第11話
コンクール前日。今日はもうガツガツと練習するようなことはせず、確認程度の合奏。学校にいた先生方にも演奏を聴いてもらって、色々激励の言葉もいただいた。純粋な誉め言葉だけをもらう機会なんて、コンクールの練習中にはなかなかないことだから少しこっぱずかしい。
聴いてくれた先生方がいなくなるのを待って、舞衣ちゃんが前に出てくる。
「それじゃあ明日のミーティングをします。先生、プリントって」
「裏に置いてある! パーカスの子誰か取ってきてもらえる?」
準備室は打楽器が展開している奥。扉から近いところにいた子がとってそのまま配ってくれて、ざっと目を通す。朝七時半集合……六時起きかなあ。譜面台にかけている道具袋からシャーペンを取り出して、楽譜ファイルを下敷きにする。
「もらっていない人いないですか? それじゃあ読み合せします」
今回の演奏は二時十五分から。朝は練習する時間があるし、遅すぎることもない最適な順番だと思う。
「先生と一部のサポメンは積み込みのときに先に会場に行ってもらって手続きなどを終わらせてもらいます。他のメンバーも十二時くらいには会場に着くと思うので、出場者と打楽器のサポートをしてくれる人は先生からシールを先にもらってください」
自分が関係者であることを証明するもので、それを左肩に付けておかないとリハ室や舞台裏に入れない。そういう事務上のものではあるけれど、私たち生徒からするとファイルや楽器ケースなどに貼って記念品になるものだ。今年は何色かな。
「敷地内で各自お昼ご飯を食べてもらって、管楽器は四十五分には集合します。駐車場から楽器を下ろして楽器置き場まで運んでください。打楽器とそのサポートは一時にトラックの中で楽器の組み立てをして、三十七分に搬入です」
「はい」
パーカスの子たちが返事をする。パーカスは搬入が必要になる関係でコンクールでは別行動になりがちで、その分スケジュールを完璧に把握しておかないといけない。大変そうだなと思いつつ、私はいつもみんなに合わせて行動しがちだから尊敬してしまう。
ここから分単位の指示が入っていく。管楽器は楽器置き場で組み立てて一時四十分にリハ室に向かう通路脇に集合。楽器を搬入してから思ったよりも時間がある。
「チューニングで使うリハ室は十七分、小ホールでリハが八分あります。リハ室は靴を脱いで入ってもらうのと、扉が開いている時の音出し厳禁です」
ここで先生が舞衣ちゃんの説明を止めて、その間に行う内容を説明してくれた。
「ブレス練は楽器置き場の方でやっておいてね。音出しとパート内でのチューニングは五分。そのあと軽く全体チューニングとサントレして、曲の最終確認をしていきます。小ホールで通せるといいんだけど、リハ室の様子を見て決めるね。リハの間、管サポの子はそれぞれのパートのチューニングを手伝ってあげたりチューナーとかの荷物を持ってあげたりして。あと一人タイムキーパーを決めないといけないから、それはあとで私から声をかけます」
「はい!」
全員の返事に先生がうなずいてから舞衣ちゃんに目配せして、再び舞衣ちゃんが説明を始める。
「といってもあとはもう書いてある通りです。本番が終わったら集合写真を撮って、楽器をトラックに積め終わったら他校の演奏の見学になります。なるべくまとまって座るようにしてもらうのと、座席では飴やガムも含めて飲食禁止なので注意してください。表彰と閉会式が終わったら、建物の外で一度集合して学校に戻ります。学校に着いたら楽器を音楽室に戻して、六時半完全下校予定です。先生、なにかありますか」
その問いに先生が立ち上がった。
「あんまり長く話してもあれだから手短にね。今までたくさんの練習をしてきて、本当にみんな成長したと思います。失敗したくないとかいろいろ考えてしまうことはあると思うけど、まずは楽しく演奏すること。みんななら絶対にいい演奏ができるから、胸を張って明日に臨みましょう」
「はい!」
ミーティングが終わり、帰りの挨拶のために全員立ち上がったところで、思わぬ横やりが入った。
「ちょっと待ったぁ!」
声をあげたのは一番後ろにいたコンクールには出ないサポートメンバーたちで、あっけにとられている間にそれぞれのパートのところまで寄ってくる。
「あの、みんなでお守りを作りました。明日がんばってください」
手渡されたのは、綿が入った青のフェルト製で、イニシャルのYのアップリケが付いた丸いキーホルダー型のお守り。コンクールに出るメンバーよりもサポートの方が少ないから人数分作るの大変だったと思うのに、すごくかわいい。
「すごい!」
「あ、これパートの色なんだね」
しぐれに言われて他のパートのお守りを見ると、たしかにパートのイメージカラーが使われていた。
「本当にありがとう! 明日これポッケに入れて出るね」
そう言うと、うれしそうにうなずいてくれた。
「応援してます!」
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