第7話 思わぬ人

「伸治、元気にしてた?」


 お店に入ると、バーでゆったりしている優の姿が見える。優の隣には若い女の子がいた。髪が長くて、あまり表情が読めない子だった。

 

ー人見知りなのかな?


 自分も人見知りだから、その気持ちは痛いほど分かる。彼女の紹介をするかな?と思って、優を見るが全然、説明してくれない。それよりも一方的に今までしてきた仕事の話をする。

 優のこういうマイペースなところに自分は救われてきた。聞いて欲しいことがあるときは黙って待てる。それが彼の良さだった。でも、今は困る。


 二人だけで話していたら嫌だろうと思い、彼女に視線を向けるがお酒を嗜んでいて自分に興味がないようだった。そういう女性は珍しい。

 いつもなら「この曲を聴いています!」と言われ、そこから感想を聞くことが多い。けど、今回はそれがないみたいだった。彼女はその場に浮いているわけでもなく、まったりと存在している。


ー不思議な子だなぁ。


 優は自分の視線を辿って、彼女を紹介してないと気づいたらしい。


「舟守 杏(ふなもり あんず)ちゃん。仕事で、前に一緒になったんだ」


 説明はそれだけで詳細は言わない。自分は相手の情報が一定数ないと、いつも以上に話せない。

 舟守さんは俺のことを知っているのか、知らないのか、ぼーっと俺を見ている。そのときの彼女の瞳に移る自分の姿がどんな姿なのか、と想像した。


 見つめ合うわけではなく、風景のように見られている。その視線は嫌なものではなく、自分が安堵できるものだった。

 彼女はそれからも口を開くことなく、静かに俺を見ていた。着飾ることがない、自然な美しさを持った娘だった。可愛いとか、綺麗とか、そういったことではなく、彼女の周りには色々なものが付いている気がした。

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