第3話
家に帰り、楽譜と全員の譜面が見れるスコア、ノートをベッドの上に並べて録音した合奏を聴く。疲れている日もあるから毎日とはいかないけれど、今日の演奏を聴きながら改善点を探したり曲のストーリーを考えたりするのが日課になっていた。
最初の静かな音楽から、楽器が増えて少しずつ音が明るくなっていく。ブレス位置はこのあとに決めたからいいとして、装飾音符がやはりまだそろってない。パート内ではそろってくるようになってきたから、分奏を増やしてもらおう。
感情をこめて歌いすぎても遅くなってきてしまうし、逆に急ぎたくなるところも多い。吹き方をそろえていくしかないかな。
トランペットやシンバルの音が夜明けを知らせ、クレッシェンドでこのあとの旅路を楽しみにする気持ちがわかる。朝方まで話していた家族もきっと見送りに来て手を振ってくれていたはずだ。少し音程がよくないかな。明日パート内で確認しよ。
一度曲が落ち着いてからは、雰囲気が変わってにぎやかな音楽。寄港先の様子なのだろう。マードックも休憩中に観光したりしていたのかな。アイリッシュ調の明るい音楽は少しずつ人数も増えて裏メロも入ってくる。ここのところのリズムや運指が難しくて今も大変だからリズムに乗って軽く吹けるように。
吹くのに必死でクレッシェンドの指示が出ているところの盛り上がりがまだ甘い。そのあとから楽器が増えるから音量になるべく差が出ないようにして……。
その日演奏を聴きながらこうした方がと考えたことだとか、思いついたストーリーをまとめているノートに思うがまま書きなぐる。
本当なら合奏のこととストーリーのことで書く場所を変えた方が見やすいんだろうし、最初はそうしていたのだけど、だんだん面倒くさくなってしまって今はぐちゃぐちゃ。それでもときどき見返してみると懐かしくなったり改善点に挙げていたところができるようになっていて喜んだりと、ちょっとした日記みたいになっていた。
リットを使った急激な減速はかなり良くなってきた。ピッコロソロへの受け渡しがスムーズ。ソロのリレーはまだぶつ切り気味だから、私も意識していかないといけない。
しぐれに活を入れられてしまったし、ちゃんと自分がどういう風にソロのメロディを吹きたいのか考えないと。たくさん受け渡されてきたソロの最後で、私の次はホルンとサックスがメロディを受け継ぐ。
リレーが終わるということは私と私のあとで、なにか場面の変化があるはずだ。私のところまでは一つ一つ書いている手紙の話題が変わっているイメージだったけれど……。
ラストに初めの主題が返ってくるからもしかしたら家族のことを思って書いているのかな。手紙をマメに書いている人なら心配になって色々書いてそう。航海中の楽しい出来事を書いているうちに家族のことを思い出して、寂しさを感じたから私のソロはデクレッシェンドしていく、とかだときれいだな。
ストーリーのことを考えすぎて気づけばそのあとの部分の合奏が始まっている。ホルンと吹くところも不安点が多いのに全然聴いてなかった。慌てて巻き戻してスコア、楽譜に意識を戻した。
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