EXTRA: 幽霊カフェの真実
「はーい、由香だよー」
由香はその日も配信していた。
しかし、どこか元気がない。それを裏付けるように大きなため息をひとつついた。
視聴者もそれに気づき、『どうした?』『元気ないね』などのコメントを寄せた。
「あーしのプロデュースした幽霊カフェが、今週末で閉店しまーす。クレームが多かったんだってー」
あからさまに投げやりだった。
「いろんな人に力を貸してもらって、ようやく形になったお店だったんだけどさ……あーしも、自分なりにすごく頑張ってたんだよ。
お客さんの手を引っ張って席まで案内したりさ……はぁ、つら……」
個性的な接客に驚きの声もあったが、由香は気にせず続ける。
「もともと、二ヶ月の期間限定だったけどさ、まさか……一週間で閉店なんて……」
由香がため息混じりにコメントを眺めていると、『どんなクレーム?』といったコメントがいくつも寄せられた。
それを見て、火が点いたのか、一気に捲し立てる。
「クレームなんだけどさ、『本物の幽霊がいる』ってのがいちばん多かったんだって。意味わかんなくない?
猫カフェには猫がいるんだよ? じゃあ、幽霊カフェには幽霊がいなきゃダメじゃん!
あーしがそれっぽいカッコして『うらめしや~』ってやれって? そっちのほうが詐欺だっての!」
コメント欄には「詐欺ではない」「普通はコンセプトだと思う」「本物いると思わん」など、困惑の声も多かったが、由香は止まらない。
「あとさ、『怖くて近くを通れない』って人もいたんだって。
もともと近くにいた幽霊さんたちを呼んだだけなんだけどな~。どっかで会ってるはずなのにね?」
そこまで捲し立てると、少しだけ息を吐いて、ようやく落ち着いたようだった。
「でもね、なんか――『素敵な人と出会えました』って言ってくれた幽霊さんもいてさ。
……そういうのって――いいよね」
一瞬だけ照れたように笑うと、配信の空気も少し和らぐ。
「まだ片思いらしいけど、恋がうまくいくといいよね。みんなも、こっそり応援してあげてねー!」
コメント欄には『マジかよ』『恋……?』『取り憑かれない?』などのツッコミが飛び交っていたが、由香は特に気にしていなかった。
そんな中、コメント欄に『見た目は?』という質問が流れた。
他の視聴者もそれに乗っかり、同じような問いが次々と寄せられていく。
「見た目? ……んー、ぼんやりしててよくわかんなかったんだけどさ――」
一拍おいて、にっと笑う。
「でも、たぶんかわいい子だよ。絶対!」
根拠なんてどこにもないけど、由香は胸を張ってそう言い切った。
少しの沈黙のあと、ふわりと声のトーンが戻る。
「だからさ――第二弾! 期待しててよねっ!」
カメラにピースを向けて、由香は笑顔を見せた。
元気なく始めたものの、そこにはいつもの由香がいた。
彼女の中では、すでに第二弾への野望が燃え盛っていた。
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