2話「スキル」
カーン!!
ケルベロス選手との闘いのゴングが鳴らされた!
『おーっとケルベロス選手、有無を言わさず強烈な突進だー!』
『これは口を開けてるので突進しながらそのまま美味しく頂きましょうってことですね』
『しかしゴキちゃん、これを素早く回避!』
『ゴキちゃんは素早さが高いですからね。流石です』
『ケルベロス選手、これにイラだったのか、歯を食いしばりうなり声を上げる!』
「グルルルル……」
『屈辱だったのでしょう。格下に
『なるほど……おおっと! ケルベロス選手、口を大きく開いた! 何をする気でしょうか!?』
『よく見てください。口に炎の玉が出来てきてます。きっと火球攻撃でしょう』
『まさかの火球攻撃! ケルベロス選手、ゴキちゃんを殺す気満々だぁぁぁ!!』
『所詮この世は弱肉強食。食べられないなら燃やしてしましょうホトトギス』
『上手いですねー』
『それほどでも(笑)』
「ガウッ!!」
『ケルベロス選手! サーッカーボールのような特大火球を発射したーーー!』
ボゴォォォン!!
『あー、ゴキちゃん、これは死にましたね。南無——』
『来世はもっと良い生物に生まれ変われるといいですね』
『はい』
おいお前ら、俺を勝手に殺すな。
下手な実況を脳内再生しながら俺は逃げまくった。
全力で走って岩陰に隠れ、火球は無意識に飛んで天井に逃げた。
めっちゃコエーよ。マジで死ぬかと思った。ゴブリンキングの棍棒の比じゃねーわ。
そして無意識に天井に張り付いたけど、これもコエー。
俺は鳶職の経験なんてねーし、高所恐怖症なんだぞ。張り付いてるだけでも死にそうだわ。
「グル? グル?」
流石のケルベロスも、地上100メートルの天井に張り付いてるゴキちゃんは発見できないらしい。どうやらコイツもあまり夜目が効かないらしい。俺にはこの距離でもケルベロスが見えてるが。
そういえばゴキちゃんって夜行性だっけ? 納得。
「グルゥ……」
ケルベロスは残念そうな声を声を上げてゴブリンキングが消えた洞窟の奥に消えていった。
なにやら猛獣同士がやり合う雄叫びが聞こえてくるが俺には無関係だ。勝手に殺し合ってくれ。
《経験値が規定に達しました。レベルが5から10に上がりました》
《スキルポイントを40獲得しました。保有スキルポイントは50です》
《規定のレベルに達しました。進化可能です》
おんやぁ?
またしても棚ぼた経験値でレベルアップ。そして大量のスキルポイントゲット。
レベル1から5で10ポイントなのに、5から10で40ポイントってインフレしすぎだろ。そんな設定じゃ課金者は嫌気が差すぞ。三毛猫プロジェクトっていうインフレソシャゲを知らんのか。
まあ、天の声も俺の夢の産物だし、俺が望んだ結果ともいえるか。
廃課金せずにインフレ俺ツエーを味わえるなら大歓迎だ!
で、なに? 進化可能って言った?
《進化先:ブラッタニクス or レッサー・ワーム》
お、今度は答えてくれたな天の声。
ブラッタニクスか、レッサー・ワームを選べるってことだよな。
うーむ、悩む。とりあえずここ(地上100メートル)はコエーから地上に降りるか。
本能で飛べることに感謝。飛べるって素晴らしい。
俺は大きな岩陰に隠れ、進化先について考える。
どうやらこのゲームはレベル10で進化できる成り上がり系のゲームらしい。
経験値は相変わらず意味不明だが、とりあえず進化だけはしとこう。このままじゃ棍棒や火球はもちろん、スリッパでも死ぬからな。
進化先候補は二つ。
まずは「ブラッタニクス」。
なんか強そうな響き。ニクスなんて、ロボアクションじゃ強機体に付くような名称だ。
次に「レッサー・ワーム」。
ワームは分かる。ミミズみたいなアレだろ。サンドワームとか砂漠モンスターの定番だしな。
ここは考えるまでもなくニクス一択だろ。
なぜに「レッサー」が付くようなものに種族に進化しなきゃならんのだ。そんなもんは進化じゃなくて退化だろ。モザイクは外れるかもしれんが餌の代名詞のような存在になるのは絶対に嫌だ。
はい決定!
ブラッタニクスに進化だ!
《承認しました。レッサー・ブラッタニクスが、ブラッタニクスへ進化します》
ちょっと待てや。
俺の種族、ゴキちゃんやなくてブラッタニクスなのかよ。
ニクスなんて強単語のくせにゴキなのかよ。名称詐欺だろ。優良誤認で訴えるぞコラ。
んん? おおー!? 身体がめっちゃ熱いぞ!?
なんかうっすら光ってるし、ちょっとホタルっぽい。
進化か? これが進化なのか? おれは幼虫ゴキから成虫ゴキになるのか? そんなのは嫌だぞ!
天の声! 訂正だ!! やっぱミミズにする!!!
《……》
また無視しやがった!
都合の悪いときだけ黙るんじゃねーよクソが!
必要に応じて柔軟に対応しろや! 社会人の常識だろうが! 俺みたいに出世できないぞ! あ、俺の夢だから柔軟性がないのか。そうかそうか……。
なんて言ってる間に光が収まった。
ちょっと熱っぽいけど進化とやらは終わったらしい。
《ブラッタニクスへの進化が完了しました。レベルが1になりました》
《スキルポイントを50獲得しました。保有スキルポイントは100です》
……超絶不本意なんだが。
なにが悲しくてゴキちゃんからゴキちゃんに進化せにゃならんのだ。自分の種族がブラッタニクスって知ってたら絶対にこっちは選ばなかった。モザイク解けねーじゃねーか。
せめて鑑定スキルとかあればこの悲劇は避けられたかもしれない。
おい天の声、鑑定スキル寄越せや。
《スキルポイント100を使用して、スキル「鑑定」を獲得しますか?》
おお! 答えてくれた! しかも理想の「鑑定」スキル!
もちろんイエスだ! さっさと寄越せ!
《承認しました。スキルポイント100を消費し、スキル「鑑定」を獲得しました。残りスキルポイントは0です》
……獲得したんだよな?
ステータス画面が開けないからよくわからんぞ。
試しにそこに生えてるキノコでも鑑定しとくか。
レッツ・鑑定!
『キノコ』
見りゃ分かる。
キノコを鑑定してキノコって馬鹿にしてんのか、おぉ、天の声さんよぉー(怒)。
《……》
こんなクソスキル返品だ。クーリングオフを希望する!
《……》
またまた無視しやがった。「虫には無視がお似合いです。プークスクスw」てか。
《……》
ふうやれやれ、気持ちを切り替えようか。
きっとこのキノコはキノコっていう名称のキノコなんだ。他の物を調べればきっと……。
壁=壁
岩=岩
ざけんな。ただのクソスキルじゃねーか。
いや待て。壁は壁だし、岩は岩だ。ゲームやラノベの読み過ぎなんだ。ただの壁に「○○洞窟の壁」とか、ただの岩に「○○鉱石」なんて期待する方が間違ってる。俺がこのスキルを取った本当の目的を思い出せ。
大きく深呼吸——。
よし、落ちついた。
では本当の目的、「自分を知ろう」を実行しようか!
どんな些細な情報でもいい。これ以上の進化事故を防ぐんだ!
さあ、「鑑定」スキルよ! お前の本当の力を見せてくれ! 自分を鑑定!!
『昆虫』
やっぱクソスキルじゃねーか。
んなもん百も承知だわ。天の声より情報少ねーじゃねーか。
見たまんま言うだけなら素人でも出来るわ。スキルを名乗ってんじゃねーよ。
どうやらこのゲームは優良誤認の名称詐欺がお好みらしい。
俺の夢のはずなんだけど、俺ってそこまで意地悪いか?
消えたクソ上司のHな噂を流したりクーラーの風を直撃させたりしてたけどその程度よ? なんで自分に対してまで嫌がらせしなきゃならんのだ。
ものは試しだ。目の前にそびえ立つでかいカマキリモンスターでも鑑定してみるか。
『昆虫』
見りゃわかるっちゅーに。
はあ……。
それでは第2ミッション、VSカマキリ、行ってみよぉー!
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