罪の祝福

白菊

情愛

 おどろいたことに、私には文字が書けた。だから、これを書くことにした。

 これは、たとえば、だれか見つけた人がいたら、その人にとってはとても退屈で、奇妙なものだと思う。

 けれども私にとってはとても大切なものとなるだろう。

 私はその可能性を知りながら、彼のことを書こうと思う。

 だってこんなふうに、文字が書けるから。



 私は彼を愛していた。


 私の、この上なく正直な気持ちだ! こうして文字にしてみると、なんの変哲もない、よくある言葉に感じる。

 いや、実際、私はそんな、よくある言葉になおせる、よくある思いを持っているのかもしれない。 いやちがう、かもしれないなんて不確かなものじゃない、実際にそういう、よくある思いを持っているのだ。

 けれどもこの言葉が、私の声によって再現されたとき、人は微妙な顔をする。その理由については、この人生でよく学んだ。

 私には人生のほとんどをかけるほど長い時間が必要だったが、結局は簡単なことだった。

 私が男であって、「彼」も文字通り男であった。これがすべての理由だった。私が生きてきた世界は、男が男に、女が女に、愛と呼びたくなる感情を持つのは異端とされていた。


 それで困るのが、私はべつに彼に対して性的な接触とでもいうのか、いわゆるくちづけだとか なにか衝動的な体のはげしいふれあいだとか、そういうことを求めていたわけではないことである。

 さらにいえば、そんなことはしたくない。けがらわしいとかそんなことは思わないが、彼とのそうした行為に対して魅力を感じない。ただ、もし彼が私に対してそうした行為をのぞみ求めたなら、私はよろこんで応じただろう、応じるだろう。


 私は、彼を愛しているからだ。



 私のことなんていうのはどうだっていい。そんなのは決して重要でなくて、彼こそがもっとも重要であるのだ。


 あゝ私は彼に満たされていた! 私は彼によって存在し、彼によって生かされていた!

 そうだ、彼が、彼こそが最も尊いのである。ああ彼こそは、彼こそは!


 藤橋 藤橋 ふじはし

 ふじはし ふじはし 藤橋 藤橋


 どうだろう 彼は名前さえ尊い!


 藤橋 藤橋  藤 橋

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