひとりの少女が歩いている。

――危ないな。

車が近づいているのが、分からないのか?


「おい」

「君! ちょっと待てよ!」

危ない……。

(待て、車が――)

駄目だ!


「おい、君!

 車が近づいてるのが分からないのか!」

「危ない! おい!」

気づいた時には、

僕は走って、その少女の手を掴んでいた。

「あぶないだろ!

 何、考えてんだよ!」

……何とか言えよ。

礼を言えとは言わない。

でも……。


「大丈夫だな。

 あまり、よそ見をしたら駄目だ」

……どうした?


何か言いたいのか?

口を動かしている。

でも、僕の目に映る少女は、

とても苦しそうで……。


「あ……あう……」


何だ?

雨の音が激しくて、聞こえない。


「どうした?

 怪我でもしてるのか?」

「あ……あうぃ……が……」


分からない。

何が言いたいんだ?

僕には、聞こえない。

……どうしてだ?

雨の音が、あまりにも激しい。


「もういいから。気をつけて、帰れよ」


少女は、何も言わずに去っていった。

……あの子、何を言いたかったんだろう。

考えても、しょうがないか……。

雨の日の出会いなんて……。


僕にとっての雨の日は、別れでしかないからな……。


――リトルガール

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