第1位

当時、俺には彼女がいたんだよね。


実は、幽霊カフェに勤めてたらしくて――あの子、俺のことを覚えてたんだよ。


でも俺は、全然覚えてなくてさ。

『あんなに話したのに、覚えてないの? ひどーい』とか、よく言われたよ。


……まあ、そういうところもかわいかったんだけどさ。


で、そんな彼女なんだけど、あんまり調子は良くなくて、目を離したら消えちゃうんじゃないかって思ってた。

だから、彼女が『滝が見たい』って言い出したとき、すぐに一緒に行ったんだ。


目的地に着いて、滝を見てる彼女はものすごく嬉しそうでさ。見てるこっちまで嬉しくなったよ。


でも、そのとき急に雨が降ってきたんだ。


傘なんて持ってなかったけど、滝の裏に小さな洞窟があったから、ふたりでそこに避難した。


裏から見る滝もいいもんでさ。

彼女が『初めて見た』って、大喜びしてたのをよく覚えてる。


しばらくして、雨が止んだから外に出たら、滝に虹がかかってたんだよ。

思わぬサプライズだったよね。


彼女も、しばらく黙って見てて――それから、成仏しちゃったんだよ。


最後の瞬間まで、彼女は微笑んでた。

今でも、その顔は忘れられない。


……というわけで、堂々の第1位は『彼女と見た滝の裏の洞窟』。


俺はいろんな雨宿りを探してるけど、あの思い出を超えるものは、まだ見つかってないんだよね。


超えるものなんてないってことを証明するために、俺は雨宿ってるのかもしれない。


……ちょっと話が逸れたかな。


最後まで付き合ってくれてありがとう。


機会があったら、君も雨宿りしてみなよ。

いつも見てる世界が、少しだけ違って見えるかもしれないからさ。


……はは、そうだね。

ぜひ、君だけの雨宿りを見つけてくれ。


じゃあ、俺はもう行くよ。


ドアを開けてくれるかな?

俺には開け方が分からないんだ。


……ありがとう。助かるよ。

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