6話「スキルアップ」
「クッチャ、クッチャ……」
レッドドラゴン様は食べ残しのカマキリを食べておられます。向かった先に良い食料はなかったのか? それても食後のデザート感覚で戻ってきたのか……。
まあ、カマキリ肉美味しいからな。
デザートとは違うと思うけど、ドラゴンの生態系なんか詳しく知らん。もしかしたらアレがドラゴンにとってのデザートなのかもしれん。
俺は奴がいなくなるまで穴の中でじっとしてるだけだ。だって超絶怖ぇ―もん。カマキリの鎌を弾いたあの皮膚に酸攻撃が効くとは思えん。ゲロぶっかけたら怒りを買うだけだ。
というわけで、今はめっちゃ暇してる。
ここは馬鹿でかい広間の片隅で俺の姿はすっぽり穴に隠れてる。この距離ならじっとしてれば見つかることは絶対にない。ピクリと動いた瞬間見つかりそうだけど、動かなければ大丈夫。
俺は石だ。その辺にある岩のお仲間。自ら動くことはない。
「クッチャ、クッチャ……」
うーむ、まだまだ完食するまで時間が掛かりそうだ。残り少ないカマキリ肉をじっくり味わってる感じがする。アレ美味いもんなー。その気持ちわかるぞ。
あー、暇だ。なんかねーかな。
暇つぶしに自分を鑑定。
『竜種』
嘘つけ。
相変わらず使えねースキルだな。せめてアベラギウムって言えよ。持ち主より使えないスキルなんて意味ねーだろ。
ゲームとかラノベ辺りだと使えないスキルはレベルアップすればチートスキルになるのが定番なんだけどなー……しないの? レベルアップしてもいいんだぞ。
《……》
怒らないから正直に言ってごらん。君はやれば出来る子だって信じてるから。
鑑定スキル、マジでレベルアップしないの? 産廃のままでいいわけ?
《スキル「鑑定」を、スキルポイント50を消費してレベルアップしますか?》
キターーー!!
やれば出来るじゃん! さすが俺の夢!!
もちろんイエスだ! サクッとやっちゃてくれ!
《承認しました。スキルポイント50消費し、「鑑定Lv.2」になりました。残りスキルポイントは155です》
おーほっほっほっ! これで鑑定無双ができますわ!
思わず高飛車令嬢の真似が飛び出すほど嬉しい。喜びジャンプしなかったのが奇跡だ。
さあ、貴様の真の実力、見せてみるがいい!
鑑定っ!!
『アベラギウム 竜種』
知ってるっちゅーねん。
進化の時の情報とレベル1の情報合わせただけじゃん、使えねーな。
……いや、もしかしたら「鑑定Lv.3」になれば大化けするんじゃないか?
おい、天の声、鑑定をもう一度レベルアップだ。
《スキルポイントが足りません。スキル「鑑定Lv.3」に必要なスキルポイントは300です》
ふざけんな。
インフレしすぎだろ。強さじゃなくてコストをインフレさせてどうする。
確か取得で100だったよな。で、1から2で50ポイント。なのに2から3で300はおかしいだろ。優良誤認の件も含めて消費者庁に訴えるぞコラ。
《……》
捜査のメスが入ってもいいのか? 奴らは庶民には厳しいぞ。天の声だからって議員特権が適用されると思うなよ。
《……》
ち、無視しやがって。
あー、50ポイント損した。こんなことなら……こんなことなら?
そこで気付く。スキルポイントはスキルを「取得」することに使えるのだと。
アホか俺は。なんで他のスキルのことを思いつかなかったんだ。いや、理由は想像が付く。鑑定がクソ過ぎたからスキル取得のことがごっそり脳から抜け落ちていたんだ、そうに違いない。一番悪いのは鑑定、次に天の声。お前らは共犯者だ。
よし! そうときまれば新スキルをゲットするか!
鑑定を取得したときは天の声に「鑑定はないのですか?」って優しく語りかけてゲットした記憶がある。ということは、必要なスキルを思い浮かべて天の声に語りかければスキルをゲットできるってことだ。
なにがいいかなー♪
まあ、悩むまでもないな。ここはもちろん「射出」一択だ!
あの酸攻撃を弾にして発射できれば一気に無双できる!
ゴキちゃん譲りの素早さによるヒットアンドウェー方式の遠距離からの酸攻撃。
エグいねー、卑怯だねー、最高だねー。相手がムキになる姿が簡単に想像できるわ。
決定!
おい天の声、「射出」スキルを寄越せ! すぐにだ!
《スキルポイントが足りません。スキル「射出」獲得に必要なスキルポイントは200です》
は? 冗談言ってないで寄越せよ。俺のスキルポイントは一万はあるぞ。
《現在のスキルポイントは155です》
嘘つくなって。少なくても5000ポイントはあったぞ。いいからスキル寄越せって。
《現在のスキルポイントは155です》
《スキルポイントが足りません。スキル「射出」獲得に必要なスキルポイントは200です》
くそ、融通のきかん奴だな。そんなんじゃクレーマに逆ギレされて通報されるぞ。
《……》
はぁー、もういいや。コイツはこういう奴だ。ポンコツ天の声め。
《……》
残り155ポイント……どんなスキルなら取れるんだよ。図鑑機能とかねーの?
《……》
あるわけねーか。不親切詐欺ゲーだもんな。それに取れたとしても100ポイントじゃ鑑定の二の舞になりそうだ。
クソスキルの鑑定が100ポイントで、使えそうな射出スキルが200ポイント。きっと高性能なスキルほど必要なスキルポイントが多いに違いない。だとしたらここは温存が正解か?
ポンポンレベル上がるし、進化も意外と早くできる。そして進化すると大量のスキルポイントをゲットできる。
ここが重要なポイントだ。
これだけ頻繁にポイントがゲット出来るということは……このゲームはきっと、スキルポイントの使い道で人生が大きく変わるゲームに違いない。
鑑定に振れば鑑定士になれたり、射出に振れば優秀な狩人になったりする。たぶんそういうこと。
俺はモンスターで魔王を目指すつもりなので凶悪なスキルが必要だな。
モンスターとして魔王に必要なスキルがどんなもんんか知らんけど、絶対に強スキルが必要なはず。
第一目標は200ポイント溜めて「射出」をゲットする。これで生存率爆上がり。一気に強モンスターの仲間入りだ。
第二目標はもっと大量にポイントを溜めて凶悪なスキルをゲットする。
うっし、この方針だな。
俺は安物買いの銭失いはしない主義。買うからには多少高くても長く使える良いものを買う。その方が人生は充実するもんだ。
ズシン——ズシン——。
お、食事が終わったらしい。ドラゴンはダンジョンの奥、暗闇の中に消えていった。
お残し厳禁主義なのか、カマキリの肉片は綺麗になくなってる。
……ゴキちゃんやハイエナ顔負けの綺麗さだな。あんな図体のくせして几帳面なのか?
ち、少しぐらい残しておけよ。あんな美味い肉を独り占めなんて許さんぞ。いつかこの恨みを晴らしてやるからな。食い物の恨みは恐ろしいと思い知るがいい。そのいつかがいつ訪れるかしらんけど。
とりあえず残ったカマキリの血でも頂くか。あれも旨味成分たっぷりで結構美味いし。
チュルチュル、チュルチュル……。
《経験値が規定に達しました。レベルが2からレベル5に上がりました》
《スキルポイントを30獲得しました。保有スキルポイントは185です》
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