色褪せた世界で戦うとある剣士

神楽木

第1話 剣士の魔獣狩り

 突如として世界は崩壊した。


 原因は、魔獣による被害。


 魔獣とは、本来の生物に「何か」が生じ、遺伝子に亀裂が入り、新しい生き物となり生まれた生物のこと。

 魔獣は魔法を使うことができる。

 火や水、電気や氷など。


 その圧倒的な力で、同じ種族を束ねボスとなり、自分の強さを証明するために人間界を襲い始めるのだ。


 最初は軽く倒すことができたのだが、段々と魔獣の報告は増えるばかり。

 日に日に魔獣は強くなっていき、人類が築き上げてきた世界は崩壊し始めた。


 今では残った数少ない人間たちが、魔獣にバレないようにひっそりと生きている。

 都市は依然、魔獣達に占領されたままだ。


 残った人間たちは、生きるために衣食住を手に入れた。

 いつでも魔獣が来ても良いように、鎧なども作り始めた。


 こうした環境下でも、人間達は一人一人が生活を確立していった。

 町や村は、昔のようにまた通貨などを使って生活をし始めた。

 人間達は、段々と前と同じ日常を取り戻していった。


 少しづつ魔獣に対抗できるようにもなっていった。

 しかしまた前みたいにとてつもなく強い魔獣に何度も襲われてしまったら今度こそ世界は滅亡してしまう。


 油断はできない毎日だが、都市へ行かずとも安定した日常を送れるように世界は変わっていった。


◇◆◇


「キャー!」


 どこからともなく叫び声がした。


 叫んでいたのは、女性だった。

 丁度果物を収穫して帰ろうとしていたのだろう。

 ザルをひっくり返してリンゴが何個も地面に落っこちてしまっている。


 そして、女性の前には大きいイノシシの魔獣が、目を赤く光らせている。


「だ、誰か助けて!」


 大きな声で助けを呼んだ時だった。


 女性の後ろから、走るような音がした。


 次に女性が目を開けると、そこには倒れているイノシシの魔獣と、見慣れない男性がいた。

 手には水色に輝く剣を持っている。

 どうやらその剣でイノシシの魔獣を斬り裂いて倒したらしい。


「あ、あなたは…?」


「名乗るほどのものじゃ無いですよ。このリンゴ、三つ貰ってもいいですか?」


「あ、はい…良いですよ」


 そう言うと、男性はリンゴを三つ手に取り、そのうちの一つをかじりながらその場を後にした。

 女性は、一体何者なのか、聞くことはできなかった。


◇◆◇


 俺の名前は桐貝響人きりかいひびと

 名乗るほどのものではないが、一応自己紹介だけしようと思う。

 俺は高校一年生だったのだが、中退した。


 理由は、妹を魔の手から助けるためだ。

 妹の桐貝由葉きりかいゆいはは、昔から体が弱く、六歳近くになった時には、誰かに支えてもらわないと歩くことはできなかった。


 そうして、段々と弱っていき、今では寝たきりに近い状態へとなってしまった。

 由葉がかかった病は、「謎の奇病」らしく、まだ病名もついていないらしい。

 まだ全世界でも、数件近くしか報告されていない。

 全世界でも、まだ発見報告が少く、ある手術をしても治る可能性はほんのわずからしい。


「リスクを冒す必要は無いと思います。見送ってくれるだけでも、妹さんは嬉しいかと」


 と、最初は医者に言われた。


 しかし、俺は納得できなかった。

 だから俺は高校を中退し、今すぐにでも自分を雇ってくれる仕事を見つけた。


 その名も、「魔獣狩り」。

 魔獣は同じ種族を束ねるボス的な存在。

 それを倒し、高く売ったり、村や町から魔獣を追い払うことによって、お金が手に入る。


 現状、人間が魔法を対処することはできやい。

 だから魔法で攻撃されるのも承知の上で戦わないといけない。

 体も心もボロボロになるが、妹のためを思うと、自然に力を貰うことができる。


 そのために俺は今、魔獣を倒した報告をしに行くのだ。


「また凄い強そうな魔獣倒したな」


 白髪の髪色をしているこの男性は杉沢啓一すぎさわけいいち

 年齢は知らない。


 魔獣を今解析して、人間でも魔法を使えるようにする取り組みをしてくれている人だ。


「手ごわかっただろ?」


「いや、特に。不意打ちだったんで」


「そうか。まあこれぐらいデカくて強そうな魔獣なら、これぐらいはあげれるな」


 そう言って杉沢は十万円近くの通貨を俺に渡した。


「じゃ、もうそろそろ日が暮れるから帰りな」


「…はい」


 自分の家へと俺はトボトボ帰っていった。


「なんで十万なんだ? これくらいの魔獣なら五十万、いや百万は渡せそうだが」


「あいつの家族の事情知っているか?」


「いや、知らないけども」


「あいつの家は今、妹が病気で寝込んでいるらしい。手術費用に百万近く必要らしくてな。だからそんないきなりポンポン代金を出してしまったら手術費用を一瞬で貯めて、この仕事を辞めるかもしれない。他に魔獣狩りしている奴らで俺達に売ってくれる奴はそう多くない。だから少しでも使えるようにはした金を渡して生活させてるのさ」


「なるほど、悪党みたいだな」


◇◆◇


 俺は家へ帰った。

 扉を開けると、母親が待っていてくれた。


「おかえり。響人」


「ああ、ただいま」


 俺は玄関で靴を脱ぎ、テーブルのある方へと歩いっていった。

 この家は貸家。

 なんとか交渉をして、月五万で生活をしている。


「毎回ごめんね。響人ばっかりに辛い思いをさせて。今日もリンゴを買ってきてありがとう」


 母親は、仕事をした事が無いため、まだ肉体の全盛期である俺が頑張って仕事をしている。

 父親はまたいつものようにどこかで魔獣の研究をしている。

 もう父親の顔すらも忘れてしまった。


「…うん。あと、何万必要かな」


「生活するためのお金もあるから、あと五十万ぐらいは必要だね…」


「そっか…由葉は?」


 母親は悲しそうに首を横に振った。

 俺もそれを見て、悲しくなった。


 もう由葉が家に居なくなってから三年。

 由葉が帰ってくる可能性は絶望的だって言うことも、知りたくなくてもわかっている。

 でも、少しでも希望があるかもしれないと俺は家に帰るとそう思ってしまう。


「ごめん母さん。俺もう寝るね」


「響人、ご飯はいいの?」


「いい。もうご飯食べたし」


 そう言って、俺は小さな布団がある寝室へと向かった。


 まるで倒れるかのように俺は布団へとダイブした。


 急に悲しさがこみ上げてきた。

 由葉が寝たきりになってもう半年経つ。

 今までたくさん魔獣を倒してお金も手に入れてきた。

 しかし、生活する分のお金を入れると、どうしても手術費用が足らない。


 由葉が息を引き取るのも時間の問題なのかもしれない。


 「謎の奇病」はかかった者を意識不明にさせる。

 果たして何が原因で発症するのかすら分からない。

 ただタイムリミットは一年。

 もう半分を切ってしまった。


「このままじゃ、助からないかもしれない」


 そう思って涙が目から止まらない。


 俺は絶望の淵へと叩き込まれていた。


「もっと魔獣を倒すのを頑張ろう」


 泣ききった後は、すぐに眠りにおちた。


 魔獣を倒すというのは、それほど苦労もある。

 体は鉄のように硬い魔獣だっている。

 毎回毎回同じ戦い方で倒せるほど簡単な相手じゃない。

 一日に最大三体倒すのが自分の限界だ。

 そのため別の戦い方で魔獣を倒そうと決めた。

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色褪せた世界で戦うとある剣士 神楽木 @kagura_gi

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