第9話 遠回りしたい気分

 舟守さんに言われた言葉が重く、のし掛かる。彼女は俺を貶めようと思っているわけでも、マウントを取ろうとしているわけでもない。

  

ーおまえのやりたいことは、これか?

心の底から?


 そんな声が聞こえる気がした。恥ずかしくなって、俯けば視線を相変わらず、注いでくる。落ち着かないけど、逃げることもできなくて、彼女の視線に晒されたままだった。

 彼女は自分が答えないのを見ると、静かに

お酒を飲む。咎めることはしないで、自分の心地よさに目を向けている。


ーやっぱり、不思議な人だよな。


 彼女は自分が何かを答えないと、このまま沈黙を続けることが容易に想像できた。相手が真摯に向き合っているときに逃げるのは何か違うよな……。


「あのさ……。正直、自分としては曲は美しいと思っているんだよ。なんだけど、他人から求められるものを意識し始めるとこんがらがってしまう……。自分が何者かとか、どんな立場なのかとか。些細なことすら見失って、恋人も失った……」

「それは、今は恋人がいないってこと?」

「そう。自分がやりたいことを追い求めて、彼女のことを疎かにした。その結果、俺以外の人と彼女は子供を作った。……どうして、上手くいかないんだろう……?」


 ファンからは無償の愛情を注がれていて、それを返すためにも曲を創る。けど、自分がからっぽになっていく感覚。

 どこに自分の軸があるかを見失い、どうしようもない日々を過ごす。答えがあるかは分からないし、永遠にないのかもしれない。自分に答えることが出来ない問いは、永遠に謎なのかもしれない……。彼女に話したところで解決などしないのに、なぜか話してしまった。話し終わってから、彼女の反応が気になってきた。

 

ーなんて、言うんだろう?


 気になって顔を見れば、ちょっと眠たそうだった。

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